抗菌薬の基本のおさらいです。「知ってるよ」という方は読み飛ばして頂いて構いません。 熱があれば、何でもかんでも闇雲に抗菌薬を使うことが従来多く行われて来ました。それを最も象徴するのが「風邪に抗菌薬」ですが、 未だにルーチンで行われていることを皆さんもご承知でしょう。 抗菌薬の乱用、特に広域スペクトラムの抗菌薬が耐性菌の出現を招いたとされています。これには反論意見もあり、 特にわが国ではカルバペネム系抗菌薬の使用制限がかえって耐性菌の出現を産む、と書いていらっしゃる方も見受けられますが、 耐性菌・院内感染については今やマスコミなどでも話題になっていますので、我々医療従事者としても深く受け止めて対応しなければならないのは事実です。 わが国でのカルバペネムの使用については意見は様々ですが、本シリーズでは、米国で感染症トレーニングを受けられた先生方が強調するように、 「不必要なカルバペネムの使用は極力行わない(注1)」という方針を一環させて頂きます。 さて、第1項でも述べましたが、抗菌薬使用には基本的な原則があります。まず使用前の原則は「本当にその患者は抗菌薬を必要としているか」です。 抗菌薬を必要としない人にいくら抗菌薬を投与しても病状は改善しません。風邪は抗菌薬では治りませんし、薬剤熱(注2)はむしろ投薬の中止が必要なのです。 現場で僕が感じたのは、実はこのことをおろそかにしているが為に病態がよくわからなくなってしまい、 一体自分が何を治療して何を悪くしているのかが混乱してしまう方が多いということです。感染症診療に限りませんが、 病態を一番シンプルに理解するためには、人為的なことは何一つ行わないことです。といっても治療しないわけには行かないので、 何かやることになりますが、その際も、目的と予想される結果をきちんと想像して治療することが必要です。 例えば、肺炎でも、市中肺炎なのか院内肺炎なのか、若い人なのか年寄りなのか、基礎疾患はないのか、どんなX線像を呈しているのか、 環境因子はないのか、他の薬剤の投与の有無(特にすでに抗菌薬が投与されていないか)、咳の様子や呼吸数、グラム染色の所見、血液ガスはどうか、 など、様々な因子より考えうる起因菌・臨床的重症度が違います。すなわち目的が個々の患者で違っており、それに対する抗菌薬の選択も異なってくるわけです。 「そんな面倒なことだから、感染症は面白くないし、抗菌薬も面倒だ。」と思われるかもしれません。また、この煩雑さが災いして、 「とりあえずカルバペネム」という安易な抗菌薬の使用につながってしまうのかも知れません。マニアックなことはさておき、 このシリーズではなるべくその煩雑さを軽減するように努力します。例えば肺炎のガイドラインをとっても、僕が参考にしている米国感染症学会のものをはじめ、 米国胸部学会、カナダ感染症学会、英国胸部学会、日本呼吸器学会と実に多様のものがあり、どれを使うかで治療法が異なってきます。 医療の常ですが、極一握りの治療法を除けば、完全に客観性のある正当な治療は存在しないのではないのではないでしょうか。 であれば、「最低限の原則」を知っていれば、最高には達しないかもしれないが、少なくとも悪い影響は及ぼさず、 比較的適切な治療が行われるというのが現実的な医療状況でしょう。 どうか、身近にある薬品集を開いてみてください。実に10%近くの紙面を感染症治療薬で占められています。 どんなに勉強しても到底学びきれる量ではありません。このシリーズでは日常の治療に最低限必要と思われる知識のみを提供します。 原則さえ知っていれば、覚える抗菌薬も各系統の自分のお気に入りを数種類で実際は事足りることと思います。
抗菌薬投与には、以下のポイント・ステップがあります。
この必要性はすでに述べました。 ただし、例外的に発熱時において、経験的治療(Empiric therapy)が必要となる場合があります。(表1) これらのなかでは、好中球減少時の発熱が重要でしょう。癌治療の化学療法時に出会うと思います。 免疫抑制時には、通常の免疫応答が起こらないため、臨床像が通常とは異なるのです。例えば、 好中球減少時には化膿性病変を示すことが少なく、病巣不明のまま致死的な敗血症に至ることがよくあります。 免疫抑制時の感染症対策については非常に高度で煩雑な知識を必要とするので、このシリーズの範囲を超えるのでこれ以上は言及しませんが、 米国感染症学会から好中球減少時のガイドラインも出されていますから、興味や必要があれば参照して下さい。 日本語のものでは、国立がんセンターの「がん診療レジデントマニュアル第3版(医学書院,2003)」の感染症対策の項がお勧めです。
前回でも述べましたが、抗菌薬療法においてはそのターゲット(病原体)を認識することが重要です。 標的なしの抗菌薬療法は最も慎むべきもので、「よくわからないからカルベニン」などというのは、狭心症でいえば造影を行わずに 「どこが狭窄しているかわからないから、バイパスで全てつなげてしまおう」という行為に等しいです。まあ、こう言えば大げさですが、 そういった治療は免疫不全の際の発熱や、重症敗血症などの例外を除いてはやってはいけないものと認識して下さい。 違う四肢からの血液培養2セットは病棟内における発熱患者において非常に重要なデータとなりますので面倒がらずに行うことをお勧めします。 また、検体は迅速に(出来れば自分で)検査室に運ぶことが大切です。検体は生ものですので、時間が経てば経つほど劣化してゆきます。 もし夜間・休日であればふらん器に入れる、冷蔵保存など、検体の保存法(注3)に従います。可能ならば、自分でその場でグラム染色を行えば、 培養結果が戻ってくるまでの数日間使用する初期投与薬の決定の大きな手がかりが得られることがあります。 自身が無ければ検査室に染色のオーダーを忘れず行い、結果はすぐに確認して下さい。よく、 染色のオーダーを出しても数日その結果が放置されていることを見かけますが、これでは迅速診断としてのグラム染色の意味がありませんね。 自分で染色しない方も是非検査室でスライドを見せてもらうことをお勧めします。抗菌薬が有効だったとき、 日に日に白血球・原因菌が目に見えて減少してゆくのがお分かりになることと思います。 検体はなるべく抗菌薬使用前、投与されていれば抗菌薬を中止するか次の投与直前に採取してください。(菌が減少していて、培養偽陰性の原因になります) また、「何か変だな」と感じる熱性疾患を診たときは(感染症とわからなくても)血清を採取して保存しておくと後々ウイルスなどの血清診断を行うことが出来ます。
肺炎、膀胱炎、咽頭炎…等、感染症によってそれぞれ起因菌のパターンが決まっています。 また、それぞれにおいて年齢や宿主の免疫状態、基礎疾患によってある程度起因菌を絞ることが出来ます。 上記のようにグラム染色によってほぼ起因菌が推測可能な場合もあります。 (グラム染色によって分類されたカテゴリーは抗菌薬のスペクトラムを理解する上で極めて重要です。) 初期治療薬は考えうる起因菌をカバーする抗菌薬のうち、最もスペクトラムが狭いものを選択します。 この「考えうる起因菌」というのが厄介です。臓器・年齢・基礎疾患によってパターンがありますが、これを覚えきるのはなかなか難しいのではないでしょうか。 ここで役に立つのが「The SANFORD GUIDE to antimicrobial therapy」です。米国のガイドブックですので確かに起因菌の頻度には違いがあります。 しかし多くの研究データから得られた本ですので、参考の価値ありです。よく見かける感染症については起因菌トップ3を覚えておけば、緊急時にすぐ対応できます。 また、Enpirical therapyでは重症や複数菌混合感染であれば、さらに広範囲のカバーが必要になります。これらの例ではカルバペネムも適応になります。 数種類の抗菌薬の併用が効果的な場合もあります。βラクタム薬とアミノグリコシドの併用がより強力な殺菌的効果を発揮することは有名なので覚えておきましょう。 さらに重症例では投与量を多くする必要があります。βラクタムでは投与回数を多くする(血中・組織中薬剤濃度がMIC(注4)以上である時間を長くするため)ことや、 アミノグリコシド・ニューキノロンでは1回投与量を多くして12または24時間ごとに投与を行います(濃度依存性の殺菌効果とpost antibiotic effect(注5)の存在、 アミノグリコシドの腎・聴力毒性はpeak濃度によらずtrough濃度によるため)。このステップでは起因菌に効かない抗菌薬を選択すれば患者の予後は悪くなり、 過剰な広域抗菌薬の使用は薬剤耐性菌の出現や二次感染のリスクを高めるというジレンマがあります。一般には患者の予後を心配するあまり、 不必要に広域の抗菌薬を使用しがちですが、正しい知識があれば適切な選択を行うことが可能ですので、今ある抗菌薬の価値を下げないように頑張りましょう。 ちなみにキノロンなどの一部を除けば、抗菌薬の開発スピードは落ちてきています。根本的な新薬の開発を待つよりは、現存の薬を大切にする方が現実的でしょう。 また、抗菌薬の種類によらずに一律に1日2回投与を行っているのをよく見かけますが、抗菌薬によって投与間隔を変える必要があることに注意してください。(詳細は各種抗菌薬の項で) 一般に、抗菌薬治療は原則として「やるとなったら徹底的に」です。 高度の腎機能障害・肝機能障害・妊娠・授乳・副作用などの問題があれば投与量や投与間隔を調整することもありますが、 多くの場合では投与量は多めに設定(注6)します。
1〜数日で提出した検体の培養結果が戻ってきます。この結果の解釈は非常に重要ですので詳細は別の機会に改めて触れるとしましょう。 培養で検出された菌が必ずしも起因菌でない場合があるので注意が必要です。痰の培養で気道の定着菌が検出されても必ずしも肺炎の起因菌とは限らず、 グラム染色の所見で確認されているか、検体に白血球が存在するか、貪食像があるか、ということと合わせて評価することが必要です。 また、すでに抗菌薬が投与されている患者では起因菌は減少し、定着している耐性菌のみが顔を出すので、培養結果を見てギョッとすることも珍しくありません。 また、検体が適切な環境で保存されていなかったり、検体が放置されていたりすると起因菌が死滅してしまうこともあります。 ですから、検体の正しい採取法と検査室への迅速な運搬はとても大切なのです。覚えておいて下さい。 培養・感受性が判明したら、起因菌に対して感受性が良好で、よりスペクトラムの狭い(特異的な)抗菌薬へ変更することが必要です。 ここでは前述したように培養結果がきちんと起因菌を表現しているか評価するとともに、選択しなおした抗菌薬が病巣臓器への移行性を有していることを確認します。 ここでも患者の重症度や選択する抗菌薬によって適切な投与量や投与間隔を決定します。
