�機ゴ鏡�症総論
1.感染症診療
感染症は、病原体が一定の臓器で病原性を発揮することで起こります。菌種によって得意とする臓器も、
増殖環境も違うので、本来ならばそれらを全て理解した上での診療が望ましいのですが、細菌学的情報も日々変化していますし、
培養結果で見かける菌には一般的な教科書ではあまり見かけない菌も多く、現実的にそれを全ての医師に求めることは難しいと思います。
ですから、「ここまでは」という大原則、日常よく見かける感染症についての診療さえおさえれば、逆にそれ以外は専門家にまかせて良いと個人的には思っています。
ここではまず、その「原則」をお話することとして、基本的な考え方をまとめました。
感染症診療の基本に関しては青木眞先生の「レジデントのための感染症診療マニュアル」の第1章を是非通読されることをお勧めします。
1章だけなら一晩で読めますし、繰り返し読み込んで体に染み付かせてください。
�機ゴ鏡�症診療・診断
まず、感染症と思われる患者を目の前にしたとき、「なぜ感染症と考えるか」ということが第一になります。そこで大切なことは
- 1.何の病原体が(病因)
- 2.どの臓器に(病巣)
- 3.どんな状態で感染しているのか(環境)
- 4.どんな臨床症状をあらわしているか(病状)
を考えることです。「熱があるから」「白血球が高いから」「CRP(注1)が高いから」というのは感染症云々以前の問題で、
感染症かどうか上の4つを考えて評価しなくてはいけません。もし、上の4つが思い浮かばない場合は、
感染症以外の原因であることが多々ありますので、基本に立ち返り、感染症・膠原病・腫瘍・薬剤性・代謝性・・・と鑑別疾患を広くもち、
「感染症」という仮診断に引きずられないことが大切です。 同様に、「培養から何々の菌が出た」というのも上記の1・2を満たしたに過ぎなく、
3・4が思い当たらない限りは単なる菌の定着(注2)、あるいは感染のみ(不顕性感染(注3))ということが考えられます。
�供ゴ鏡�症診療・診察
上記4つを推測するためには、注意深い病歴聴取と細やかな身体診察が求められます。特に、渡航歴や温泉、
循環式湯沸かし器の有無、ペット、職業、生活環境や性的嗜好など、あまり日常の診療では聞かない情報も集める必要があります。
身体所見も、できれば頭の先からつま先、お尻の穴、神経所見まで細やかに取ることが望ましいです。
そういう意味で言えば、感染症診療は総合診療のトレーニングに非常に適していると考えています。
また、重症感染症では、発熱ではなく低体温としてあらわれることがあることに注意して下さい。
�掘ゴ鏡�症診療・検査
次に、身体所見から、疑わしい臓器が絞れたら、検体を採取しましょう。
この検体の取り方で病原体の検出率が非常に変わってしまいますので、一度は正しい検体の採取の仕方を覚えておくと良いと思います。(第3項参照)
喀痰・尿・血液がメジャーだと思います。場合によっては鼻咽頭・便・髄液・膿瘍内容・胸水・腹水・胃液などを採取することになります。
原則どおり、血液検査は必要なものを必要なだけオーダーします。むやみな検査や結果が診療にインパクトを与えない検査は無駄です。
�検ゴ鏡�症診療・治療
さあ、いよいよお待ちかねの治療です。最後にもう一度確認、感染臓器は絞れましたか?適切な検体は取れましたか?
抗菌薬投与前の検体を取れる最後のチャンスですので、たとえ感染臓器が絞れずに臨床的に重症感染と考え抗菌薬投与するときも、血液培養はきちんと行いましょう。
培養結果が戻るまでの数日は、考えられる感染巣・宿主の免疫状態から起因菌(注4)を推定し、経験的に抗菌薬を投与することになりますが、
これをEmpiric therapyといいます。このEmpiric therapyは患者の予後を左右する大事なものです。時々見かける間違いは、
最初はスペクトラム(注5)の狭い抗菌薬(注6)を使用して効果がなければ次第にスペクトラムを盲目的に広げてゆく方法ですが、
正しくは考えられる起因菌をすべてカバーする抗菌薬のうち、目的臓器への移行性を持ち、一番スペクトラムの狭いものが最初に選択されます。
複数の抗菌薬が併用されることもあります。ここには、初期治療は考えられる起因菌どれに対しても効果をあげられるという目的と、
できるだけ狭いスペクトラムで耐性菌の出現を少しでも軽減させようという目的がこめられています。ですから、
何でもかんでもすぐにカルバペネム系抗菌薬が使用されている現在の日本の現状は決して好ましいことではないということを認識して下さい。
このシリーズで何度も強調することですが、「むやみな抗菌薬投与が来年のあなたの患者を殺す菌を呼ぶ」のです。
どの抗菌薬を選ぶかは、「Sanford Guide to Antimicrobial Therapy(日本語版あり)」がポケットマニュアルとして有名です。
インターネットでCDC(米国疾病管理センター)やIDSA(米国感染症学会)のガイドラインを参考するのも良いでしょう。
その中から自分の好みの抗菌薬を選んでよいと思います。感染症科が設置されている米国では、
医療関連感染の抗菌薬使用に関する推奨が出されている場合がありますが、施設によって病院感染の起因菌や感受性のパターンやが違いますので、
独自のメニューになっているようです。当然、日本、そしてそれぞれの施設ではそれ独自のパターンがあるのでしょうが、
そういったサーベイランス(注7が行われていない施設では、米国のデータを参考にするしかありません。
こういった微生物学的情報が乏しいことも日本で抗菌薬乱用がおこる要因の一つと考えており、多くの病院での一日も早い感染症科の本格的設置が望まれます。
マニュアルを使用するときも「なぜこの抗菌薬が使用されるか」考えてみて下さい。また、マニュアルがすべてではありませんので、
重症度や患者背景からあなたが「考えて」適切な抗菌薬を投与してください。
抗菌薬治療の原則は「必要な人にだけ、必要十分な抗菌薬を」です。あとから評価が難しくなり病態を把握するのに厄介になるので、
中途半端に抗菌薬投与するなら何もしない方がましです。前述しましたが、
感染症ではないと思ったら思い切って経過観察することも重要な診療行為(ただし注意深く)です。よく、敗血症の人に数日しか抗菌薬投与せず、
解熱したからといって抗菌薬投与が中止されてしまったり、「効かない」といって1−2日で抗菌薬をコロコロ変更する方を見かけますが、
治療し始めたらじっくりやるのが感染症治療です。これ、という明確なエビデンスがあるものは少ないですが、
膀胱炎など一部を除いては合計治療期間が1〜2週間というのが一般的です。
このコースは多くの方に、最低限の原則を知ってもらえばと思っているものなので、あまりマニアックな話は避けたいので詳述しませんが、
抗菌薬の特性(組織移行性・半減期・抗菌活性・スペクトラム・薬剤相互作用)と起因菌の特性(感受性・耐性機序)を考えて抗菌薬を使用します。
- 1.どの抗菌薬を(スペクトラム、組織移行性)
- 2.どの臓器に(病巣)
- 3.どのくらい(抗菌活性、1回投与量、臓器不全の存在)
- 4.どの間隔で(半減期、腎機能)
