研修医産科病棟マニュアル - 抜粋
手術時抗生剤
CTM 1g。胎盤娩出後に臍帯動脈から臍帯血ガス、静脈から生化をとる。
胎児仮死・pH等については後述。予防的抗菌薬の使用は、一応、2010年にACOGから帝王切開前の予防的抗菌薬投与の推奨声明が出ていますし、
それなり効果はあるようです。執刀前にちゃんと投与が終わっているように注意しましょう。
Obstet Gynecol. 2010 Sep;116(3):791-2. Committee opinion no. 465: antimicrobial prophylaxis for cesarean delivery: timing of administration.
産科略語など
_G_P(既往歴に必ず書く)G (graviditas)妊娠、P (parturition)分娩→何回妊娠して、何回分娩したか
・NSD (normal spontaneous delivery) 自然分娩 SA 流産、KA 中絶
・CL(cervical length) 頚管長
・GS(gestational sac: 胎嚢)CRL(crown-rump length: 頭殿長)AGE(推定妊娠週数)BPD(biparietal diameter: 児頭大横経
FL(femur length: 大腿骨長)HC(head circumference: 胎児頭蓋骨周囲長) AC(abdominal circumference: 腹部周囲長
EFBW(estimated fetal body weight: 推定体重)EDC(Estimated Date of Confinement.: 出産予定日)LMP(Last Menstrual Period: 最終月経開始日)
・AFI(Amniotic fluid index: AFI) - Phelan et al. が提唱した羊水量の半定量法であり,
今日広く実施されている方法.妊娠子宮を腹壁体表面上で4 分割し,超音波プローブを妊婦の長軸方向で床に対して垂直にあて,
それぞれの羊水腔の最大深度を測定し,その総和をcm で表現する).Phelan et al.の診断基準は,5.0cm 以下を羊水過少,
5.1〜8.0cm を境界域,8.1〜18.0cm を正常,18.1cm 以上を羊水過多としているが,羊水過多の診断基準として20cm, 24cm, 25cm
を採用している文献や,羊水過少の診断基準を7cm とするものもみられる.
・AFP(amniotic fluid pocket) >8cm 羊水過多 <2cm 羊水過少
・induction 分娩誘発(陣痛がまだ無いとき)、augmentation 分娩促進(陣痛があるけど弱いとき)
・Kopf 頭位 BEL(Becken Lage)骨盤位(“ベッケン”という)
・PROM (premature rupture of the membrane) 前期破水
・pPROM(preterm premature rupture of the membrane)
・PIH (pregnancy-induced hypertension) 妊娠高血圧症
・placenta previa (“プレビア”)前置胎盤
・D&C(dilatation and curettage)/ Aus(auskratzung, ドイツ語) 子宮内容除去術
新生児仮死
<pH7.20 BE>12とされているがpH7程度まででは脳性麻痺との関連はないかもしれない。
(’91 ACOGの仮死と麻痺との関連の要件: pH7未満、5分間以上Ap0~3、痙攣・昏睡・筋緊張異常)
蛋白分解酵素阻害薬等
Note: フラジール(メトロニダゾール) ミラクリッド(ウリナスタチン 蛋白分解酵素阻害薬) クロマイ腟錠(クロラムフェニコール)
- FOY:メシル酸ガベキサート
- 拮抗:トリプシン/プラスミントロンビンエステラーゼ
常用200〜600mg/日 重症20~39mg/kg/日
- フサン:メシル酸ナファモスタット
- 拮抗:トロンピン/カリクレイン/プラスミン/トリプシン/PLA2
常用10〜60mg/日 重症1.44~4.8mg/kg/日
- ミラクリッド:ウリナスタチン
- 拮抗:トリプシン/キモトリプシン/エステラーゼ
常用5万〜15万単位/日 重症10~30万単位/日
妊娠糖尿病(GDM) - 妊娠糖尿病診断基準 2010年改定
定義:妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。
妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。
診断基準:妊娠中に発見される耐糖能異常hyperglycemic disorders in pregnancyには、
- 1) 妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)
- 2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancy
の2つがあり次の診断基準により診断する
- 1)妊娠糖尿病 (GDM) 75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
- 空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