検査結果より適切な抗菌薬を選択し治療継続しますが、第1項で述べたように各臓器ごとのパラメータ、 全身状態を総合的に参考にして治療効果の評価を行います。グラム染色による起因菌の減少や白血球の観察が目に見える参考になることも多いです。 同時に副作用の有無(肝障害・腎障害・薬剤熱・血小板減少・白血球減少・腸炎など)をチェックします。 よく、「熱が下がらない、炎症反応が収まらない」などの理由で抗菌薬をコロコロ変えてしまうということを目にします。 もし、本当に現在使用している抗菌薬が無効だとしたら、その原因(感受性、移行性、膿瘍や人工物への感染の存在などの外科適応例)が何であるのかを評価し、 それに従って抗菌薬を変えるようにしましょう。でないと、効き目のありそうな抗菌薬にたどり着くまで抗菌薬のハシゴをしてしまい、 何が何だかわからなくなってしまいます。また、前述したようなストラテジーに沿って選択していれば殆どハズレは無いでしょう。 ただし、腎盂腎炎のように抗菌薬が効果を示しても1〜2日は発熱が持続する場合や、膿瘍などの存在によってなかなか治療に抵抗性を示す場合もあり、 じっくり待つのが必要なこともあります。いずれにせよ、抗菌薬を何の考えもなしにすぐに変えてしまうことはやめた方が良いでしょう。 治療期間についてはよく質問を受ける項目の一つですが、細かいことは色々ありますが、基本は合計2週間の抗菌薬の継続です。 経口薬については議論のあるところですが、解熱して状態が落ち着いていれば経口薬への切り替えが一般的には可能です。 膿瘍・膿胸などの存在下では4週間以上の使用が必要です。また、敗血症に陥った症例でも2週以上の使用が勧められます。 長期間の使用は耐性菌の出現の問題もあり、控えるべきなのですが、「やるとなったら徹底的に」 を原則とする抗菌薬治療では良くなったからという理由で中途半端な抗菌薬投与を行うべきではありません。 急性骨髄炎・感染性心内膜炎では4〜6週間の治療を要します。ブドウ球菌のような再発性の高い菌でも6週間近い治療が必要なことがあります。 これらの長期間の治療を要する場合、耐性菌の出現や菌交代現象(注7)の防止に古い世代のペニシリンなどの狭いスペクトラムの抗菌薬は非常に重宝します。 反対に、急性咽頭炎(通常は10日、アジスロマイシン5日問投与で同等の効果という研究もある)、下部尿路感染(通常は1〜2週間、 ニューキノロンの3〜5日間投与で同等の効果といわれる)の様に、比較的短期間で済む場合もあります。 混乱するといけませんので細かいことは抜きにして重要な概略のみをお話しました。具体的な話は抗菌薬の各論や、各疾患の各論で触れたいと思います。
今回はケーススタディーです。今までの内容の確認のつもりでチャレンジして下さい。
抗菌薬の詳しい話はそれぞれ今後やっていきますので、今回は全体の流れ、抗菌薬の使用における考え方に重点をおきました。
最初に前章のまとめの確認です。順番を確認してください。
STEP1.抗菌薬の必要の有無
STEP2.抗菌薬使用前の検体採取
STEP3.Empiric therapy(初期治療薬の選択)
STEP4.細菌学的検査の結果の解釈
STEP5.治療の継続・治療効果の評価
以上のことを念頭に、ではチャレンジ!!10の質問に答えてください。
肺炎では、起因菌のパターンが市中感染か院内(もしくは老人施設など)では異なってきますので、気をつけましょう。 とくに前医からの紹介患者や転送患者の場合、すでに抗菌薬が使用されているかどうかは重要な情報となります。 第1項でも述べましたが、感染症診療において病歴はかなり重要なものとなります。というのも、他の内科疾患とは異なり治療の対象が 「病原体=犯人」であるため、その犯人の特定のためには詳細な情報が手がかりとなるからです。例えば若い咽頭炎患者を診た時には、 性交歴は必須の聴取事項です。女性であった場合は、たとえ職業が学生であっても「副業」の有無について聴く必要があります。 治療の必要のある明らかな原因菌はA群β連鎖球菌が有名ですが、伝播防止の面から言えば、HIVセロコンバージョン、 淋菌やクラミジアによるSTD関連咽頭炎は重要です。ですから、例え大学生であったとしても夏休み、あるいは夜だけの「期間限定バイト」 をしていないか知ることは重要なのです。患者は「そんなことまで聞くなんて」と怪訝な顔をするかも知れませんが、 きちんとその重要性・理由を説明して納得してもらう必要があります。STD蔓延を防止するには必要なことです。 さて話題を戻しましょう。この症例からは、何となく呼吸器感染かな?と印象が伺えると思います。では、前章のSTEPに従ってゆけば、 「STEP1抗菌薬の必要の有無」を探る必要があります。 ここでは、「上気道炎(いわゆる風邪。殆どがウイルス感染、自然軽快する)には抗菌薬は必要ない」ということと 「下気道炎(いわゆる肺炎。ウイルス感染の場合もあるが、多くの場合抗菌薬による治療が必要)には抗菌薬が必要」ということ、 そして「肺炎に似た臨床像を示す非感染性疾患がある」ことを押さえましょう。(注8)
鼻汁や無色の痰、咽頭痛などの組み合わせは上気道炎を示唆するかも知れません。また、痰が膿性であっても、 慢性気道感染や副鼻腔からの膿性鼻汁の落ち込みが無いかを確認する必要があります。アレルギーに起因する咳かどうかという点も鑑別しておかなければなりません。 咽頭に「むず痒い」ような不快感はないか、結膜の充血はないか。 逆に、数日たっても自然軽快しない発熱や、呼吸困難、呼吸数の増加は肺炎の存在を示唆しますが、表1のように肺炎に似た臨床像の他の疾患には常に気をつけます。 もう一度言いますが、肺炎では起因菌のパターンが市中感染か院内(もしくは老人施設など)では異なってきますので、気をつけましょう。 とくに前医からの紹介患者や転送患者の場合、すでに抗菌薬が使用されているかどうかは重要な情報となります。 重症度と起因菌に直接関連する基礎疾患の有無(悪性腫瘍、免疫抑制、神経疾患、うっ血性心不全、糖尿病、アルコール多飲、 肺炎の既往)についても必須の情報となります。 また、肺炎と考えた場合、起因菌想定のために渡航歴(地域に特有の疾患の存在)や、ペットや家畜との接触または山歩きでの虫刺され (リケッチア・クラミジア等)、温泉や循環式湯沸かし器(レジオネラ)などの生活歴を探ることも必要です。周囲の疾病発生状況 (マイコプラズマやインフルエンザなどのウイルス)や家族内感染の状況も押さえましょう。 ただし、重症の場合は以上のことをあれこれ聞いている時間はありませんから、治療のタイミングは遅れないように。 レントゲン行きながら話しを聞く、採血しながら聞く、など時間をうまく使いましょう。 このケースでは、臨床像は増悪傾向、呼吸数も増加しており、また上気道炎を積極的に疑う症状はありませんでした。家族で咳を始めたのは幼稚園に通う孫だということです。
血算、生化学検査などの一般項目(特に肝・腎機能、血清Na濃度、血糖)と動脈血液ガス分析、胸部X-pは皆さん行うことと思います。 以前も述べましたが、何か「異常だな?」と感じる場合は血清を採取して分離冷凍して保存しておくと後から役に立ちます。 さて、抗菌薬使用におけるSTEP2は抗菌薬使用前の検体採取でした。これに従い、痰の採取と違う四肢からの血液培養2セットを行いましょう。 痰は深い咳をしてもらい、膿性のものを採取します。痰がうまく出ない時があります。そんな時はネブライザーで咳を誘発しても良いですが、 無理をせず血液培養のみ行っても構いません。喀痰採取にこだわるあまり治療のタイミングを遅らせないように気をつけましょう。 採取された喀痰のグラム染色(注9)を行うことは、その是非について議論のあるところです。ただしこれについては、 良好な品質の痰が採取されたという前提であれば意味のあるものとなります。(注10)また、解釈についても日中であれば熟練した技師さんがいますので問題ないでしょう。 夜間については慣れていれば行ってみましょう。自分ではわからなくても検体さえ採取して染色しておけば翌日誰かに見てもらうという方法をとることも出来ます。 また、結核を疑わせる所見があれば(長期の咳、発熱、体重減少、X-p像など)抗酸菌染色を行います。結核かどうかということは非常に重要なので、 この場合では胃液や気管支鏡にて検体を採取することもありますが、これは呼吸器科の仕事なのでここでは深く言及しません。 また、レジオネラ(注11)やマイコプラズマなどの異型肺炎の診断はどうするかという問題があります。 血清診断や尿中抗原キットなどの検査方法が開発されていますが、どれも高価ですので全例に行う価値はありません。 結論から言うと、非定型肺炎は臨床状況などから判断するしかないといえます。日本の教科書には異型肺炎の特徴としてスリガラス様陰影や、 両側の陰影、CRPや白血球の上昇が比較的軽度、空咳…などの記述を見かけますが、これらは臨床研究により参考にはならないことが示されています。 また、マイコプラズマ肺炎は若年者のみの病気のように記述しているものも多く見受けられますが、高齢者でも罹患率が高いことがわかっており、 症状・所見も多彩なため、肺炎を見たらマイコプラズマの可能性は常に存在します。そのため、やはり流行状況や、病歴から推定し、 強く疑う場合は特異的検査を行うといったやり方が現実的でしょう。今回は肺炎がメインではないので詳細は割愛します。 (筆者は、致死的なレジオネラ肺炎と感染管理上問題となる結核だけはすぐに治療対象となるため、強く疑う場合は特異的検査をすすめ、 その他については寒冷凝集素を調べるくらいで、明らかにグラム染色や培養で起因菌が同定できない場合以外は必ずしも異型肺炎をカバーせず、 通常治療で反応が不良な時に考慮するようにしている。)
米国感染症学会、米国胸部学会、日本呼吸器学会とそれぞれ入院を考慮するための基準が掲載されています。 医療事情の違いもあるため、米国ではなるべく外来へ…という傾向にあります。どれかを参考にすればよいと思います。 (筆者は米国感染症学会のスコアリングシステムを採用している。) 私見ですが、難しい基準は抜きにしても、高齢者で発熱がある場合や、若年者でも低酸素血症など何か不安要素があれば、 わが国では入院させて良いのではないでしょうか。急性感染症は、良くなった段階で退院する超短期入院の適応と考えています。 筆者は肺炎に限らず、「抗菌薬を経静脈投与行いたいと思ったら入院」という大雑把な感覚を持っています。本例では、 入院の適応となると考えられます。(ちなみに米国感染症学会スコアで90点危険度軽症�靴巴惨�入院の適応)
STEP3はEmpiric therapyでした。ここまでの情報をまとめましょう。 60歳の男性、肺炎疑い。軽症〜中等症と思われるが酸素化不良で入院管理と考えた。 病歴としては、家族内で孫から流行。身体所見上発熱、頻呼吸、coasecrackleとそれに一致するX-p上浸潤影。 検査所見上は低酸素血症、炎症反応亢進、グラム染色でランセット型のグラム陽性双球菌の貪食。 グラム染色の所見から、肺炎球菌が起因菌と想定されますね。肺炎球菌は細菌性肺炎の最も多い起因菌です。 サンフォードの「熱病」の肺炎の項を開くと肺炎球菌に対するEmpiric therapyで選択すべき抗菌薬がペニシリン耐性かどうかに分けて記述されています。 この感受性は培養結果が戻ってくるまで不明です。わが国では残念ながら抗菌薬の乱用により、 ペニシリン中等度耐性以上のいわゆるPRSPが、全ての肺炎球菌の50%を超えると言われていますから、 PRSPを想定した治療となります。すると、「熱病」によれば「活性を強化したフルオロキノロン」または「第3世代セフェム」となっています。 ここで言う活性を強化したフルオロキノロンとはGFLX(ガチフロ)やLVFX(クラビット)ですが、あいにくわが国では注射製剤がないです。 フルオロキノロンは吸収率が抜群に良く、全身への移行性も注射剤に比べて劣りませんが、それは吸収能力が正常であっての話で、 本例のように胃薬のようなものを飲んでいる場合吸収率が著しく減少しますので、補助的に併用するのは良いと思いますが、 単剤では入院するようなケースでは不向きと思ってください。よく「クラビットが効かない」とおっしゃる先生を見受けますが、 意外と吸収率のことを考慮されていないことと、投与量が少ないことが原因と考えられます。 よって本例では第3世代セフェムが選択されるでしょう。 次に使用量です。誰にも一律に同じ投与量にしているのをよく見かけます。しかし、肝機能障害・ 腎機能障害などの程度に応じて量や投与回数を調節(血中濃度が必要以上に上がり、副作用出現するため)してやる必要があります。 よく、血清クレアチニンの絶対値を参考にする人がいますが、クレアチニンクリアランスの予測式をご存知でしょうか?