というのが大切です。よく見受けられるのが、何でも1日2回投与にしている点滴静注ですが、
上記の通りどの薬剤を使うかによって投与間隔を短くしないと効果が減少してしまうものもあります。
また抗菌薬には薬剤相互作用のあるものも多いので、薬を多く(特に循環器の薬)を服用している高齢者には注意して下さい。
�后ゼN展�果の評価
感染症診療を行うもう一つの大切なポイントは、治療効果を判定するための指標をいくつも設定しておくということです。
それは、体温・白血球・CRP・赤沈といった全身の指標のほかに、臓器特異的なパラメータを設定することです。
これも各臓器のパラメータにはどんなものがあるか以下掲載しましたので、参考にしてみてください。治療効果の判定のしかたの詳細については、
レジデントノート2007年2月号(羊土社)にまとまったものがあります。ご興味があれば一読して頂けたらと思います。それらのパラメータと全身状態、
そして検査値を総合的に評価して治療効果を決めていきます。1日や2日で「CRPが下がらないから」という理由で、
状態が改善しているのに抗菌薬を変えてしまう人をよく見かけますが、これは間違いなのです。治療効果をあげたが為に、
全身の免疫系が一気に賦活化されて炎症所見が亢進することもあるからです。一般に、「白血球が…とか、CRPが…」という会話が聞かれますが、
検査学的な炎症所見は、炎症反応を反映しているに過ぎず、参考にしかならないことに注意して下さい。白血球数は絶対数だけではなく、
分画やその推移が大切ですが、白血球数が正常な場合もありますのであてにはなりません。また、よく「CRPが20あるから重症だ」、とか、
「CRPが2減ったから感染が改善している」ということも聞かれますが、これも根拠はなく、少なくとも僕が調べた限りでは新生児感染症を除けば、
CRPを感染症の重症度の指標とできるという信頼できるデータはありません。CRPは個人差も多く、必ずしも20の人が10の患者より重症であるとは限らないのです。
また、その日の状態によって数値の変動も激しいものです。CRPが5の敗血症を僕も実際に見たことがあります。ですから、
白血球・CRPにのみ気をとられて診療せず、全身状態や、臓器パラメータを評価してゆくことが大切です。ちなみにCRPは日本ではルーチンで使用されていますが、
米国では感染症分野ではあまり使われておりません。抗菌薬使用中断の指標が「CRPが陰性化するまで」というのはナンセンス
(ただし、骨髄炎の治療など一部ではそのような使い方もする)です。
以上のことが意外と臨床現場でご存知ない方が大勢いらっしゃるようなので強調させていただきました。地味ですが、
抗菌薬の適正使用は内科診療の基本です。間違っても風邪に抗菌薬を使用するようにならないで下さい。
2.感染防止
感染症は『病原体−感染経路−宿主』という感染のリングを断ち切ることで制御できるといわれています。
臨床では抗菌薬を使用した感染症治療にのみ焦点が当てられがちですが、今回は感染経路にスポットを当てます。感染症においては予防が最も重要です。
感染症は、昔伝染病と言われていました。公衆衛生や衛生学ではないのでここでは詳しくは申し上げませんが、感染症に関しては
「起こさせない、うつさない」ことが一番大切だと理解して下さい。くれぐれも病棟で病原菌の運び屋(注8)にならないように。
今回とりあげる「感染防止」は、臨床感染症学における大きな一つのテーマである感染制御に関する重要なエッセンスを紹介します。
病棟でMRSA患者の病室にガウンやマスクが設置されているのを見かけたり、関わった方も多いと思います。手術室では、HIV、HCV、
HBVなどの限られた感染症にのみ特別処置を施しています。しかし、これで本当にいいのでしょうか?毎年新しい病原体が発見され、検査法の確立していない感染症も数多くあります。
ここでは「我々医療者の安全を守る」「余計な感染を増やさない」という2つの原則をしっかり頭に入れてください。
病棟における感染防止の基本となるものに関してのみ述べます。
�機ゥ罐縫弌璽汽襯廛譽魁璽轡腑�(普遍的予防策)
1987年にCDC(米国疾病管理センター)からガイドラインとして提唱された概念です。
「どの患者も感染症の可能性があるということを前提として、全ての人と血液と特定の体液の取り扱いに注意を払う」ことを義務づけるもので、
体液・血液に触れる可能性のある場合は手袋や必要に応じてガウンを着用する」というものです。背景には1985年頃からHIV感染者の増加が問題になりはじめ、
他の新興感染症(注9)に対する危惧もありました。米国では1990年代に政策としてこの考え方が勧められていきました。ドラマERで、
ガウンや手袋を脱ぎ着するシーンをよく見かけた方も多いと思います。同様の考えで、ボディサブスタンスアイソレーション(体液隔離)という考え方もありました。
ただし、これらは「医療者の安全を守る」ことにのみ重点が置かれたため、手袋をしっぱなしで多くの患者を扱ったり、手洗いが忘れられたりし、
MRSAをはじめとした医療関連感染が流行したという問題や、不必要なディスポのガウンや手袋が使用され費用の問題がありました。
�供ゥ好織鵐澄璽疋廛譽魁璽轡腑�(標準予防策)
1996年に上記のユニバーサルプレコーションの改定としてCDCから新しく提唱されたもので、
「感染症の診断あるいは推定される病態に関わらず、全ての患者に適応され、血液、全ての体液、汗を除く分泌物、
排泄物、傷のある皮膚、粘膜に適応」されるもので、「医療者の安全を守る」とともに、医療者の手を介した病原体の伝播による
「余計な感染を増やさない」ということを目的としています。具体的には色々ありますが、毎日の病棟業務で必要と思われる重要事項についてのみ紹介しましょう。
- 1.手洗い
- 患者の診察前後には必ず手洗いをします。手袋をしていても行います。(手袋をはずした後の10%で患者の病原体が手に付着しているという研究もあります。)
また、手荒れがあると病原菌の定着が多くなるという報告もあります。
腕時計の裏側には、通常の皮膚よりも多く細菌が繁殖します。注意しましょう。
- 2.手袋・防護器具
- 血液・体液に触れる可能性のある場合は常に手袋を着用します。
採血のときにも当然手袋を着用することが必要です。よく、素手で血液の溢れる部位に触れる方がいますが、これは非常に危険な行為と認識してください。
必要に応じてガウン・ゴーグル・マスクを着用します。フェイスシールド付のマスクがありますが、病棟に供えていない場合も多いですので確認するとよいでしょう。
一度使用した手袋は他の患者には使用しないで下さい。感染ゴミとして処分します。
- 3.針刺し事故防止
- 使用後の針はリキャップしないようにします。どうしてもリキャップが必要な時でも「両手でしない」「針先は体に向けない」ことを基本に、
片手すくい法、リキャップ用器具を使用します。
病棟では、針捨て用のボックスがあると思いますので、携帯用のものを必要時もって行き、針捨てボックスに捨てます。間違っても針先を露出させたまま歩いたりしないように!!