- 2)妊娠時に診断された明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy
- 以下のいずれかを満たした場合に診断する。
空腹時血糖値≧126mg/dl
HbA1C ≧6.5%(HbA1C (JDS) ≧6.1%)註1
確実な糖尿病網膜症が存在する場合
随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合*
*いずれの場合も空腹時血糖かHbA1Cで確認
註1.国際標準化を重視する立場から、新しいHbA1C値(%)は、従来わが国で使用していたJapan Diabetes Society (JDS)値に0.4%
を加えたNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値を使用するものとする。
註2.HbA1C< 6.5%未満(HbA1C(JDS)<6.1%未満)で75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合は、
妊娠時に診断された明らかな糖尿病とは判定し難いので、High risk GDMとし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、
出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
出典: http://www.dm-net.co.jp/jsdp/top/cri.php
羊水量
10w-30cc 20w-350cc 38w-1000cc Term 500cc Post-term <500cc
流産
- 流産 abortion
- [定義] 流産とは「妊娠22週未満の妊娠中絶」と定義される。
[頻度] 自然流産の発生頻度は約15%とされ、その多くが妊娠12週未満に発生する。
母体の加齢に伴い頻度が高くなり、40歳以上での妊娠では約25%に生じるとされる。
- 発症時期による分類
- �〜甦�流産(妊娠12週未満) 自然流産の90%以上を占める。原因の50060%は染色体異常である。
��後期流産(妊娠12週以後0妊娠22週未満) 絨毛膜羊膜炎、子宮奇形、子宮筋腫、
子宮頸管無力症などの母体側の異常によって生じることが多い。死産として扱われる。
- 臨床分類
- �\敘�流産(threatened abortion)
- [定義]少量の出血や下腹部痛を伴う流産への移行状態であるが、頸管が未開大で、超音波検査で胎芽(胎児)、
胎児心拍が認められ、正常妊娠への回復が可能な状態である。絨毛膜下血腫が認められることもある。
[治療](1) 安静、臥床。(2) 妊娠16週以後で子宮収縮を認める場合、子宮収縮抑制剤(塩酸リトドリン)を投与する。
- �⊃聞堽�産(inevitable abortion)
- [定義]流産が開始し、陣痛様下腹痛、出血が強く、子宮頸管が開大して、保存的治療の対象にならない状態。
[治療]妊娠継続は不可能であるため、子宮内容除去術(D&C)を行う。完全流産であれば治療は不要である。
- �4袷肝�産(complete abortion)
- [定義]胎芽あるいは胎児とその付属物が完全に子宮外に排出された状態。超音波検査で胎嚢の消失を認める。
[治療]自然に子宮収縮が起こり復古が進むので治療は不要である。
- �ど堊肝�産(incomplete abortion)
- [定義]胎芽あるいは胎児と付属物が完全に排出されず、一部が子宮内に残存している状態。出血、下腹部痛が持続する。
[治療]子宮内容除去術。子宮内容物が自然に排出されるのを待つ待機療法が行われる場合もある。
- �シ領盈�産(missed abortion)
- [定義]妊娠22週未満に胎芽あるいは胎児が死亡後、症状がなく子宮内に停滞している状態。
稽留流産のうち、胎嚢が25mm以上に大きくなっても、胎児心拍を認めず、
1週間後の超音波検査でも胎嚢の発育を認めないものを枯死卵(blighted ovum)という。
[治療]子宮内容除去術。
- �Σ蹴慘�産(chemical abortion)
- [定義]尿中hCG測定などで妊娠と診断されながらも、超音波検査にて胎嚢が確認される時期より前に流産(月経様出血)
になってしまうもの。近年、市販の妊娠検査薬の感度が非常に高くなり、従来は「流産」として意識されなかったものまで
「流産」として認識されるようになった。化学流産は、特に妊娠を気にしている不妊患者が気付くことが多い。
- �Т鏡�流産(infectious abortion)
- [定義]流産経過中に子宮内感染が生じた状態。この状態を放置すれば、敗血症、DICなどの重篤な合併症を引き起こすため、早急に治療が必要となる。
[治療]抗菌剤投与、子宮内容除去術。
- ◎死胎児症候群 dead fetus syndrome:
- 稽留流産や双胎一児死亡などの場合、死亡児から分泌される組織因子が母体内に流入、血液凝固が亢進し、その結果、
母体にDICを引き起こすことがある。これを死胎児症候群という。
出典…日本産婦人科医会研修ノート
胎児心拍
Am J Obstet Gynecol. 2007 Jul;197(1):26.e1-6. A framework for standardized management of intrapartum fetal heart rate patterns.