女性では上記に0.85をかけます。 例えば85歳の女性で体重40kgだった場合、血清クレアチニン濃度が0.8mg/dlと一見正常に見えても、計算すると32.5ml/minとなります。 思ったより低いと思いませんか?最もこの式は腎機能が明らかに悪い人には使えないので、一見正常に見える人の予測に役立ちます。 サンフォードの「熱病」をはじめ、抗菌薬のマニュアル本には腎機能障害時の使用量・投与回数の変更方法について記載されていますので、それに従って変更すればいいわけです。 本例では予測クレアチニンクリアランスが86.2ml/minですから、通常量の使用(一般にCCRが50以上あれば通常量でよい)でいいわけです。
なぜ8時間ごとかは、半減期を考慮してのことです。βラクタムが時間依存性であることは前回お話しました。 同様のケースでアンピシリン/スルバクタム(ユナシンS)が選択されていることをよく見かけますが、これは次の2つの理由で適切とは言えません。 �’抉蟲絛櫃離撻縫轡螢鸞兩�の頻度を考えると、わが国での投与量では十分な殺菌作用が得られない (耐性肺炎球菌にはペニシリンであれば高濃度の必要あり。腎機能が低い例では可能)。 ��肺炎球菌の耐性機序はペニシリン結合蛋白(PBP)の変化によるため、βラクタマーゼ阻害薬 を加える意味はない。 ちなみに市中肺炎でカルバペネムを選択するケースは限られており、殆どの場合において、他の薬剤や多剤併用療法で対応可能です。
もちろん腎機能に従って、この場合だと2g12時間ごとへ減量しても良いですが、セフトリアキソン(ロセフィン) のような胆道排泄型の抗菌薬では腎機能障害により投与量を変えなくて済むことを知っておくと便利です。
グラム染色がいつもできるとは限りません。そんなときは細菌学的情報からEmpiric therapyを行います。 サンフォードの「熱病」をみると、成人市中肺炎の起因菌は「M.pneumoniae, S.pneumoniae, 合併症によっては H.influenzae, M.catarrhalis, S.aureus, 嫌気性菌」と書かれています。 Empiric therapyではそれらをすべてカバーする抗菌薬の最もスペクトラムの狭いものを選択すればよいわけです。 米国感染症学会のガイドラインではこういった場合基本的にβラクタム薬にマクロライドの併用もしくはフルオロキノロンの単剤投与が推奨されています。 しかし、呼吸器キノロンと呼ばれるクラビットなどの注射製剤の無いわが国では、前者が選択されることになるでしょう。 マクロライドは異型肺炎とくにマイコプラズマを考慮してのことですが、前述のようにこれを加えるかどうかはケースバイケースと思われます。 本例では孫から始まる家族内発症ということで、マイコプラズマも疑って、マクロライドを併用しても良いでしょうが、 エリスロシン点滴の場合催不整脈作用があるので要注意です。クラリスロマイシンなどの経口薬の併用が安全かも知れません (とはいえ、マクロライドは他の薬剤との相互作用が非常に多彩なので、筆者は本例のような場合はフルオロキノロンを選択するかもしれません。) さて、セフォタックスを投与して3日後、培養の結果が返ってきました。
STEP4は細菌学的検査の結果の解釈でした。一般に感染症における抗菌薬治療期間は2週間と以前お話しました。 肺炎の場合、肺炎球菌の場合解熱から72時間、他では解熱から1週間の抗菌薬投与が必要とされています。 本例では、グラム染色と培養の結果を合わせて考えても、肺炎球菌性肺炎でよいでしょうから、今後は感受性・ 移行性のある抗菌薬から一番スペクトラムの狭いもの、つまりこの場合アンピシリン(ビクシリン)を解熱から72時間まで投与続行することになります。
STEP5は治療の継続と治療効果の評価でした。 細菌学的に感受性があり、移行性が良好な抗菌薬であるならば、良くなるはずです。ではなぜ良くならないか? 人−病原体−薬剤の3角形の基本に立ち返り、ひとつひとつ検証して理由を探る必要があります。 まず「人」の問題。治らないような要因、例えば免疫異常や、循環不全、膿瘍や膿胸などの抗菌薬が到達できないような隔離された感染巣の存在。 または表1で列記したような感染以外の問題が隠れている場合。(筆者はクレブシエラ肺炎を治療し、細菌学的には改善しているのに画像・ 臨床状態が改善しなかった例を経験している。彼は末期がんでありその後死亡したが、解剖により肺梗塞を合併していたことが判明した。 CTでも肺炎像としかコメントされていなかった。) 次に病原体の問題。グラム陽性球菌はMIC以上の濃度で発育抑制されていても、 完全な殺菌に至らないトレランスの問題や黄色ブドウ球菌のように再発しやすく治療に難渋するタイプの菌、そして耐性菌の問題。 また、その菌が検査室の結果で感受性でも臨床的には無効な場合があります。それは周りの常在菌が産生する酵素によるものをはじめ、 原因がわかっていないものまで様々な場合でそういう現象が起こることが知られています。(逆もあり。検査室では無効でも臨床上有効な場合あり。 例:ペニシリン耐性肺炎球菌に高容量ペニシリンが有効など) また、薬剤の問題。投与量は適切か、投与回数は適切か。わが国では、抗菌薬が「効かない」とされる多くの原因がここにある気がします。 また、薬剤は存在環境により不活化される場合もあります。(pHなどにより)効かないといってすぐに抗菌薬の変更を行うのではなく、以上のことを必ず考えて対応する癖をつけましょう。 肺炎における治療効果のパラメータは、白血球・CRP・体温だけでなく、呼吸数・酸素飽和度・喀痰のグラム染色所見(菌の減少、 白血球の減少・破壊像)・喀痰量・X線所見・自覚症状の改善など様々なものから総合的に判断します。以前にも話しましたが、 抗菌薬が効果をあげたためにかえって炎症反応が亢進することはよく経験されます。 一般に肺炎で抗菌薬が効果を示したとき治療3〜5日以内に何らかの改善がみられます。肺炎球菌性肺炎の場合、若年成人では治療後の平均有熱期間は2.5日ですが、 菌血症を伴えば6〜7日かかりますし、高齢者ではもっと長くかかることがあります。 ですから本例のようなケースでは1日2日で改善しないからといって必ずしも抗菌薬を「やれカルベニンだ、チエナムだ」と変える必要は無いのです。 治療内容に自信があり、悪化傾向に無い限りはじっくり治療すべきなのです。
経口抗菌薬への切り替えは議論のあるところですが、以下の項目を満たすとき経口薬への変更が可能とされています。
原則は静注で使用していたのと同じ系統の経口抗菌薬へ切り替えることですが、不可能なら似たスペクトラムのものを選択することになります。
肺炎球菌ワクチンはその効果については議論があり、多数の研究がありますが、インフルエンザワクチン接種と組み合わせることで、 菌血症例の減少や、発生率の減少が期待されています。ここでは詳細は触れませんが、そんなワクチンがあることを覚えていてください。
抗菌薬の各論です。紹介したいことはたくさんありますが、時間・紙面の関係で、最重要なことのみお話します。 最初に断っておきますが、ここに記載した抗菌薬投与量は効果を十分発揮する米国使用量です。わが国の投与量はひどく少ないので、 このままの投与量では指導医に何か言われたり、薬局から電話がかかってきたりすると思います。今は自分で投与量を勝手に増やすということが心配でしょうから、 添付文章に記載されている上限量で使用せざるを得ないかもしれません(カッコで記載しています)。しかし、 この多いのが「正しい」投与量ですので、皆さんが責任ある立場になったら迷わずガツンとやって下さい。研修医の間でも、 理解のある指導医で運良く許可がおりたらガツンとやって下さい。重症の感染にチョロチョロ抗菌薬を生効きさせるほど悪いことはありません。 ただし、腎機能などCCRの計算は常に行い、投与量・投与間隔の調整は癖として身につけて下さい。 さて、皆さんが抗菌薬で最も良く使われるのが、βラクタム系といわれる系統のものだと思います。 βラクタム系は、その名の通り、βラクタム環と呼ばれる構造を有しているからで、詳しいことは割愛しますが、 機序としては大まかに言うと細菌の有するペニシリン結合蛋白(PBP)に結合することで、細菌の細胞壁の成長を押さえ、 細菌は自然に破壊もしくは免疫細胞に処理されるというわけです。このβラクタムにどんな側鎖がくっついているかでスペクトラムが変化するようです。 さて、このβラクタムでも最も歴史的、というよりは抗菌薬のアダムとイブともいえるのがペニシリンです。感染症をやる人間は 「ペニシリンに始まりペニシリンに終わる」と言うくらい、ペニシリンにこだわる人も少なくないです。それほど古くとも魅力的で、まだまだ使用価値のある薬剤なのです。
1929年、ペニシリンはフレミングによってアオカビから発見されました。Penicillium notatumというこのカビの名に由来しペニシリンと名づけられたわけです。 実用化は1940年、多くの命を救いましたが、実用化から10年程でペニシリン耐性ブドウ球菌が出現してきました。人間の方も 「元祖ペニシリン」を色々いじることによって、スペクトラムを広げたり、耐性に効力を持たせたりと、新しいペニシリンを開発してゆきました。 ところでβラクタマーゼって知っていますか?遊離型のPBPでβラクタムにくっついて、菌体のPBPへの結合を阻害し、 さらに加水分解を誘導してβラクタムを破壊するという恐るべき酵素です。よく、誤解されることが多いのですが、 βラクタマーゼは1種類ではなく、色々な種類があります。ですから、Aというβラクタマーゼ産生菌に××が効くからといって Bというβラクタマーゼ産生菌にも効くとは限らないのです。ペニシリンの構造を変え、βラクタマーゼに安定なペニシリンを開発してきましたが、 それでもイタチごっこですので、いっその事βラクタマーゼを阻害する薬剤を混ぜようという考えに至りました。それが、βラクタマーゼ阻害薬なのですが、 最近このβラクタマーゼ阻害薬に阻害されないという非常にややこしいβラクタマーゼも見つかっています。このように人類と細菌の騙しあいは日夜続けられているのです。 さて、話を戻しますが、このように次々開発されたペニシリン。過去の遺物と思われるかもしれませんが、まだまだ現役の抗菌薬なのです。 といっても、感染症診療のレベルが必ずしも高いとは言えないわが国では、ペニシリン系抗菌薬が次々生産中止になったりと日の目を見ていません。 今回は、使用価値のあるペニシリン製剤について臨床的なグループ分けをして説明していきたいと思います。その前に、ペニシリン系抗菌薬の一般的な特徴について触れておきましょう。 その中でも重要なものについてピックアップして解説していきましょう。