また、中心静脈カテーテル挿入後の針や、点滴後の針などをガーゼ類などと混ざったまま放置され、
片付けた看護師が針刺しをしてしまったというケースを何度も聞いております。もし、それで感染を起こしてしまったら…考えただけで恐ろしいですね。
針や鋭利な器具を使用する前には、必ず数を確認し、使用後には数があっているか確認し、使用した人が責任を持って専用ボックスに処分しましょう。
�掘ゴ鏡�経路別感染予防
感染性疾患ひとつひとつに個々の予防対策を取っていたのでは煩雑できりがありませんので、感染経路別の対策を取ることが推奨されています。
注でも述べましたが、感染経路と一口に言っても定義によって細かく分かれる(注10)こともありますが、ここでは接触感染・
飛沫感染・空気感染の3つのカテゴリーに大きく分類して話を進めます。スタンダードプレコーションは全ての患者に適応されますので、
以下は、スタンダードプレコーションに加えて何を行えば良いかということについて述べてあります。
- 1.接触感染対策
- 接触感染とは、直接患者に接触する、または患者周辺の物品との接触によって感染をおこす経路です。
基本的に多くの病原体がこの接触感染を通して他の個体に伝播していきますので、よく知っておいて下さい。具体的には、クロストリジウム、
O157などの病原性大腸菌、赤痢菌、A型肝炎ウイルス、ロタウイルスなどの腸管ウイルス、各種皮膚感染症起因菌、ウイルス性結膜炎、出血熱ウイルスなど多岐に渡ります。
対策としては、患者の部屋に入るときは手袋を着用し、さらに接触が考えられるときにはガウン着用、場合によっては患者の個室管理
(とくに排泄物など含め、他の患者と一緒にならないよう感染廃棄物は個別に処理します)が必要です。
簡単に言えば、このカテゴリーにあてはまる患者に接したら、他の患者に接しないということになります。
多剤耐性菌のグラム陰性桿菌やMRSAが患者から検出されたら、是非この対策を行って、他の患者に拡げないようにして下さい。
- 2.飛沫感染対策
- 飛沫感染は咳、くしゃみ、会話などからの飛沫(5μm以上の粒子)によって病原体が伝播されるタイプのものを指し、
ほとんどの呼吸器感染はこの経路を通じて起こります。また、インフルエンザ、ムンプス、風疹といった有名なウイルス感染もこの経路で感染します。
飛沫は幸い1mほどしか空気中を飛ばないため、隣の部屋にまで感染が直接及ぶ危険性は低いといえます。また、
1m以内で患者に接するときもマスクが非常に有効となります。必要時は患者を個室管理に置くことになります。他の患者がいるときには、
感染者となっている患者にもマスクをしてもらいましょう。
- 3.空気感染対策
- このタイプは非常に厄介です。上で述べた飛沫が乾燥すると、5μm以下の飛沫核・エアロゾルとなって空気中をふわふわ浮遊するのですが、
この飛沫核・エアロゾルに乗って病原体が伝播する経路だからです。感染危険範囲としては10mと言われています。
当然、直接飛沫を受ける1m以内よりは10mの方が安全でしょうが、廊下・通気口などを通じて理論的には隣の部屋まで伝播しうるのです。
空気感染のタイプで致死率の高い治療法の無い病原体が流行しだせば、人類はあっという間に滅びるでしょう。
ここでは、この感染形式の病原体として、麻疹・水痘・結核を覚えて下さい。帯状疱疹のおじいちゃんの部屋に水痘の予防接種をしていない子供を入れてはダメです。
実際この感染経路を絶つには経費と手間が掛かります。部屋は当然個室管理ですし、空調なども陰圧にして感染力のある空気を外に出さないようにしなければなりませんが、
それは建物の問題ですのでさておき、このような患者に接する時には、N95マスクのような特殊フィルターを持つマスクでの防護が必要になります。
N95マスクの着け方にはコツ(フィットテストなど)がありますので、一度使い慣れている人に、使用法をよく確認してください。
正しい使用法を用いないと効果がありません。また、医療用マスクは湿ったり物理的な汚れがあるとフィルター効果が減少しますので、必要ない時にははずしておきましょう。
僕が見る限り、病棟でもほとんどの場面でスタンダードプレコーションが守られていないようですので、今回は、感染防止について述べました。
地味ですし、あまりピンと来ないかもしれませんが、自分の健康を守る意味でも大切なことですので、十分確認して下さい。
いざという処置の時の為に、明日から白衣のポケットには手袋を1組入れておくことをお勧めします。
3.細菌検査の意義とその解釈
時々細菌検査に関する質問を受けることがあります。培養の結果が帰ってきたが、どう解釈したものか。
臨床検査の講義ではないということで日常臨床で関係ありそうな事柄のみをピックアップして見てゆきましょう。
�機ゥ哀薀狎�色のススメ
皆さんは自分でグラム染色はされますか?最近は米国の感染症科医でも技師任せで全然自分達ではやらなくなった様ですが、
感染症を視覚的に捉える大きなツールですので、是非習得していただきたいと思います。
確かにグラム染色は施用者の技量により検体の扱いや解釈も一定せず、精度(感度・特異度)には問題があるとされ、
長年議論されてきたのも事実です。しかし、このことは、他の領域(例えばエコー検査やX-pの撮影と読影に至るまで)でも、
同様です。ですから、この簡便で基本的な細菌検査法を軽視すべきでないと考えます。自分でやってみたいと言う人は実際にやり方を習った方がいいので、
グラム染色法そのものについてはここでは述べません。では、グラム染色はどのように役立っているのでしょう。
- ��Empiric therapyの抗菌薬選択の参考に活用する
- 検体を取った際、グラム染色の結果からEmpiric therapyがよりターゲットを絞った抗菌薬によって可能になる場合があります。
例えば、腎盂腎炎で第三世代・四世代セフェムを使うケースをよく見かけますが、ちっとも良くならない場合があります。
「じゃあ」っていうんで、おもむろにカルバペネムを使い始める。ちょっと待ったぁ!!グラム染色はしましたか?培養は出したけど、
塗抹検査はオーダーしてないって?これじゃあダメなんですね。広域過ぎる抗菌薬に頼らざるを得ない。塗抹検査を是非オーダーしてみて下さい。
とりあえず一回目の投与までには結果が出ないかもしれませんが、何か出たら連絡してもらうといいでしょう。できれば自分でも染色できると良いです。