ガイドラインの元になった論文
胎児心拍数図における用語と定義(日本産科婦人科学会,2003年)
- �機ヂ杙�心拍数図の基本事項
- (1) 以下の定義は胎児心拍数図を肉眼的に見て判断されるものであるが,将来のコンピュータによる自動診断にも適応されるものとする.
(2) 記録用紙,モニターディスプレイ画面上においても横軸の記録速度は1分間に3cm,縦軸は記録紙1cm あたり心拍数は30bpm を標準とする.
(3) 胎児心電図からの直接誘導による心拍数計測あるいは超音波ドプラ法による自己相関心拍数計測のどちらにも適応される.
(4) 以下の定義は主に分娩時の胎児心拍数図に対するものであるが,妊娠中においてもその読み方は同じとする.
(5) 波形は心拍数基線,細変動の程度,心拍数一過性変動をそれぞれ別個に判断するものとする.
(6) 子宮収縮に伴う変化は周期性変動(periodic change),伴わない変化は偶発的変動(episodic change)とする.
(7) 妊娠週数,子宮収縮の状態,母体,胎児の状態,薬物投与など,胎児心拍数に影響を与えると考えられる事項を記載する.
- �供ヂ杙�心拍数の用語
- A.胎児心拍数基線 FHR baseline
- 1)正常(整)脈 normocardia:110 〜 160bpm
2)徐脈 bradycardia:<110bpm 高度徐脈:<80bpm
3)頻脈 tachycardia:>160bpm
- B.胎児心拍数基線細変動 FHR baseline variability
- C.胎児心拍数変動 FHR variability
- D.胎児心拍数一過性変動 periodic or episodic change of FHR
- 1)一過性頻脈 acceleration
2)一過性徐脈 deceleration
�顱冒疊�一過性徐脈 early deceleration
�髻肪挌�一過性徐脈 late deceleration
�鵝吠册旭豌畧�徐脈 variable deceleration
�堯冒�延一過性徐脈 prolonged deceleration
- �掘ヂ杙�心拍数図波形の定義
- A.胎児心拍数基線 FHR baseline
- 胎児心拍数基線は10 分の区画におけるおおよその平均胎児心拍数であり,5の倍数として表す.
注:152bpm,139bpm という表現は用いず,150bpm,140bpm と5bpm ごとの増減で表す.
判定には
1.一過性変動の部分
2.26bpm 以上の胎児心拍数細変動の部分を除外する.また
3.10 分間に複数の基線があり,その基線が26bpm 以上の差をもつ場合は,この部分での基線は判定しない.
10 分の区画内で,基線と読む場所は少なくとも2分以上続かなければならない.
そうでなければその区画の基線は不確定とする.この場合は,直前の10 分間の心拍数図から判定する.
もし胎児心拍数基線が110bpm 未満であれば徐脈(bradycardia)と呼び,160bpm を越える場合は頻脈(tachycardia)とする.
- B.胎児心拍数基線細変動 FHR baseline variability
- 胎児心拍数基線細変動は1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動であり,振幅,周波数とも規則性がないものをいう.
sinusoidal pattern はこの細変動の分類には入れない.細変動を振幅の大きさによって4段階に分類する.
1.細変動消失(undetectable):肉眼的に認められない.
2.細変動減少(minimal):5bpm 以下
3.細変動中等度(moderate):6 〜 25bpm
4.細変動増加(marked):26bpm 以上
この分類は肉眼的に判読する.short term variability, long term variability の表現はしない.
(注)サイナソイダルパターン sinusoidal pattern サイナソイダルパターン sinusoidal pattern
は心拍数曲線が規則的でなめらかなサイン曲線を示すものをいう.持続時間は問わず,
1分間に2〜6サイクルで振幅は平均5〜 15bpm であり,大きくても35bpm 以下の波形を称する.