ペニシリンはスペクトラムさえ狭いものの、感受性があるとなったら非常に強い殺菌効果を発揮します。 わが国で「ペニシリンは弱い」という誤った概念が定着していますが、それはペニシリンの薬剤特性を無視した使用をしているからではないでしょうか。 後述するように、わが国の標準使用量では足りないのです。重症例では思い切って使用量を増やす必要があります。高濃度ペニシリンは抜群の強さを誇るのです。
βラクタム系抗菌薬が時間依存性であることは説明済みですね。 ペニシリン系抗菌薬は半減期が1時間前後のものが多く、有効血中濃度を保つためには4〜6時間ごとの投与(腎機能にもよりますが、、、)が必要です。 「ペントシリン1日2回、10時・20時」とかいう良く見かける投与方法はペケです。また、理論上MICに達していても、トレランスの問題などがあり、 濃度が不足する場合もあります。ピーク濃度はMICの4倍以上であることが望ましいです。 わが国の使用量と、米国の使用量にはペニシリンに関しては特に大きな隔たりがあります。
ペニシリン系抗菌薬の吸収率は良好とは言えません。A群β連鎖球菌による治療の最良の方法はペニシリンによるものですが、 わが国ではペニシリンGの経口であり、吸収が比較的良いペニシリンVがありません。 サワシリンなどのアモキシシリンやそのプロドラッグ(注12)は比較的吸収率が良好とされていますが、個人差も大きいと言われています。 また、頻回投与が必要であるペニシリンはコンプライアンスの問題からも治療失敗のケースがあることに注意します。
これは、非常に大切な項目で、なおかつ多く誤解をされている事項があるので、次章ではペニシリンの副作用について取り上げます。 これは抗菌薬全体における副作用を理解する上で非常に重要な知識です。
さて、ペニシリンにも色々種類があると言いましたが、臨床的な使い道によってそれらをグループ分けしてみましょう。以下の分類は、 米国感染症専門医(現在亀田メディカルセンター勤務)の岩田健太郎先生という人が考えたものを少し簡略化したものです。
それぞれについて見てゆく前に、グラム染色について。染色の意義は以前お話しましたが、 とりあえずグラム染色を基にした細菌の分類を知らないと話が進まないので簡単ですがご容赦下さい。 グラム染色によって、大雑把に3つのグループに分かれます。染まらないものは、 厳密に言えば染まりにくいレジオネラ菌なども含んだカテゴリーですが、クラミジアやリケッチア、マイコプラズマなどを想定しています。
�,鉢△砲弔い討蓮�形態から球菌(coccus)と桿菌(rods)に分けることができます。 これらの組み合わせによりグラム陽性球菌(Gram Positive coccus)というように言われます。 また、別の観点から細菌は嫌気性菌と好気性菌(注13)に大雑把に分けることができます。嫌気性菌については、 グラム染色上様々な形態の菌群として見えますが、対応は同じなので、あえて「嫌気性菌」としてグループ分けします。 腹腔と口腔内では、βラクタマーゼ産生するバクテロイデスが関与する度合いが違うので、横隔膜の上と下で分けてやります。 すると、結果として以下の7つのサブグループに分けられます。
この中で、臨床的にはGPR、GNCというのはあまり重要ではありません。というのも、 このグループに属しているもので起因菌となるものは極めて限られているからです。というわけで、簡単に言えば、 GPC・GNR・嫌気性菌(横隔膜上・下)・その他に分かれるわけです。では、なぜこの分類が便利かというと、抗菌薬のスペクトラムを知る上で非常に重宝するのです。 一般に、古い抗菌薬はGPCにしか効かず、改良を重ねるにつれ、GNRへのスペクトラムを広げていっています。 ただし、2兎追うものは何とやらで、GNRへスペクトラムを広げる代わりに、GPCへのスペクトラムを犠牲にする傾向にあります。 ペニシリンも例外ではなく、GPCにしか効かなかったものを改良してGNRにも効くように改良されていった歴史があります。 では、そのことを頭において、ひとつひとつ紹介してゆきましょう。
最も古いペニシリンです。実用化当時は「金より高いペニシリン」「命の弾丸」などと重宝されたものですが、各種細菌の耐性化が進み、 今や前世紀の遺物となりつつあります。が、しかし!!まだまだ現役で使える薬なのです。
こんなものでしょうか。結局日常で第一選択になるのはA群β溶連菌ということですね。おかずとして嫌気性菌にも効くことがわかりました。 もちろん、培養の結果、PCGに感受性があれば、もちろん使って下さい。ただし、十分量を頻回投与です。
元祖ペニシリンにアミノ基をくっつけてグラム陰性桿菌にも効かせてやろうと開発されたペニシリンです。 GNRに手を出した分、GPCへの効果が少し弱まっています。ただし、現在では耐性化が進んでおり効かないGNRも多いのです。 ただし、昔の名残、いまだに大腸菌なんかでは感受性のあるものが結構います。売れなくなったアーティストと同じで、時代が変わってもコアなファンは存在するものなのです。 また、アミノペニシリンは古いペニシリンよりも腸球菌・リステリアでは効果が高いです。また、経口は吸収率が改善されています。そのくらいです。その他はPCGと変わりません。
メチシリンって聞いたことありますか? MRSAの正式名称は「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」でしたね。あのメチシリンです。 当初PCGで対応できていた黄色ブドウ球菌ですが、βラクタマーゼを産生するようになり効かなくなってしまいました。 そこでβラクタマーゼにも安定なペニシリン(Penicillinase-resistant penicillins)が開発されました。その代表がメチシリンです。 ただし、メチシリンは高頻度の間質性腎炎の合併により現場から消えて行きましたが、同じ系統のナフシリン、オキサシリン、 ダイクロキサシリン、クロキサシリンが開発されました。しかし、 残念ながらPBPの変異によりメチシリンを含む全てのβラクタム薬に耐性を獲得したMRSAの誕生によってそれら価値は半減してしまいましたが、 MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)感染症ではまだまだ第一選択となる抗菌薬です。 ただし!これらの有用な抗菌薬は日本では製薬メーカーの商業的都合により生産中止となり存在しません。 不本意ですが、クロキサシリンが配合(注15)されているビクシリンSを代用せざるを得ません。 このビクシリンSは前述のビクシリンとは別物ですのでご注意下さい。(ただし、重症例ではセファゾリンを使用します。)
いわゆる広域ペニシリンと呼ばれるもので、アミノペニシリンの改良型で、緑膿菌にもスペクトラムが広げられていることが最大の特徴です。 ただし、GNRへ手を広げた分、GPCにはさらに効果は低くなっています。広域なので、その使用には適応の検討を怠らないことが必要です。 このピペラシリン、MICとMBCに差があるとされています。ということは、一見効いたかの様に見えて、 投与中止したとたん再燃するケースが予想されます。そうです、そんな時には投与量が足りないのです。 前述しましたが、PIPCの投与量では米国とわが国には大きな大きな隔たりがあります。上記の現象を考慮した際、投与量の多い方が理に適っていることは明白です。 PIPCについては是非投与量は多めにされることをお勧めします。 広域スペクトラムですが、緑膿菌を疑う(慢性呼吸器疾患で入退院繰り返している、糖尿病などの易感染性患者、グラム染色で明らかに緑膿菌の所見がある、 長期の入院患者、広域の抗菌薬をすでに投与されている患者)ケース以外では耐性菌出現防止のために絶対に使用しないで下さい。 また、添加されているナトリウムにより高Na血症を起こすことがあるので注意して下さい。
β ラクタマーゼには色々な種類があり、βラクタム薬はこのβラクタマーゼに分解されないようにどんどん構造式を改良され、 細菌側もさらに新しいβラクタマーゼを産生するようになってというイタチゴッコが繰り返されています。 それならば、悪は元から絶とうというわけでβラクタマーゼを阻害する抗菌薬が開発されました。クラブラン酸、スルバクタム、 タゾバクタムといったこれらの抗菌薬はβラクタマーゼ阻害薬と呼ばれ、ペニシリンやセフェム薬に配合され商品化されていきました。 なんと、βラクタマーゼ阻害薬はそのものが抗菌薬だったのですね。 ただしこのβラクタマーゼ阻害薬は、βラクタマーゼなら何でも効くというわけではありません。ちょっと細かい話なので忘れて構いませんが、 普通βラクタマーゼの情報はプラスミド(注16)にコードされていますが、染色体本体にコードされているものもあり、セファロスポリナーゼと呼ばれています。 このタイプにはβラクタマーゼ阻害薬も無効ですので注意して下さい。Enterobacter, Citrobacter, Pseudomonasといったグラム陰性菌でこのようなβラクタマーゼが産生されます。 このβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンもスペクトラムが広いため、その適応はその都度検討すべきです。 「何でもかんでもユナシンS」というのは感心できません。βラクタマーゼ非産生菌であればABPCで十分のはずです。 また、世の中にはPIPC/TAZ(ピペラシリン・タゾバクタム)という緑膿菌をカバーするβラクタマーゼ阻害薬が存在します。 好中球減少時の発熱に際しても有効である抗菌薬で、スタンダードなものですが、当院には採用されていません。 わけのわからない第4世代セフェムやら新しいキノロンばかり揃えて、スタンダードなものを無視するお役所的管理の弊害が表れていると思います。 現場の薬剤師さん達は、何が大事かよく勉強なさっていますが、当の採用のための委員会は各科のエゴによる独断と偏見による決定が行われているとのこと。 客観的評価による採用を行ってもらいたいものです。 さて、ここには当院では採用されていない「オーグメンチン」を紹介させて頂いております。これも経口薬としてはスタンダードなものですが、 なぜか当院では「ユナシン錠」なる謎のプロドラッグが採用されております。このユナシン錠、ここだけの話、下痢が高頻度で起きます。 一瞬偽膜性腸炎かと焦るのですが、殆どの場合、この薬剤特有の副作用としての下痢です。予防効果は不明ですが、 筆者はあらかじめビオフェルミンを多めに内服させておきます。あくまでおまじない程度ですが。また、ユナシン錠は腸で分解されてABPCとSBTになるらしいですが、 吸収率がどのくらい信用できるかのデータは不明です。また、お年寄りなどで食道にユナシン錠が停滞した場合ここで加水分解が起こり食道潰瘍を形成しますので注意してください。 また、このクラスの抗菌薬は嫌気性菌にも有効な薬剤で、誤嚥性肺炎や腹腔内感染症など嫌気性菌のカバーが必要な感染症でも使用できます。 胆道系感染症などにも使用できるため、かなり使い勝手の良い抗菌薬です。よって、 緑膿菌もカバーしうるPIPC/TAZがもし当院でも導入されれば様々な場面でカルバペネムに代用しうるものと思われます。 よく「ユナシン使用、ダメならカルベニン」という短絡的な使用法が見受けられますが、やはりペニシリン系抗菌薬を使用するときの原則は同じで、 投与方法と量に留意します。効かないのは量が足りないからというケースが多いのではと筆者は考えています。