筆者はよく言っていることですが、グラム染色は感染症におけるエコー検査と同じです。熟練した医師・技師は微小な心臓の血栓や肝臓の僅かな腫瘤影を見逃さない。
虫垂炎もCTを取るまでもなくあっという間に診断してしまう。グラム染色も熟練した人が見ると、菌種のおおよその診断や活動度などがわかる。
でも、初心者でもちょっとエコーを練習すれば心臓壁運動が低下していることくらいは何となくわかるようになるのと同じで、
グラム染色も数を見ているうちにグラム陽性球菌なのか、陰性桿菌なのかくらいはわかって来る。ブドウ球菌、連鎖球菌、
肺炎球菌や大腸菌や緑膿菌なら何となく診断できるようになる。濁った尿をちょっとのぞいて見る。おぞましい数の白血球に貪食されたグラム陽性球菌が見える。
「あれ、たしか腸球菌てセフェムが効かないって聞いたぞ?」じゃあ選ぶ抗菌薬は?アンピシリンを選ぶのでしたね。商品名ではビクシリン。一日4回十分量を投与。
これで良くなります(注11)。ペニシリンとカルバペネム。グラム染色をやるかやらないかでは大きな差です。病院感染で問題となる緑膿菌に関していえば、
グラム染色のみでほぼ推測できるため、緑膿菌に対する治療を経験的に始めることが可能です。この迅速性が、数日かかる培養との大きな差です。
レポートのGPC2+とか、WBC1+という数字だけ見ていてもデータを見て患者診ずです。WBC3+という検体が見た目にどんなか、
貪食とは顕微鏡でどのようにみえるのか。一度でいいから検査室で見せてもらってください。そして目の前の患者さんとその像を照らし合わせてください。
きっと今後グラム染色のレポートをみて具体的なイメージが湧くことと思います。
- �⊆N展�果の指標にする
- WBCやCRPが全身の炎症を反映しているに過ぎず、感染症診療においてはそれほど重要ではないことは以前に何度もお話いたしました。
例えば、尿路感染や、肺炎で抗菌薬投与中、effectiveな場合白血球の遊走像はまだ多く残っているでしょうが、
治療前の染色像と比べて著明に起因菌が減少しているのがわかります。どうも臨床症状は悪くなっていないが熱が下がらない。
白血球数が下がらない。CRPが高値のまま。そんな状況に出会うことは多いと思います。こんなとき、ちょっと再びグラム染色です。
白血球がまだ遊走していることは局所の炎症状態が持続していることが予想できますね。熱や白血球やCRPがまだ高くて当然なのです。
でも起因菌は見えなくなっている。患者さんの状態も良いし、明日にはデータも落ち着いてくるだろう・・・と解釈できるわけです。
こういった治療効果の指標のひとつに使うことができます。ちなみに治療中の喀痰を培養することは残っている耐性菌のみを検出してしまい、
誤った判断の材料になりやすく、やめましょう。
- �G殕楫覯未良床�
- 感染症診療において培養結果はものすごく重要なものですが、あまりその信頼性には注意が行かないことが多いようです。
結果が帰ってきたとき、本当にそれを信頼していいものか。例えば肺炎の患者さんで、良質の痰が取れて培養に出した。
セフォチアム(パンスポリン)で治療を始めたが、あまりデータ上改善が見られない。3日後培養の結果、α連鎖球菌、γ連鎖球菌のみで、
有意な菌は検出されなかった。どーいうこと?嫌気性菌?それとも異型肺炎?結核?「効いていないんだからカルベニン始めて」という指導医のアリガタイお言葉。。。
嗚呼、異型肺炎だったらもっと悪くなるョ・・・。
培養は万能ではありません。検体の採取のしかた、取り扱い方、様々な要素で検出率は変化します。さて、
このケースは最もオーソドックスな肺炎球菌性肺炎を想定したシナリオです。肺炎球菌は培養で50%程度しか検出できず、必ずしも培養で引っかかってこないのです。
それを補うのがグラム染色です。既にこのケースではグラム染色を行っていれば、肺炎球菌を疑って治療をはじめていけたはずです。また、
培養の結果肺炎球菌が検出されればそれで確定、検出されなくても、染色で強い増殖と貪食像がみられれば肺炎球菌との臨床診断で治療を進めることができます。
誤嚥性肺炎なら、極めて多数の多系統の菌体が無秩序に貪食されて、口腔上皮細胞も良い検体であるに関わらず多数見えるといった染色像が見えていたでしょう。
異型肺炎や結核なら、無数の白血球に比べて起因菌が全然見られないといった染色像だったでしょう。このように、同じ培養結果でもグラム染色の結果次第では解釈が異なるのです。
また、グラム染色で疑った菌を狙って培養した場合、培養方法も工夫しますので、検出率は格段に向上します。
よく、「痰からMRSAが生えた。肺炎を疑っているがMRSA肺炎か?」という質問を受けます。同様に「培養で○○が生えたけど治療が必要か?」という質問も多いです。
答えは「グラム染色と臨床症状次第」です。いくら培養で生えてきてもグラム染色で「有意に増殖していて」
「白血球の貪食像が見られる(注12)」ことが起因菌と同定するには必要です。
�供ジ‖虜亮茲離灰�
既にお話したように、検体はナマモノですので、正しく取り扱わないと培養の結果に大きく悪影響を及ぼしてしまいます。
正しい検体の取り方って・・・意外と知らない人が多いようです。ここで簡単にまとめてみましょう。
- [検査材料の採取の原則]
- ・原則として、抗菌薬投与前に採取します。どうしても無理な時には、抗菌薬を24~48時間以上中止後採取します。
抗菌薬投与の中断が不可能であれば、血中濃度が最も低いとき(次の抗菌薬投与直前)に採取を行います。
・検体はなるべく採取後すぐに提出します。不可能なら、冷蔵庫で保存(注13)。血液・髄液など、本来無菌の部位は室温保存。
・コンタミネーション(常在菌による汚染)を防ぐことが大切です。
- [血液]
- 原因不明の発熱、意識障害、血圧低下、代謝性アシドーシス、低体温、白血球の異常高値と異常低値、
麻痺などの脳血管障害など菌血症の可能性がある状況では必ず実施します。入院中の患者の発熱時も有用ですが、
発熱=血培ではありません。血培の適応は「菌血症と思われる」時です。血培は38.5℃までは取らないとかいうのはナンセンスで、
熱がなくても取るときは取ります。逆に熱があっても明らかにウイルス感染の時なんかは血培は行わなくて良いわけです。