- C.胎児心拍数細変動 FHR variability
- 胎児心拍数基線以外の部分において,細変動を判定する必要がある場合も,上記の4段階の分類は適応されるものとする.
- D.胎児心拍数一過性変動 periodic or episodic change of FHR
- 1)一過性頻脈 acceleration
- 一過性頻脈とは心拍数が開始からピークまでが30 秒未満の急速な増加で開始から頂点までが15bpm 以上,
元に戻るまでの持続が15 秒以上2分間未満のものをいう.32 週未満では心拍数増加が10bpm 以上,持続が10 秒以上のものとする.
遷延一過性頻脈 prolonged acceleration
頻脈の持続が2 分以上,10 分未満であるものは遷延一過性頻脈(prolonged acceleration)とする.10 分以上持続するものは基線が変化したものとみなす.
- 2)一過性徐脈 deceleration
- �顱冒疊�一過性徐脈 early deceleration
- 早発一過性徐脈とは,子宮収縮に伴って,心拍数減少の開始から最下点まで30 秒以上の経過で緩やかに下降し,
その後子宮収縮の消退に伴い元に戻る心拍数低下で,その一過性徐脈の最下点と対応する子宮収縮の最強点の時期が一致しているものをいう.
その心拍数減少は,直前の心拍数より算出される.
- �髻肪挌�一過性徐脈 late deceleration
- 遅発一過性徐脈とは,子宮収縮に伴って,心拍数減少の開始から最下点まで30 秒以上の経過で緩やかに下降し,
その後子宮収縮の消退に伴い元に戻る心拍数低下で,子宮収縮の最強点に遅れてその一過性徐脈の最下点を示すものをいう.
その心拍数減少は,直前の心拍数より算出される.
注)ほとんどの症例では,一過性徐脈の下降開始・最下点・回復が,おのおの子宮収縮の開始・最強点・終了より遅れて出現する.
- �鵝吠册旭豌畧�徐脈 variable deceleration
- 変動一過性徐脈とは,15bpm 以上の心拍数減少が30 秒未満の経過で急速に起こり,その開始から元に戻るまで15 秒以上2分未満を要するものをいう.
子宮収縮に伴って出現する場合は,その発現は一定の形をとらず,下降度,持続時間は子宮収縮ごとに変動する.
注)子宮収縮が不明の場合は,早発一過性徐脈,遅発一過性徐脈,変動一過性徐脈の区別はつけない.
- �堯冒�延一過性徐脈 prolonged deceleration
- 遷延一過性徐脈とは心拍数の減少が15bpm 以上で,開始から元に戻るまでの時間が2分以上10 分未満の徐脈をいう.
10 分以上の一過性徐脈の持続は基線の変化とみなす.
(日本産科婦人科学会 周産期委員会 胎児心拍数図の用語及び定義検討小委員会.委員長:岡村州博.2003 年報告より一部抜粋)
30秒を境界に早発一過性徐脈あるいは遅発一過性徐脈と変動一過性徐脈を区別する。これを30秒ルールといいます。
変動一過性徐脈の重症度分類(Kubliの分類) は以下の通りです。

遷延一過性徐脈の重症度分類は以下の通りです。

遅発一過性徐脈の軽度・高度の判断は以下の通りです。

以上の所見と重症度分類から5段階に警戒度を決めて帝王切開等の対応と処置を決めていく方法が定められました。
但し、胎児機能不全の診断特異度は低く、CTGで問題な波形でも実際に胎児に問題が起きていることは比較的少ないといわれています。
逆に、CTGで元気な波形の時はまず間違いなく元気と判断できます。

前掲の米国の論文からはいくらか変更されています。
胎児警戒レベル
- 1 正常波形
- 経過観察
- 2 亜正常波形
- 産科的子宮内環境改善(CT)(体位変換・酸素・輸液・オキシトキシン調節・羊水注入・収縮抑制薬)
- 3 異常波形(軽度)
- 産科的子宮内環境改善+原因究明・監視強化
- 4 異常波形(中等度)
- 産科的子宮内環境改善+緊急帝王切開・鉗子・吸引の準備
- 5 異常波形(高度)
- 緊急帝王切開・鉗子・吸引による急速遂娩