以上、ペニシリン系抗菌薬の簡単なまとめを記述しました。日々の診療のお役に立てられれば幸いです。もっとペニシリンの良さを皆さんに知っていただきたく思います。 最後に一つだけ裏技を紹介します。プロベネシドは痛風の治療薬として知られていますが、ペニシリンの血中濃度を維持することが知られており、 プロベネシドを同時投与することでペニシリンの投与量が少ない場合でも多少効果があがるかもしれません。
今回は抗菌薬の副作用についてです。皆さんは抗菌薬を処方する時にどのくらい慎重になりますか? 「抗菌薬の乱用」という事実が世に存在するということは、それだけ抗菌薬が処方しやすい種類の薬剤との認識であるからではないでしょうか。 例えば、副作用や薬効の面で扱いにくい抗不整脈薬や抗精神病薬を気軽に出そうと思う研修医はいないはずです。 逆に抗菌薬は胃薬や解熱鎮痛薬のように自分の判断で処方することが多いのではないでしょうか。 たしかに近年の抗菌薬は少しでも副作用を減らすべく開発されており、ニューキノロンのように殆ど副作用を気にせず使用できるものが次々世に出ているのは確かです。 しかし、アナフィラキシーをはじめ、命に関わるものも未だに存在するので油断は禁物です。わが国では抗菌薬投与前の皮内反応テストという行為が儀式的に行われていた反面、 アレルギーなどが起こったときのバックアップ体制は殆どとられていないのが現状です。重症化しうるアナフィラキシーを中心に、抗菌薬の副作用について考えて見たいと思います。
抗菌薬の副作用を臨床的にとらえるとき、
�|�にでも起きうるもの(薬剤毒性に起因する用量依存性のものが多い。相互作用や催奇形性含む)
��特定の人にのみ起きるもの(アレルギー、過敏性反応、体質的な反応など)
の二つに分けて考えると便利です。日常よく出くわす種類の副作用、例えば抗菌薬使用時の下痢(偽膜性腸炎かどうかに関わらず)や、
胃部の不快感などは�,吠�類されます。�,呂世譴砲任盖�こりうるため、投与してみないと出現するものかどうかわからないのですが、
経験的にいくつかの副作用については一定以上の頻度で起こるとわかっているものもあります。いずれも用量依存性に出現頻度は増加し、
起こったときは抗菌薬の使用のメリットと副作用のデメリットを天秤にかけて抗菌薬投与中止するか、減量や種類の変更、
または続行したまま対症療法行うことになります。いずれも直ちに生命に関わるものではないため、注意していれば、それほど怖いものではありません。
一方、�△砲茲襪發里鷲囘戮海従�ないものの、生命を脅かす場合があること、症状が重篤になることも多いことから、同じ臓器障害でも、�,��△�の判別は重要です。
重篤となりづらい臓器別症状から記載し、重要なアナフィラキシー等はゆっくり後で触れましょう。
バンコマイシンやアミノグリコシドの腎毒性(上記で分類� 砲�よく問題にされることが多いと思います。 しかし、問題になるほどの腎障害を起こすことは少ないことを覚えていてください。腎毒性のある薬剤は抗菌薬以外にも多く存在します。 それなのに、なぜか腎障害=抗菌薬という図式が多くの人々の潜在意識にあるようです。アレルギー(クームス分類でタイプ��)機序により、 βラクタム薬やリファンピシン、シプロフロキサシンといった抗菌薬は急性間質性腎炎(尿中好酸球が参考になることがある。)や腎ネフローゼを起こしうるのですが、 非常に稀とされています。そもそも感染症自体が腎機能悪化をきたしますから、抗菌薬投与を中途半端に行って病態悪化する方がデメリットである場合も多いと思います。 たまに高齢者や腎機能の低下している糖尿病患者に「腎障害の少ないマクロライドを使おう」という方がいらっしゃいます。 一見理に適っていますが、免疫力の低下しているこれらの人々こそ、静菌的なマクロライドではなく、殺菌的なアミノグリコシドなどを使用していく必要があるのです。 腎機能に応じて、投与量や投与間隔を調整すれば、腎障害はそれほど恐れるものではないことに留意して下さい。
�,亡泙泙譴覦豌畧�の肝機能異常に関しては、臨床状態を見ながら投与内容の見直しを図ります。教科書的にはマクロライドが有名ですが、 どのクラスの抗菌薬でも起こりえます。�△砲茲覺留蠅両豺隋⊇蕾鹽衢燭任賄衢燭�ら数週間後、感作後では直ちに生じます。 発熱・発疹・溶血・好酸球上昇を伴うこともあります。合成ペニシリン、セフトリアキソン(ロセフィン)、エリスロマイシンなどが有名です。 この場合は薬剤中止、薬剤の変更、もしくは脱感作が必要です。
頻度は少ないですが、�,亡悗靴童世┐弌⊇斗廚覆海箸禄転百鏡�症自体が血球減少を起こすこと、骨髄疾患が存在する可能性の2つを常に頭に置くべきです。 原因の検索なしに、「感染症治療時の血球減少=抗菌薬による骨髄抑制」という図式を立て、安易に抗菌薬を変更・中止すべきではありません。 クロラムフェニコールが有名です。�△砲茲訃豺隋�好酸球増多症、血小板減少症、溶血性貧血などの所見を呈し、アンピシリン(ビクシリン)、 バンコマイシン、ストレプトマイシンなどで見られます。
アミノグリコシド・バンコマイシンの聴神経障害は有名ですね。長期使用の際は、定期的な観察が必要です。 そのほかにもペニシリンやカルバペネムの痙攣は重要ですので覚えていてください。他にも様々な神経・精神症状があらわれることがありますが、 そういうことがあるくらいに思っておけばいいでしょう。
血管痛、血管炎、電解質異常、血糖異常など。
さて、ここからが本題です。まずはアレルギーのお話から。 アレルギーは学生時代「クームスの分類により4つに分けられる」と習った覚えがあると思います。 まずはタイプ��(アナフィラキシー)からです。後ほど詳しく述べますが、アナフィラキシーは緊急病態です。 抗菌薬使用において必要なことは皮内反応テストを行うことではなく、アナフィラキシーへ対応できる救急蘇生処置のスキルです。 あなたは大丈夫ですか。アナフィラキシーの患者さんに何をすべきか知っていますか。もしできないなら、 夜間一人で皮内反応は行わないほうがいいでしょう。皮内反応でショックを起こした例はいくらでもあります。 さて、アナフィラキシーは薬剤投与後直ち(5〜30分くらい)にびまん性紅斑、掻痒、膨疹、血管性浮腫、気管支痙攣、 喉頭浮腫、腸蠕動停止、低血圧、不整脈といった症状を呈し、死亡することもあります。(注17) IgEを介した免疫反応で、IgEがマスト細胞・好塩基球へ結合しヒスタミン等を遊離させるのでした。 じゃあ、アレルギーで有名なペニシリンは使わないほうがいいのかと申しますと、それは過剰な心配と言うべきでしょう。 ペニシリンにアレルギーのある人の割合が約5%、抗菌薬全体で見るとアレルギーのリスクは1〜3%とされています。 しかし、実際アナフィラキシーに至る人の割合はペニシリンでも0.001〜0.05%、抗菌薬全体ではもう少し低く、結構稀なものだとお分かりいただけると思います。 タイプ�兇鰐髪屮哀蹈屮螢�(IgG、IgM)による自己臓器への障害によるもので、先ほど述べた間質性腎炎や溶血性貧血などがあります。投与1週間ほどで出現します。かなり稀な病態です。 タイプ�靴鰐髪嵎9臑里砲茲襪發里如�血清病様反応(注18)を起こします。これも投与7〜10日後ほどに出現します。原因としてセファクロル(ケフラール)内服が有名です。 タイプ�犬�Tcellを介した遅発性の過敏性反応で接触性皮膚炎があります。
伝染性単核症(EBV、CMVによる)でアンピシリン投与すると50〜80%の患者で皮疹が出現します。これは有名な話ですが、原因はよくわかっていません。 同様の症状は、慢性リンパ性白血病、高尿酸血症、アロプリノール服用時のアンピシリン投与でも起こります。 一般にウイルス感染では薬剤性の皮膚反応の出現頻度が増加します。 Stevens-Johnson症候群(注19)は多形滲出性紅斑の重篤なものとして知られます。一過性のインフルエンザ様症状の後に全身の粘膜に紅斑を主体とする病変を呈するものです。 症状は派手ですが死亡率は5%以下とされます(注20)。原因は様々ですが、50%が薬剤性とされ、サルファ剤以外の抗菌薬は原因としては少ないです。 また類縁疾患にTEN(Toxic epidermal necrolysis:中毒性表皮壊死症)があります。これはほとんどStevens-Johnson症候群とオーバーラップしていますが、 死亡率は30〜40%とされています。Jarisch-Herxheimer 反応は梅毒・ライム病などのボレリア感染症においてペニシリンなどの抗菌薬を投与すると数時間後に発熱、 悪寒、筋肉痛、頻脈といった症状を起こすものですが、破壊された菌体が反応を起こすと思われていますが、このように直接抗菌薬が原因でない場合もあります。
今日のメインの話の一つです。ルーチンの皮内反応テスト意味がないと言いました。それはどういう理由からなのでしょうか。 ペニシリンがアレルギー反応を起こす場合、βラクタム環が免疫細胞に反応することが原因です。 その反応部位はメジャー・ディターミナント(major determinant)と呼ばれています。また、ペニシリンは肝臓などで分解されて、 その分解産物がアレルギーの原因になることもあります。量的には少ないこれらの産物を、マイナー・ディターミナント(minor determinants)といいます。 実は、アナフィラキシーはマイナー・ディターミナントにより起きることが多いのです。 また、ペニシリン以外の抗菌薬では皮内反応はその効果が疑問視されています。セフェム系抗菌薬の皮内反応もセフェム自体がマスト細胞の脱顆粒を起こし偽陽性が多く、信用に値しません。 上記のことを踏まえて、ルーチンの皮内反応テストが無意味である理由を挙げていきましょう。
先ほど記述したように、アナフィラキシーはマイナー・ディターミナントで起こることが多いので、 実は薬剤そのものを少量注射する皮内反応ではメジャー・ディターミナントにアレルギーでないことを示唆するに過ぎず、 皮内反応陰性でも薬剤投与によりアナフィラキシーが起こります。
皮内反応のための注射をしたけど、忙しくて他の仕事をしている間に…「あっ!もう30分も過ぎてる!」なんて経験ありませんか? 皮内反応でもアナフィラキシーは起こります。そばについて観察できない皮内反応テストはむしろ危険です。ルーチンで、危険を伴うテストを敢えて忙しい中行う必要がありますか?