静脈血・動脈血に感度の差は無く、採血量と感度は比例しますが、血液が多すぎると補体の影響等で菌(グラム陰性菌)
が死滅してしまうので適正な量(10~15ml)を採取します。異なる四肢から2セット採取(注14)します。
菌血症を積極的に疑う場合は血液培養を繰り返し行うことが感度上昇につながります。
採取部位はイソジン(注15)でよく消毒し、乾燥させます。(すぐにハイポエタノールで脱色してしまうこともよく見かけますが、
ハイポで拭いてしまえばイソジンの殺菌力は失われてしまいます。イソジン塗布後最大殺菌効果となる1〜2分を待ってから処置することが望ましい。)
この作業がキモです。唾なんかが飛ばないようにマスクをするか、口を閉じましょう。
血管が触れにくい人は利き手でない方の人差し指をイソジンでよく消毒して血管を探ります。血液を採取したら、嫌気性菌用ボトルから入れてゆきます。
血培ボトルの蓋は無菌でないのであらかじめイソジンを塗って乾燥させておきます(濡れていたらイソジンも混入する恐れあり)。
陽性になるまでに4〜5日かかる場合は菌量が少なく、コンタミネーションの可能性があります(ただし発育遅延菌の場合はその限りではない)。
2セットまたは3セットのうち1セットだけが陽性になる場合も信頼度は低いです。検出菌が表皮ブドウ球菌、
diphtheroids、corynebacteria、Bacillus sp、propionibacteria、などは常在菌の混入の可能性が高いです。
逆に、黄色ブドウ球菌やグラム陰性桿菌、Candidaの場合、例え1セットでも菌血症の可能性があります。
真の菌血症では1〜2日で陽性になることが多いです。
- [尿]
- 出てくる場所が場所なだけに、意外とコンタミネーションが多く、正しい採取が困難です。最も信頼できるのは、
膀胱穿刺やカテーテル導尿で得られた尿ですが、普通はそこまで侵襲を与えることはしないで、中間尿(幼児・乳児などではパック採尿)を採取します。
陰部とくに尿道周囲をよく拭いて消毒してから採取を行います。培養と同時に一般尿検査、塗抹染色を行い、
結果を総合して尿路感染症の有無を判定します。培養の結果=起因菌ではありません。採取後原則ただちに検査室へ、無理ならすぐに冷蔵保存します。
- [糞便]
- 便は原則として冷蔵保存ですが、淋菌やアメーバを目的とする場合は室温保存になります。
便はウンコなので菌がいるのは当たり前なので、何の菌を狙って培養するのかある程度の予測を立てて提出すること
(これはどの検体にも共通して言えることですが)が大切です。O157、エルシニア、ビブリオ、
アエロモナスでは特殊培地が必要なので検査室への連絡が必要になります。寄生虫・原虫ではすぐに検鏡。通常、
食中毒疑いや海外渡航後の下痢以外では、便培養は有効なツールではありません。
- [喀痰]
- 年齢や社会的背景によっては口の中が汚く、培養の信頼度が落ちる場合も多いので、
グラム染色をしっかり行って培養結果と照らし合わせて総合的に判断することが必要になってきます。
時間的余裕があるなら、うがいをしてもらって、深い咳(ネブライザーで誘発しても良い)をしてもらい、
出てきた痰を容器に出してもらいます。咳が上手くできない人、すぐ痰を飲み込んでしまう人、様々いると思います。
痰が出ない人は別としても、出る人に関しては気道内吸引で採取(患者さんは苦しいのですが、そこは治療のため・・・)
することも最初から考慮して治療のタイミングを逃さないようにします。
結核菌のように検出の悪いものは連日採取することもあります。
- [膿瘍]
- はじめに言いますが、スワブでの採取はできるだけしないようにします。スワブでは、グラム染色が行えないばかりか、
嫌気性菌の検出は殆ど行えません。注射器で吸引して、嫌気ポーターに採取するのが適切です。
- [皮膚]
- 皮膚に関しては、膿瘍以外は組織片を採取する以外は正しい培養結果が出ないので基本的にあまり行いません。
じょく創に関しても、組織片をとって培養、検鏡するようにします。スワブは使用しません。
以上、よく取る検体についての取り方を簡単に記述しました。
再度言いますが、検体はナマモノです。採取できたら直ちに検査室へ送って(出来れば自分で)下さい。1時間放置された検体は信頼できないものと心得て下さい。
�掘デ殕楫覯未良床�
では、最後に培養結果の評価と解釈について簡単にお話します。
出てきた培養結果が必ずしも正しいものではないことを、グラム染色のところでお話しました。グラム染色との兼ね合いで評価してゆくのが大切なのでしたね。
実際、細菌は皆同じ条件で生きているわけではありません。高温がすきなヤツ、低温に弱いやつ、塩分がないとダメなヤツ、酸素に弱いヤツ、
他の細菌が存在するとなかなか生えてこないヤツ、増殖の遅いヤツ・・・細菌学の講義ではないので、細かいことは言いませんが、
偽陽性・偽陰性も多いことを理解して下さい。グラム染色で見えたはずの菌が生えてこない場合は、もう一度培養提出する必要があるでしょう。
また、心内膜炎を疑っているときには、数日の培養で何も生えなくても、数週間の継続培養を検査室にお願いする必要があるでしょう。
言いたい事は、培養においては「見えるものが全てではない」ということです。ですから、「培養結果で『3+』と出ているからこれが起因菌」はペケです。
起因菌でも、条件によっては『1+』としか出てこないことだってあります。
さて、皆さんは培養結果を見て、抗菌薬をきちんと変更していますか?感受性があるならば、
最も適切な抗菌薬(通常狭いスペクトラムのものとなる)に変更する事(De-escalation)が感染症治療における原則だということはこれまでの回で何度もお話してきました。
しかし、悲しいかな、この「せっかく効いている治療薬を変える」という行為がどうも肌に合わないのが医者の性分。それもそのはず、
「効いているのに変える」という行為は、抗菌薬療法以外になかなかないのではないでしょうか。
でも、このコースで勉強した皆さんは、きちんと実践して下さることを望みます。
感受性に関しては、S(感受性)、R(耐性)、I(中間)の3種類に分類されて報告されてきます。これは、「MICが○○以上で感受性(注16)」
というふうに分類した一種の決め事です。ほとんどの場合、Sであれば臨床的に効く筈です。よく、MICの項をみて、「この抗菌薬のほうが、