セフェム系の疑陽性の話はしましたが、皮内反応テストでは微妙に赤くなったり、判断に迷うケースが多いことは皆さん経験していると思います。 指導医に聞くと「いいよ、このくらいだったら」と結局投与される抗菌薬。みんな、何となく、肌で皮内テストの疑陽性が多いことを感じているのだと思います。 疑陽性により、その患者に使用できる抗菌薬の幅が狭くなることは好ましいことではありません。
皮内反応でもアナフィラキシーは起こる。皮内反応陰性でも薬剤投与でアナフィラキシーが起こりうる。 だったら始めからルーチンの皮内反応なんて無駄というか、アナフィラキシーへの準備が不十分なわが国ではむしろ危険だということがお分かりいただけるでしょうか? 皮内反応でアナフィラキシー起こると知っている看護スタッフはどのくらいいるか考えれば…でも患者さんが亡くなったら医師の責任です。 アナフィラキシーは迅速に対応すれば助かります。しかし、誰もいない夜の病棟で皮内反応、皆忙しくて放置されている皮内反応患者、 抗菌薬初回投与時も「皮内反応陰性だから」と安心しきっている看護スタッフ・・・そのような状態こそ最も危険な要因なのだと認識して下さい。
では、どうすれば良いのか。幸い現在日本化学療法学会から厚生労働省へ皮内反応テストを中止するように提言書が提出され、 厚生労働省からも皮内反応をルーチンで行わないようお達しが出ています。日本化学療法学会からは公式のコメントとして、 ルーチンの皮内反応はアレルギーを予見するのに不十分であるとしています。また、訴訟王国の米国でも皮内反応は一般には行われていません。 大切なことは、「詳細なアレルギー歴の聴取」です。アレルギーの既往はないか、家族歴(注21)やアレルギーの危険性のある基礎疾患有無(注22)がないか。 抗菌薬の使用歴など。これらが聴取されていないと訴えられます。
厄介なのは「自称ペニシリンアレルギー」の中年以降の患者(特に高齢者)です。これは先に述べたように、ペニシリンではウイルス感染などの時を含め、 アレルギー以外での皮疹も起こります。また昔の精製度の低いペニシリンでは不純物によるペニシリン自体以外へのアレルギーが原因で反応を起こしたとも言われています。 いずれにしろ、先ほど述べた典型的なアレルギー症状が既往としてあった場合は、「ペニシリンアレルギー歴あり」とカルテ表面に赤で記載し、 敢えてペニシリンの皮内反応を危険を冒してやる必要もなく、別の系統の抗菌薬を選択すればいいです。 どんな副作用も「副作用=アレルギー」と思い込んでいる患者さんは少なくないので、「自称アレルギー」の人には、具体的に何があったのか聞きましょう。 それでも「もしかしたら…」と判断に迷うケースでは皮内反応を注意して行うと参考になることがあるという程度のものでしょうか。 厳密に本当にアレルギーかどうかはアレルギー専門医による精査が必要となります。長期投与のある抗菌薬(心内膜炎や、結核で)ならばそこまでやるべきでしょうが、 緊急で投与する必要のある殆どの急性感染症ではその余裕はありません。じゃあ、逆にアレルギー歴のない患者ならば安心かというとそうでもなく、 一定の確率でアナフィラキシーは起こりえますから、初回投与の抗菌薬では、皮内反応はやらない限り、投与の最初の5〜15分はゆっくり投与し、 医療従事者による観察を要します。もちろんアナフィラキシーにいち早い対応をするためです。「忙しいのに面倒…という声があちこちから聞こえてきそうですが、 アナフィラキシーが怖くてやっている皮内反応は無意味で、アナフィラキシーへの迅速な対応が不確実な現在のシステムには非常に問題があると思います。 筆者も、皮内反応陰性と言われた患者の抗菌薬投与中にアレルギー症状出て中止したことが一度あります。 投与直後の頭痛・喉のかゆみ・紅斑・悪心・嘔吐・腹痛などは要注意のサインですので、中止し重症度に応じて対処しましょう。
最後にアナフィラキシーについて触れて終わりとします。 アナフィラキシーは最重症である心肺停止から、軽症の皮膚症状のみのものまで重症度は様々ですが、先に述べたような、 薬剤投与後直ち(5〜30分くらい)にびまん性紅斑、掻痒、膨疹、血管性浮腫、気管支痙攣、喉頭浮腫、腸蠕動停止、低血圧、 不整脈といった症状を呈します。対応が遅れると死につながりますので、対応については一度成書を確認されることをお勧めします。 ここでは簡単に対処法を記載します。 まず、重症度の判定ですが、心肺停止が最重症、皮膚症状のみが軽症というのはいいとして、何をもって重症・中等症に分けるかです。 成書によっても記載はまちまちですが、臨床的にはその場の判断、印象に従わざるを得ないと思います。 血圧低下や喉頭浮腫は間違いなく重症の所見です。気管支攣縮に留まっている場合中等症としますが、場合によっては重症と捉えられることもあると思います。
※いずれもボスミンは必要に応じ2〜3回反復投与される。
アレルギー→ステロイドの図式で考えて、アナフィラキシーを見たときにまずステロイド投与を考慮される方が結構おられますが、 基本はエピネフリンの投与です。上記の対応無効時オプションとしてステロイドは位置づけられるべきもので、その効果は未確定とされています。 また、軽症例(例えば蕁麻疹)で強力ミノファーゲンCを投与される方がいるのですが、この場合もH1ブロッカー、 H2ブロッカー投与の方がスタンダードで効果が確定されています。アナフィラキシーの危険性と皮内反応の位置づけ、少しはお分かりいただけたでしょうか?
皆さんが、最も使用する抗菌薬はセフェム系抗菌薬ではないでしょうか。非常に使い勝手がよく、様々なケースで適応となりますが、 誤解も多いため「?」という使い方がなされていることも少なくありません。よって、多用されるセフェム系抗菌薬については2回割き、 セフェム系抗菌薬を正しく使っていただけるよう望みます。セフェム系がきちんと使えれば、抗菌薬の使い方は飛躍的に上達します。
Cephalosporium acremoniumという真菌が下水道の雑菌類の成長を抑制することを発見したことをきっかけに、 このセファロスポリウムの産生する天然物を合成してペニシリンを超えるスペクトラムを有する抗菌薬が作られました。 これがセファロスポリンCと呼ばれるものでした。後ほど説明しますが、セフェム系抗菌薬はこのセファロスポリンCを元祖とする「セファロスポリン」と、 Streptomyces lactamduransという放線菌の代謝産物を元に作られた「セファマイシン」にわかれます。 セフェム系抗菌薬もβラクタムの一種ですから、薬理作用としては、PBPに結合し、細菌の細胞壁の生成を抑制します。 また、時間依存性ですから、投与間隔に注意することもペニシリンに同じです。ペニシリンと違ってセフェム系抗菌薬に特徴的な事項は、 ペニシリンよりも経口での吸収が良いものが多いこと、半減期が比較的長いものもあることです。以前、ペニシリンの項でも触れましたが、 経口薬に関しては投与回数が多いと服薬コンプライアンスが落ちるため、半減期が長いすなわち投与回数が少ないことは大切なことなのです。 セファロスポリンはペニシリナーゼと呼ばれるβラクタマーゼに安定な抗菌薬として使用され始めたものですが、 その後セファロスポリンの乱用によって細菌側もセファロスポリンを分解するセファロスポリナーゼというβラクタマーゼを産生するようになり、 セフェム耐性の菌株もずいぶん増えました。このセフェムの多用は主に外来での経口セファロスポリンによるものです。バナンだの、メイアクトだの、 フロモックスだの、内科以外でも汎用されていることが多いのではないでしょうか。 今回は、経口抗菌薬の役割という観点から経口セファロスポリンについて考えてみます。
経口薬の良い所は、安価で、投与が簡単であること、外来でフォローできることなどです。 短所は吸収率が患者の胃腸状態や服薬パターン(食事や飲料との相互作用など)によって吸収率が変化するため、 経静脈投与と必ずしも同様の臨床効果を示さないことがあること、また患者さんがきっちり飲んでくれないため治療失敗するケースも少なくないこと(注23)に注意する必要があります。 また、経口抗菌薬は漫然と使用すべきものではなく、適応をきちんと把握し大事に使ってゆくことが大切です。適切な投与量・投与期間も知らずに、 経口抗菌薬を何の疑問も持たず処方することが一般化している今の医療事情がまさに耐性菌増加の温床と言えるでしょう。 さて、経口抗菌薬の中では、メトロニダゾール・ニューキノロン・テトラサイクリン・リファンピシン・ST合剤・クロラムフェニコールが最も吸収率・生物学的利用能が高く、 経口薬に向いている種類の抗菌薬です。これらに関しては、胃腸障害がなければ経静脈投与とほぼ同様の血中濃度が得られます。 ただし、ニューキノロンやテトラサイクリンでは2価の陽イオンにより吸収阻害されるので、鉄剤や緩下剤の投与されている患者では注意が必要です。 また、抗菌薬の種類にもよるのですが、多くのものでは食後よりも空腹時に投与した方が最高血中濃度が高くなるため、空腹時投与できれば、そのほうが好ましいです(注 24)。 経口セファロスポリンは種類により吸収率に違いはあるものの、一般に良好な血中濃度が得られますが、 わが国で汎用される広域セファロスポリンでは耐性を誘導する頻度が増加しますので使用には注意が必要です。個人的には、 経口広域セファロスポリンは適応になるケースは非常に少ないと考えています。 そもそも市中感染で外来フォローでき得る軽症感染症では、以前説明したようにempiric therapyは適応になりません。比較的狭い抗菌薬を投与するか、 経過観察することとなります。咽頭炎のA群β連鎖球菌は現在でもペニシリンGが第一選択です。 膀胱炎の起因菌のナンバー1である大腸菌はアンピシリンで治療できるものもまだまだありますし、第1世代セファロスポリンで殆ど対応できます。 何も「咽頭炎には第3世代セフェム」「尿路にはニューキノロン」である必要はないのです。 (まあ、コンプライアンスの悪い患者では、ニューキノロンの一日一回投与の方がいい場合もあるでしょうが・・・。) 広域セフェムが必要になるケース、それは腸内細菌群や緑膿菌、セラチアといったグラム陰性桿菌です。それらの菌は重症になることが多く、 通常治療には経静脈的投与を必要とします。ですから、第3世代セファロスポリンを考慮する感染症では多くの場合経静脈投与を選択しなければならないので、 最初から経口の広域セフェムはお呼びでないのです。入院の重症感染症患者で、他院外来ですでに経口の広域セフェムが投与されてしまっており、 中途半端に効果を示し、起因菌がわからなくなっているばかりか、臨床症状もカバーされてしまって把握に苦労することがあります。 経口広域セファロスポリンの取り扱いにはくれぐれも十分注意して下さい。逆に経口の広域セファロスポリンは、急性期を過ぎた後の、 経静脈的投与から経口薬への変更として使用であれば、入院期間の短縮にもつながり、有用です。
経口セファロスポリンは単純に第一〜三世代に分類することで理解することができます。注射用セフェムのようにそれぞれ薬剤で特徴もあるのですが、 臨床的にはそれほど差が無いため、「○○世代」という分類で事足ります。注射用セフェムはそうは行きませんので次回じっくりお話します。 まずは、グラム染色による細菌の分類、覚えていますか?
本来は第一世代としてはセファレキシン(ケフレックス)が有名で、ケフラールは第一世代と第二世代の中間的存在で米国では第二世代に分類されることが多いのですが、 当院ではケフラールしかありませんから第一世代に分類させて頂きました。 このグループは腸球菌を除くグラム陽性球菌に活性を持っています。グラム陰性桿菌に積極的に使うことは少ないものの、 Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisといったものには感受性を示すことも少なくないため、 感受性試験で感受性があれば使用することができます。
第一世代セファロスポリンのGPCに対する活性を幾分犠牲にして、GNRへのスペクトラムを広げたのが第二世代セファロスポリンです。 上記のEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisに加え、 Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalisといった上気道のグラム陰性桿菌に第一世代よりも活性が高いことが特徴です。 とくにH. influenzaeに対しては、βラクタマーゼ産生菌でも非産生菌でも治療選択薬となることは重要な点です。 またEnterobacter, Citrobacter, Morganellaといったグラム陰性腸内細菌へも耐性がなければ活性があります。 ただし、GPCに対しての活性はペニシリンや第一世代セファロスポリンの方が高いですし、GNRに対しては第三世代に及ばないため、中途半端と言えば中途半端な存在です。
以上が当院で採用となっているものです。なぜ、同じ系統の薬剤をこんなに採用しているのか、その意味が理解しかねます。 同様、世の中には数え切れないほどの第三世代セファロスポリンが出回っており、 外来でよく「風邪を引きました」といって貰ってくる薬の中に入っていることも多いのがこの第三世代の特徴です。 前述の通り、経口広域セファロスポリンが積極的な適応となることは極めて稀であるはずなのに、世の中ではメーカーが大々的に売り込んでくるし、 種類も豊富ときているものだから、皆それを習慣的に使ってしまう。処方した医師達は、それが耐性菌蔓延の一因となっていると気づかず、 毎日処方することとなる。ひとりの罪は軽いが、皆の小さな罪が集まり、世の大罪となっているのです。薬屋さんの言葉を鵜呑みにするなかれ。 ということで皆さんは、第三世代経口セファロスポリンを使わず、何とか他の方法がないかよく考える癖をつけて下さい。 ちなみに経口第三世代セファロスポリンは第二世代よりもさらにGNRへの活性を持たせた反面、GPCへの効力は減少しています。 上記5薬はそれぞれ細かい違いはあるものの、臨床的に影響するものでもないので、どれか1種類覚えておけば良いでしょう。
この項の最初に、セフェム系抗菌薬は「セファロスポリン」と「セファマイシン」に大きく分かれると言いました。 セファマイシンは世代では第二世代に分類されますが、嫌気性菌をカバーします。その代わりH.influenzaeには効力が弱いです。 経口薬は「○○世代」という単純な分類で足りていましたが、この世代分けというのが開発年代によってなされており、 そのスペクトラムと効力を考えた際、同じ世代=同じ効力とは言えないのが悩みの種です。それを解決すべく、 次のような分類でまとめて見ましょう。これも米国感染症専門医(現在亀田メディカルセンター勤務)の岩田健太郎先生という人が考えたものを少しアレンジしたものです。
とりあえず「1.GPC用(第一世代)」と「2.中途半端だがGPC+GNR用(第二世代)」については経口セファロスポリンで述べた内容は殆ど変わりませんから、 今回お話しておきましょう。
経口セファロスポリンの箇所で述べたように、黄色ブドウ球菌(もちろんMRSAはダメですが・・・)や連鎖球菌感染症の治療に使用されます。 ペニシリンが使えるときはもちろんペニシリンを使いますが。Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisでも感受性があれば使用できます。 結腸・直腸などの手術を除く術前の予防投与(注26)にも使用されます。もう一つ重要なことは、髄液への移行性が不良であるために、 髄膜炎・中枢神経感染には使用できないことです。胆道系の移行性も第二世代以降のセフェムに比べ劣ります。注意すべきは、 半減期を考慮した際、わが国でやられているような1日2 回投与はナンセンスということです。βラクタムは時間依存性の抗菌薬ですから、 頻回投与が基本です。ちなみにキット製剤は値段が倍します。
第二世代セフェムは、通常のセファロスポリンとセファマイシンと呼ばれる嫌気性菌にもスペクトラムを持つものに分類されるため、 「第二世代」とひとくくりにするのはよろしくありません。ここで述べるのは、通常の第二世代セファロスポリンです。 経口薬でも紹介したとおり、このグループは第一世代セファロスポリンのGPCに対する活性を幾分犠牲にして、GNRへのスペクトラムを広げたもので、 Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisに加え、 Haemophilus influenzaeやMoraxella catarrhalisといった上気道のグラム陰性桿菌に第一世代よりも活性が高いことが特徴です。 とくにH. influenzaeに対しては、βラクタマーゼ産生菌でも非産生菌でも治療選択薬となることは重要な点です。 またEnterobacter, Citrobacter, Morganellaといったグラム陰性腸内細菌へも耐性がなければ活性があります。 しかし、あえて積極的にこのグループの抗菌薬を使用するケースは少ないかもしれません。
さて、前回は経口セファロスポリンについてお話しました。大切なことは、「広域経口セファロスポリンは出番は少ない」ということでした。 また、後半では注射用セフェム系抗菌薬の臨床的分類について触れました。もう一度おさらいです。
上記の1と2については既に前回お話しました。ポイントはセフェム系抗菌薬は腸球菌やリステリアをカバーしないこと、 それから第一世代セファロスポリンは髄膜への移行が不良なので髄膜炎には使えないこと、第二世代セファロスポリンはH. influenzaeに有用ということでした。 今回は3以降のグループについて見ていきましょう。 色々出てきますが、覚えればいいのは以下のセフェム薬の名前だけと思います。 他は好みですが、敢えて使う必要もない気がいたします。この項を勉強し終わった段階でもう一度以下の表を眺めてみてください。 以下の種類は特徴があるため、使い分けが出来ると便利です。
経口セファロスポリンの項でも説明しましたが、広域セファロスポリンは多く市中に出回っており、「何にでも効く」という製薬会社の謳い文句のもと、 1980年代後半から1990年代にかけて多用されました。肺炎に、尿路感染に、果てには風邪や単なる発熱に。。。 その結果、間もなくして多剤耐性菌に苦しめられることになるわけですが、このように第三世代セファロスポリンは有用な抗菌薬でありながら、 「耐性菌増加」の一因としての功罪もあり、慎重な適応の検討と使用法の熟知が望まれます。 主にグラム陰性桿菌にスペクトラムの重点を置いたもので、特にEnterobacterやCitrobacterなどの腸内細菌のみならず、 Serratiaなどの院内感染で問題となるグラム陰性桿菌にも効力があります。ただし、緑膿菌にはスペクトラムがありません。 重症の市中肺炎または近い過去に広域抗菌薬の使用歴のある高齢者感染症のempiric therapyや、院内発症の各種感染症に使用されます。 嫌気性菌のカバーは良好ではなく、口腔内嫌気性細菌ぐらいならば大丈夫ですが、腹腔内など明らかにバクテロイデスをカバーしなければならない場合、 クリンダマイシン(ダラシン)と併用(注27)して使います。また、髄膜炎でもアンピシリンやバンコマイシンと併用してempiricalに使用されます。 グラム陽性球菌には第一世代セファロスポリンやペニシリンに劣るため、積極的には使用することがないのですが、例外があります。 それは肺炎球菌です。肺炎球菌はペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)というのが増えていて、問題になっているということは以前触れたことがあると思います。 このPRSP、ニューキノロンか第三世代セファロスポリンを高用量使用すること対応できます。 わが国の専門家の中にはPRSPにはカルバペネムが絶対適応と言い切る方もいるようですが、投与量・投与間隔さえ適切ならば第三世代セファロスポリンで対応できます。 よほど重症ならばカルバペネムでも良いかもしれませんが・・・。というわけで、肺炎でグラム染色で夾膜を持つ双球菌を認めたら、 感受性が判明するまでは第三世代セファロスポリンを高用量で投与します。 さて、上記のセフォタキシムとセフトリアキソンですが、良く名前が似ていますが、大きな違いがあるため、使い分けがあります。 まず1つは代謝経路の違いです。セフォタキシムは腎排泄、セフトリアキソンは胆道排泄です。腎機能を心配する場合はセフトリアキソンがお勧めです。 2つ目は、セフトリアキソンの血中半減期が恐ろしく長いということで、1日1回投与が可能です。そのため、米国では外来や訪問診療で良く使われているようです。 3つ目はキノロン耐性の淋菌治療にセフトリアキソンを使いますが、セフォタキシムは効かないということです。 投与回数、費用などの面を考えても、セフトリアキソンに軍配が上がりそうですが、筆者はセフォタキシムも好きで、大事に使っています。
次に紹介するのは、嫌気性菌をカバーするというちょっとユニークなセフェム系抗菌薬です。 基本となるのはセファマイシンと呼ばれるグループですが、Streptomyces lactamduransという放線菌の代謝産物を元に作られたもので、 セファロスポリンとは一線を画するものであることは前回お話しました。セファマイシンは世代分類では第二世代に分類されます。 ただし、嫌気性菌をカバーすること、グラム陽性球菌へのカバーが若干不良になっていることが第二世代セファロスポリンとの違いと言えます。 セフォキシチン、セフォテタン、ここに紹介したセフメタゾールなどがあります。Bacteroides fragilisを含む嫌気性菌をカバーするセファマイシンですが、 耐性の問題もあって、嫌気性菌へのスペクトラムはオマケみたいなものですから、嫌気性菌を本格的に叩く時にはクリンダマイシンやβラクタマーゼ阻害薬入りペニシリン、 メトロニダゾールなどが必要です。セファマイシンが有用なのはグラム陰性桿菌をメインに考えていて、耐性のなさそうな嫌気性菌も一緒にカバーできたらいいなぁという時です。 具体的には繰り返していない誤嚥性肺炎、市中感染の腹腔内感染症(注 29)の単剤での使用や、骨盤内膿瘍でマクロライドやテトラサイクリンと併用して使用するケースなどが想定されます。 さて、当院でよく使用されているフロモキセフ(フルマリン)ですが、個人的にはあまりお勧めしていません。 そもそもラタモキセフやフロモキセフといったオキサセフェムはセファロスポリン環のSがOに置き換わっており、セファマイシンと同じ側鎖を有しているため、 スペクトラムとしてはセファマイシンとほぼ同様のものとなっています。ただし、ここがよく誤解されるところなので気をつけて欲しいのですが、 ラタモキセフはスペクトラムとしては第三世代+嫌気性菌、ラタモキセフを改良したフロモキセフはスペクトラムとしては第二世代+嫌気性菌 (つまりセファマイシンと同等、GNRに対してはむしろ弱い)ということです。「フルマリンは第三世代ですよね?」なんて良く聞かれますけど、 開発年代としては確かにそうですが、スペクトラムを考える上では第二世代ということですから、「注射用セフェム薬を考える上では世代分けは誤解のもと」 ということが理解頂けると思います。という訳で、オキサセフェムはセファマイシンと大きな差はないと言えるでしょう。 ただし下記のようにオキサセフェムはメチャメチャ値段が高いです。 そんな訳で筆者は1度試しにフルマリンを使ったことがありますが、これといった利点も見当たらずその後使用していません。 セファマイシン及びオキサセフェムはジスルフィラム作用(嫌酒薬様作用)があること、ビタミンK欠乏を起こし出血傾向になることがあることに注意して下さい。 また、これらの抗菌薬は MRSA発生の一因とされていますので適応には注意して下さい。