値が小さいからこっちを使おう」と広域スペクトラムの抗菌薬を使用しているのを見かけますが、抗菌薬によって到達する血中濃度のパターンも違うので、
一概にMICの項のみを比較して論じることはナンセンスなのです。Sである限り、スペクトラムは狭いものを選びましょう。
最後に耐性菌について一言。院内で発生した感染症の多くは多剤耐性菌と密接に関わっています。
入院の長い患者さんから取れた検体の培養結果は耐性だらけでがっかりすることも多いものです。ここでひとつお話しておきたいのが
ESBL(Extended spectrum beta lactamase)というβラクタマーゼについてです。ESBLにも色々あるのですがそれは置いておいて、一言で言うと
「全てのペニシリン・セフェム薬を阻害する」ものです。グラム陰性桿菌、特に腸内細菌群と関連し、現在病院感染の多剤耐性菌の原因となっているニックキ酵素です。
1980年代にヨーロッパで発見されてから瞬く間に広がり、わが国でも日常的によく見かけるようになりました。ペニシリン、セフェム、
モノバクタムのところがずーっと「R」になっているのが特徴です。ESBL(+)とコメントされている場合もありますが、
なくてもこのパターンの感受性結果では臨床的には同等に扱います(注 17)。セファマイシンやオキサセフェムなどが感受性と表記される場合もありますが、
臨床的には効果を示しません。またESBL産生菌は、そんなものを産生しているだけあって、他の様々な耐性機序も既に獲得しており、
βラクタム薬以外のほとんどの抗菌薬にも耐性です。「殺し以外の悪いことは全てやりました」並みの凶悪さで、患者さんの生命を脅かします。
残念ながら、ESBL産生菌にはカルバペネムを使用せざるを得ません。また、耐性菌を伝播させない様に、その患者さんはコンタクトプレコーション
(接触感染予防、第2章参照)を行って、厳重に他の患者に伝播させない様にすることが必要です。ナースサイドにも、
どんなに危険な菌がその患者さんにいるのか強く訴えて、協力してもらいましょう。MRSAに比べ、軽視されていますが、ESBL産生菌がカルバペネム耐性を獲得したら、
とりあえずその感染を起こした方は残念ながら手の施しようが無い、ということになります。
4.感染症の勉強の仕方
上記のように銘打ったものの、著者自身が「良い方法は何だろう」と教えて欲しいくらいです。
ここでは、基本的な取り組み方と、参考図書など、いくつかのモデルを示しますが、この項についてのみ、完全な著者の独断と偏見によるものです。
興味のない方は読み飛ばしてください。
�機ゴ鏡�症の面白さと難しさ
感染症の面白さはその奥深さと幅の広さにあると思うのですが、反面それがそのまま感染症診療の難しさとも言えます。
まず第一に相手にする病因が生き物(ウイルスなど、正確には生物ではありませんが)であること。これは非常に厄介なことです。
基本的に内科診療では「○○病」という診断がつけば、治療法などのアプローチは、バリエーションこそあるにせよ、ある程度決まってきます。
しかし、感染症はそうはいきません。同じ「肺炎」であっても、アプローチは個々色々です。他疾患では年齢や基礎疾患、
重症度などの個体差でアプローチが変わることがあっても、感染症のように「敵の顔を見ながら」治療する必要が多くの場合ないからです。
ウイルス・リケッチア・クラミジア・細菌・真菌・寄生虫など、生物学的なカテゴリーが全く異なる病因が、「肺炎」という疾患の後ろには隠れています。
たとえ同じ「細菌」というカテゴリーであっても、黄色ブドウ球菌なのか肺炎球菌なのかによって使う薬も治療期間も異なります。
同じ「肺炎球菌」でも、それぞれの薬剤感受性を考慮すると・・・と、面倒極まりないわけです。ああ、だから感染症は面倒くさい。
全部カルベニンとクラビットで治せばいいじゃん。。。まあまあ、そう言わずに。
他の疾患では、「その患者が治ること」だけを考えれば(近年はコストについても言われることが多くなりましたが)いいのですが、感染症はそうはいきません。
感染症は以前「伝染病」と言われた時代(僕は、この人心の恐怖を煽る『伝染病』というフレーズが好きですが)があったように、「人にうつる」病気だからです。
病気が人から人へどんどん伝播してゆく・・・これは他の疾患では起こりえないことです。こういう言い方をすると失礼ですが、高血圧の薬物治療が間違っていて、
自分の患者を悪い結果をもたらしたとしても、被害はその範囲に留まりますが、感染症の場合、自分の患者に不用意な抗菌薬治療により耐性菌を産んでしまった結果、
世の中全ての人にその被害が及ぶ可能性があるわけです。ただし、この「伝播する」ことは逆に予防医学の手法がより効果的であることを語っています。
「治す」知識のみでは感染症はダメってことですね。
というわけで、病原体自体のことも知らなければならない(微生物学、ウイルス学、寄生虫学、分子生物学)、周囲の流行の様子や感染の予防の手法
(公衆衛生学、衛生学)、宿主の状態(免疫学、生理学)、臓器の状態(臨床医学)、抗菌薬の知識(薬理学)と、実に広範な分野での知識が必要になり、
これが感染症の難しさであり、専門分野のひとつとして成立する理由でもあります。
ただし、一般臨床ではそこまでマニアックになる必要はありません。共通した感染症診療のアプローチの仕方をまず身につけて、
それから一般診療上の感染防止策を学び、重要な抗菌薬の知識を学び、各臓器ごとのアプローチの方法を学ぶ・・・って、
このシリーズはそのようになるように努力しているつもりですが(笑)。
�供ザ饌療�な学習法
- �“�熱患者へのアプローチ
- これに関しては、第1項、それから第5項、第6項で触れたいことは触れたつもりなので、ここでは詳しく述べません。
しかし、この部分が感染症診療では最も重要で中心となるものです。どうぞ、軽く見ることなく、しっかり身につけるように心がけて下さい。
- ��感染症予防
- 広義には予防接種法なども含まれますが、必須事項ではないため本シリーズでは割愛しています。
第2項でも簡単に触れましたが、基本は手洗いです。難しいことは抜きにしても、診療の前後の手洗い、これは基本です。
これは、その多くが感染管理者の仕事となりますから、細かいことにそれほど神経質になる必要はありません。
- �9涯殘瑤涼亮�
- 本シリーズの中心を占めている事項です。抗菌薬についてよく知ることで、様々な状況に応じて感染症治療にバリエーションを持たせることが出来ます。
よく、最初に感染症の各論を勉強してしまうため、「○○炎には△△マイシン、□□炎にはセファ××」と一対一で覚えていらっしゃる方がいます。
「ナントカ病の治療薬はナニナニ」というのは感染症以外ではよくやる覚え方ですよね。でも、これ、感染症では良くないのです。
まず、第1項でも述べましたが、感染症は同じ臓器に起きたものでも起因菌は宿主の免疫能力や地域によって起因菌も違いますし、
同じ起因菌でも地域や施設で薬剤感受性も違います。抗菌薬の項でも詳しく述べますが、臓器不全や年齢で選択する抗菌薬や投与量が違います。
ですから、ひとつひとつの疾患での抗菌薬を覚えるよりも、抗菌薬の知識を整理して、様々な状況に応じて使えるようになった方が便利なのです。
まず、はじめに、自分が良く使う抗菌薬について知りましょう。ただし大事なことは、抗菌薬についてはわが国の薬の本ではなく、
ワシントンマニュアルなどで、世界標準の投与量や投与方法を知ることです。
- �と�生物学各論
- これも、それほど詳しく知る必要はないものの、重要な微生物についての知識は感染症を理解する上で大きな助けとなります。
どのような細菌が、どのような背景を持つ患者に感染しやすいのか、どんな臓器に感染しやすいのか、どの程度の傷害を起こしうるのか、
知れば知るほど感染症そのものを総合的に判断する材料が増えます。
重要な微生物とは、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、緑膿菌、カンジダ・・・など、臨床でよく遭遇する微生物です。
- �ゴ鏡�症各論
- 感染臓器別にそれぞれアプローチの方法と治療の方法が蓄積されています。
これに関してはそれぞれの疾患に直面したときにその都度教科書等で確認されるのが良いと思います。
時代によって耐性菌の問題や抗菌薬の種類など、推奨されるレジメや補助療法(ステロイドなど)が日々変化していくからです。
これに関してはそれほど知らなくても、�,�ら��について十分学習していれば、前述したようにそれぞれの状況に応じて適切な抗菌薬を選択できるので、
各論を丸暗記するよりも、�,�ら��について十分学ばれることをおすすめします。
�掘タ篩�図書
最後に推薦図書を掲載してこの項を終わりとします。有名なものばかりなので、皆さんお持ちと思うのですが。。。
1〜3については、日本語の感染症参考書の「3種の神器」と僕は呼んでいます。
- 1.青木眞:レジデントのための感染症診療マニュアル.医学書院,2000.
- 言わずと知れたわが国における感染症テキストの名著。米国感染症科専門医の青木眞医師著。総論から各論まで、
臨床感染症学で必要な項目を殆ど網羅している一冊。特に第一章の発熱患者へのアプローチ法は素晴らしく、WBC、
CRPだけで論じられてきたそれまでのわが国の感染症診療に一石を投じた功績は計り知れない。
未だに開くと、「ああ、このことだったか」と納得する情報が満載である。
- 2.岩田健太郎、宮入烈:抗菌薬の考え方、使い方(Ver.2).中外医学社,2006.
- 抗菌薬の使い方と特徴を通して感染症診療の問題点について触れている。米国感染症科専門医の岩田健太郎医師と米国小児感染症科フェローの宮入烈医師共著。
岩田医師の持ち前のユニークさと、他にも執筆活動をされている文才により、ジョーク交じりの読み物形式で書かれていて読みやすい。
- 3.藤本卓司:感染症レジデントマニュアル.医学書院,2004.
- 市中病院の総合内科の傍ら感染症診療に日夜従事されている、藤本卓司医師著。臨床微生物とくにグラム染色の重要性を強調し、
扱っている内容も「○○といった状況では、どうしたらよいか」といった具体的なものも多く、かなり実践的な内容となっている。
各論でも「診察法」といった基本の解説も図付きで詳しく書かれており、内科医としても臨床・教育に長く携わってこられた藤本医師の意気込みの感じられる一冊。
- 4.大野博司:感染症入門レクチャーノーツ.医学書院,2006.
- 感染症のみならず、救急・一般内科・腎臓内科・ICU・旅行医学・在宅医療に至るまで、実に幅広い専門分野を習得しているスーパードクター大野医師が、
研修医時代から地道に続けられてきた感染症セミナーの内容を単行本化したもの。独自に開発された抗菌薬マップが特徴。図・表なども駆使し、
視覚的にも理解しやすい内容となっている。臨床上重要となる、実に幅広い感染症の知識を1冊に無駄なく網羅している。
- 5.西原祟創、古川恵一:そこが知りたい!感染症一刀両断!.三輪書店,2006.
- わが国の感染症科の老舗、聖路加国際病院の古川医師監修。著者は循環器医で、感染症診療のエッセンスについて非常にわかりやすくまとめた内容となっている。
初めて手に取る日本語のテキストとしては、ベストなのではないだろうか。この本をマスターして、他のテキストを勉強すると、さらに理解が深まるはずである。
- 6.岩田健太郎:感染症外来の事件簿.医学書院,2006.
- 2で紹介した著者が、外来でお目にかかる一般的な感染症のマネージメントについてのテキスト。対話形式でまとめてあり、読みやすい。
具体的なケースというより、現在広く行われている「間違った感染症診療」を正すべく啓蒙としての内容のようにも思える。
- 7.David N.Gilbert et.al:The SANFORD GUIDE to antimicrobial therapy 2006(36th edition).
- 「熱病」。世界中で愛用されており、その内容はエビデンスに基づいて毎年改定が行われている。日本語版もあり。
ただし、答えしか書いていないこの本はあくまでも、経験的治療の抗菌薬の選択や、最新の標準治療を知るのに使用すべきであり、
別の成書で感染症のアプローチを熟知した上で始めて使いこなせる。「熱病」の内容をそのまま鵜呑みにして診療することはあまり感心できない。
- 8.Robert F.Betts, Stanley W. Chapman, Robert L. Penn:A PRACTICAL APPROACH TO INFECTIOUS DISEASES(5th edition).2003.
- 「Reese and Betts’」と呼ばれる、ペーパーバックの教科書。何かあったら当該項を読んでみると「なるほど」ということはあるが、
知識偏重の感はあり、頭の貯金を増やすための本とでも言えようか。細かい字ばかり並んでいて、眠くなるのが難点(笑)。上の4冊で不満な方は使用されたい。
なお、感染症界では「マンデル」がバイブルとして使われているが、このシリーズで紹介するにはマニアックなので割愛。
大きな病院なら図書室に一組(上下刊あるが)は置いているはずである。何か困ったら参照されたい。ただし、「ハリソン内科学」
の感染症の項目もかなり詳しく書かれているので、そちらで事足りることも多い。
<解説>
- 注1)CRP
- C reactive proteinの略。日本では感染症の指標として汎用されているが、欧米では膠原病領域・新生児感染症以外ではあまり利用されていない。
もともと肺炎球菌のC多糖体とカルシウムイオンの存在下に沈降する血清蛋白として発見されたが、その後健常時でも微量に血中に存在し、
組織障害時に非特異的に上昇することがわかった(感染、腫瘍、外傷、手術、膠原病、血栓塞栓など)。IL-1,6といった炎症性サイトカインと関係するため、
CRP上昇の程度により細菌感染・ウイルス感染の区別の参考になることがあるといわれているが、実際はケースにより様々である。また、
よく「CRPが10なので」とか「20以上あるから」といったことを聞くが、CRPは感染症の重症度を示す絶対値ではないことに注意されたい。
一般に言われているようにCRP20がCRP10より重症とは限らないのである。(ICUにおける、重症度とCRPの相関について言及した研究がいくつかあるが、
患者のセッティングなどに問題があり、一概には同意できるものではない。)
CRPに関する総説としては
「Simon L, Gauvin F, Amre DK, Saint-Louis P, Lacroix J. Serum procalcitonin and C-reactive protein levels as markers of bacterial infection:
a systemic review and meta-analysis. Clin Infect Dis. 2004 Jul 15;39(2):206-17」を参照されたい。
- 注2)定着と感染
- 微生物はまず組織表面に付着し増殖をはじめるが、組織侵入・破壊を起こさない場合があり、定着(colonization)と呼ばれる。
これが組織侵入を起こし、生体に影響をあたえるのが感染(infection)である。定着は治療の対象とはならないが、培養で検出されるため感染か定着かの判断が重要となる。
- 注3)不顕性感染
- 病原菌が感染しても大きな障害を与えず症状に乏しいことがあり不顕性感染とよばれる。症状があるものは顕性感染である。
潜伏感染は神経節・リンパ組織などに潜み年単位で回帰発症をおこすヘルペスウイルスや結核菌に用いられる用語であり不顕性感染とは別物である。
不顕性感染の状態でいる人は保菌者(carrier)とよばれ、重要な感染源となる。
- 注4)起因菌
- 感染症の原因となっている菌。複数種のこともある。
- 注5)スペクトラム
- 抗菌薬がそれぞれ持つ、病原体に対する有効な抗菌活性を有する範囲。一言で言うとやっつけられる菌の種類。
一般に新しい抗菌薬ほどスペクトラムが広いが、その分、耐性菌増加のきっかけとなる。いかに新しい抗菌薬でもスペクトラムが対象となる菌と外れていれば、
当然ながら全く効果はない。(例:レジオネラ肺炎にカルバペネム)
- 注6)抗菌薬
- 病原体に対する化学療法薬の総称である。一般に「抗生剤」とか「抗生物質」と呼ばれるが、
「抗生物質」がペニシリン以降の天然物質やその半合成体を指し、「抗生剤」は人工合成されたものを指すが、
臨床現場では用語として区別無く使用されている。よって教科書では「抗菌薬」と統一されているものが多いはずである。
- 注7)サーベイランス
- 病院感染症におけるサーベイランスは、病院内で発生する感染症をもれなく把握しデータ化して、
その発生状況を把握するものさしとして利用できるようにする作業と言える。感染管理では最も大切なことだが、臨床医はその情報をうまく活用する能力が重要である。
- 注8)医療関連感染
- 医療関連感染における「患者−患者」間の感染の最も大きな感染経路は医療従事者の「手」である。とくに指輪や腕時計の裏には細菌が定着・
繁殖しやすいと言われている。手洗い、アルコール製剤による手指消毒を行う。ただし、スキンケアの重要性も言われており、荒れた手には細菌が繁殖しやすいので注意が必要。
- 注9)新興感染症
- 毎年新しい病原体が発見されている。これまでに知られていなかったり、新たに病原体が確認された感染症については新興感染症と呼ぶことがある。
エイズやエボラ出血熱、O-157、SARS、鳥インフルエンザなど、センセーショナルな感染症はこのカテゴリーに含まれていることが多い。
既知のもので、近年再び増殖傾向にあるものは再興感染症(結核など)と呼ぶ。
- 注10)感染経路
- 細かいことを言えば、接触感染は経口感染(これも水系感染、糞口感染などに細分されることあり)や経皮感染などさらに分類されるが、
ここではそれは問わない。また、公衆衛生では昆虫などのベクターを介する感染も重要であるが、院内感染では問題とはならないためここでは扱われてはいない。
- 注11)
- 実際には下行性に腎を侵し、尿中にブドウ球菌が現れるブドウ球菌菌血症に伴う腎盂腎炎もあるため、GPCが見えれば必ず腸球菌を示唆するものではない。
この場合は感受性が判明するまで、病院感染であればバンコマイシンの経験的治療の適応となる。
- 注12)
- 白血球減少時には貪食が見られないことも多く、注意が必要である。
- 注13)
- 淋菌を狙うなら例外。淋菌は低温に弱い。
- 注14)
- 原則2セットは必ず取るように心がける。色々な都合で違う四肢から取れない人は時間を置いて、同じ部位から採取しても構わない。
また、菌血症治療後のフォローアップの血培などは1セットで構わない。
- 注15)
- 消毒にはグルコン酸クロルヘキシジンが推奨されているが、推奨濃度のクロルヘキシジン(2%)を採用している病院はわが国では極めて少ないと思われる。
ポピドンヨード(イソジン)で代用する。
- 注16)
- このMICをブレイクポイントという。
- 注17)
- 正確にはAmpC産生菌も同じ耐性パターンを取る。こちらはβラクタマーゼ阻害薬配合のβ薬がラクタムが効果を示す。
Let the next version be good and full of eye-candy.
Let the FUD spreaders begone and vanish.
Let us be CAR and not CDR.
Let our features outweigh our bugs.
Let our patches be approved and committed.
Let our code spread in torrents.
Hacky New Year :-)
-- Beni Cherniavsky
-- Blessing for the New Hebrew Year ( http://tech.groups.yahoo.com/group/hackers-il/message/4725 )
If you���ve ever visited the ultra-orthodox Jewish communities of Jerusalem, all
of whom agree in complete and utter adherence to every iota of Jewish law, you
will discover that despite general agreement on what constitutes kosher food,
that you will not find a rabbi from one ultra-orthodox community who is
willing to eat at the home of a rabbi from a different ultra-orthodox
community. And the web designers are discovering what the Jews of Mea Shearim
have known for decades: just because you all agree to follow one book doesn���t
ensure compatibility, because the laws are so complex and complicated and
convoluted that it���s almost impossible to understand them all well enough to
avoid traps and landmines, and you���re safer just asking for the fruit plate.
-- Joel Spolsky
-- "Martian Headsets" ( http://www.joelonsoftware.com/items/2008/03/17.html )
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