以上の抗菌薬の羅列を見てギョッとするかもしれません。「こんなに覚えられねえよ!」と。 意見はごもっとです。なぜなら、緑膿菌をカバーしなければならない患者というのは、基礎疾患があり免疫状態が不良となっている人ですから、 あまりこのグループの抗菌薬にお世話になることは少ないはずです。ですから、代表的な2種類を覚えておけば良いのです。使用する機会は少ないはず。 が、よく使用されているのを見かける名前もあります。ということは!!そうです、このグループを使用する必要のないケースに乱用されていることが多いと見受けられます。 気をつけましょう。良くわからない全身状態良好な人の発熱→モダシン+ダラシン(通称モダダラ)、是非やめて下さい。 ただし、好中球減少時の発熱などの際にはありがたい薬達です。個人的には、第三世代セファロスポリンのセフタジジム(モダシン) と第四世代セファロスポリンのセフェピーム(マキシピーム)の2つを知っていれば十分と思います。他の薬はこんなにいらないです。はっきり言って(笑)。 ですが、このコースではせっかくですからそれぞれの特徴を簡単にご紹介いたしましょう。アドバンスな内容ですので、基本のみでいいという人は読み飛ばしてください。
まずは、第三世代のセフタジジム(モダシン)。緑膿菌用の代表的抗菌薬です。良く使われています。 が、誤解も多いです。大切なことは、GPCに対するスペクトラムが貧弱なことです。よって市中肺炎には単剤では適しません。 緑膿菌への活性が優れているので、アミノグリコシドと併用して好中球減少症時の発熱に対してempiricalにまだまだ使用価値のある薬です。 無駄遣いせず、耐性を生まないように大切に適応を選んで使ってください。 セフォペラゾン(セフォペラジン)は胆道排泄型なので、腎機能障害のある患者で便利です。 ただし弱点も多く、第三世代でありながら髄液への移行が不良なため髄膜炎には使用できません。 ジスルフィラム作用、凝固能の低下などの副作用、またGNRが産生するβラクタマーゼにやや不安定で、 わが国ではβラクタマーゼ阻害薬配合の商品(スルペソール)が発売されており、胆道系感染症で使用されています。 (ただし筆者は緑膿菌よりもむしろ嫌気性菌をカバーしたいため、セフメタゾールやアンピシリン/スルバクタムなどを使用しています。
次に第四世代セファロスポリンですが、有名なセフェピーム(マキシピーム)やセフピロム(ブロアクト)の他に、 わが国特有のセフォゾプラン(ファーストシン)、セフォセリス(ウィンセフ)があります。こちらはGPCもカバーしますので、 上記の2剤に比べよりスペクトラムが広いと言えます。ですから、より適応は厳格に検討しなければなりません。 重症でもないのに、いきなり第四世代に走る人がいますが、まずは、別の道を探してみてください。
最後に面白い抗菌薬を一つ。第二世代に分類されるセフスロジン(タケスリン)は抗緑膿菌用セフェムと呼ばれ、 緑膿菌にのみ選択的に活性が強い抗菌薬と言われています。わが国のみの抗菌薬でデータが少ないため、その有効性は定かではありませんが、 緑膿菌以外のGNRにはあまり影響しないというのは、長期治療で菌交代現象を防ぐ意味でも魅力ですが、なにせ値段がべらぼうに高く、筆者は使ったことがありません。
以上です。大切なことは、何度も言いますが、セフェム系抗菌薬は適応や使い方をきちんと考えて、大切に使うことです。 耐性菌を生まないためにも、皆さん十分気をつけて治療に当たって下さい。
βラクタム薬も今回で終わりです。本日はモノバクタム系とカルバペネム系抗菌薬についてお話しましょう。 特にカルバペネムについては、しつこい様ですが、わが国での乱用のケースが多く、正しく知り、正しく使う必要のある薬剤です。まずはモノバクタムから。
皆さんはこの抗菌薬を使ったことがあるでしょうか。あまりお目にかからない種類の薬だと思います。実際影が薄いだけでなく、 多くのケースで第一選択薬とならない薬のため、日常診療で敢えて使用することは必要ないかもしれませんが、いくつか便利な特徴を持つため紹介させて頂きます。
これらの中で注目すべきは、やはり��でしょうか。ペニシリンアレルギーの人にも使用可能とされているので、 ペニシリンに比べ殺菌性にはやや劣るものの、グラム陰性桿菌用抗菌薬としては、 ペニシリンアレルギー(場合によってはセフェムアレルギー)に対する代替薬としての価値は重宝すべきでしょう。 アズトレオナムが各種感染症に第一選択薬にならない理由としては耐性の問題があります。βラクタマーゼには比較的安定なものの、 過多な使用によって様々な機序の耐性を生みやすく、そのため、グラム陰性桿菌の感受性は株によって様々です。 ですから、empiric therapyにおいて感受性不明なまま単剤使用するには注意が必要です。場合によってはグラム陽性球菌もカバーする必要があるでしょう。 重症感染症ならあまりお勧めしません。というわけで、便利な薬です。代替薬としての価値を超えない抗菌薬ですが、覚えていて損はしません。 割と打てる代打者といったところでしょうか。高価ですし・・・。
カルバペネム薬は、現在のところ一部例外を除いて殆どの細菌に対するスペクトラムを持つため、もっとも広域な抗菌薬のひとつと言えるでしょう。 そのためもあってか、「何かあったらカルバペネム」という悪しき習慣は当院に限らず、日本全体で起こっている現象です。 すぐに安易なカルバペネムの使用をしてしまう背景には、このコースで再三お話しているような「正しい」感染症のアプローチがなされていないことが原因にあることが多く、 皆さんには是非、カルバペネムの乱用を今日から無くなる様に努力して頂きたいと思います。 正直言ってカルバペネム耐性菌も増えつつあります。院内の常在菌がカルバペネム耐性ばかりになってしまったらはっきり言ってお先真っ暗です。皆で何とかしなくてはいけないのです。 良く使われるカルバペネム、一体何を狙っているか?そこに正しい使用のカギがあります。「狙っているもの(菌)」が答えられない状況は、 まずカルバペネムの使用するべきでない状況とも言えます。カルバペネムがカバーしない細菌にはどんなものがあるかご存知でしょうか。
また、痙攣という副作用の問題もカルバペネムには付き物だということを覚えていた方が良いでしょう。 さて、うるさい位に筆者はいつも「カルバペネムは使わないで」と言っていますが、何もカルバペネムに恨みがあるわけではありません。 大事な、有用な抗菌薬だからこそ、「ここぞ!」というときに使えるように価値のあるまま残しておきたいからです。耐性菌だらけになってしまっては、 カルバペネムもその価値は激減です。じゃあ、実際どんなケースではカルバペネムが正当化されるのか。 原則として「カルバペネムは第1選択にはならない」ということを念頭に、以下を読んでください。 まずは、重症感染症です。ここで言う「重症」とは、直ちに何かやらないと死んでしまうような事態です。壊死性筋膜炎や、髄膜炎などの疾患を含みます。 重症感染症、敗血症などでは数時間の治療の遅れが死に直結します。こんな時は血液培養さえ取れればとりあえず、広域抗菌薬でガツンと治療します。 第1に既に広域抗菌薬の治療を受けたにも関わらず悪化してしまったケース。これは、院内の多剤耐性菌が原因となっていることもしばしばありますので止むを得ません。 第3 は好中球減少時の発熱です。ただしこれについては他のオプションもありますので、必ずしも絶対適応ではありません。以上です。思ったより少なくありませんか? ここからが非常に大切なのですが、スペクトラムを広げまくって始めたカルバペネムですが、培養の結果をみて抗菌薬のスペクトラムを狭めること、 この作業が非常に軽視されているように感じます。では皆さんは次の文章の誤りを指摘してみてください。「入院中急な発熱と血圧低下し、 カルベニンをスタートした。血液培養をとりあえず採取し提出したところ翌日グラム陰性桿菌が生えた。幸いカルベニンが効いたらしく状態改善傾向になった。 さらに翌日アンピシリン感受性の大腸菌とわかったが、重症であったし、また悪くなるのが怖くてカルベニン続行し、CRP陰転化まで使用した。」 どうでしょうか。「入院中急な発熱と血圧低下し、カルベニンをスタートした。」これは正しい行動です。 血圧変動を起こすほどの感染は重症とカウントしてよいでしょうからカルバペネムの使用は問題なしです。 「血液培養をとりあえず採取し提出したところ翌日グラム陰性桿菌が生えた。幸いカルベニンが効いたらしく状態改善傾向になった。」ここまでも正しい行動でしょう。 さて、「さらに翌日アンピシリン感受性の大腸菌とわかったが、重症であったし、また悪くなるのが怖くてカルベニン続行し、CRP陰転化まで使用した。」 はどうでしょうか。2つおかしいところがありますね。まず、カルベニンを続行したところ。これでは何のために培養をとったのかわかりません。 感受性・移行性に問題が無い限り、培養の結果を見てスペクトラムを狭めるのが正しい行動です。また「CRP陰転化」は意味がありません。 敗血症の治療がおよそ2週間と決まっているからです。ですから、カルバペネムを使用するケースは始めから抗菌薬合計投与期間が2週間以上になるケースとも言えます。 短くて済んでしまったら、それはカルバペネムの適応ではなかったということです。 もうひとつ注意したいのは、投与量です。一般にわが国で使われている量では少ないと思われます。そもそも危険な状態に使うはずなので、十分な投与量が必要です。 他に、メロペネムは痙攣起こしにくいとか、若干緑膿菌への活性が強いとか細かいことはありますが、臨床的には上の3剤には殆ど変わりはないとされていますので、 どれを使っても問題ないでしょう。ただしカルベニンは日本独自の抗菌薬ですのでスタンダードな薬剤ではありません。
大切なことは、何度も言いますが、適応や使い方をきちんと考えて、大切に使うことです。耐性菌を生まないためにも、皆さん十分気をつけて治療に当たって下さい。
セフェム系抗菌薬に次いで皆さんがよく使われるものに、レボフロキサシン(クラビット)をはじめとするニューキノロンがあります。 副作用が少ないうえ、スペクトラムも広域なので、何かと頻用されることの多い薬ですが、これもまた乱用による耐性が問題となっています。 また、薬理学的にわが国では正しい使用がされていない状況(これは薬品の添付文章が悪いのだけれど・・・)がありますので説明させてください。
一口に「キノロン」と言っても、開発年代によってその特徴は大きく異なります。現在では、 レボフロキサシンやガチフロキサシンなどの極めて優秀なキノロン薬があるので、敢えて古典的なキノロン(オールドキノロンと呼ばれることもある)を使用する必要もないのですが、 まだまだオールドキノロンが使用されている場合もありますので、簡単に歴史的な古いキノロンの紹介もさせて下さい。 さて、キノロン薬の作用機序は何でしょうか。細菌のDNAの合成に関わる酵素であるトポイソメラーゼ(注30)を阻害し、 殺菌性の抗菌力を発揮します。また、キノロン薬は濃度依存性の抗菌薬です。いいですか、アミノグリコシドと同じように、 濃度依存性に抗菌力を発揮するのですよ!(と、まず強調しておいて)まあ、副作用の出現も濃度依存性なのですが・・・その辺は後でお話しましょう。 また、開発年代の新しいものでは、吸収率や組織移行性が非常に良好というのが特徴です。中枢神経系への移行がいまいちなのが難点ですが・・・。 カバーするスペクトラムも特徴的で、細胞内寄生菌(結核菌や非定型抗酸菌、サルモネラなど)や異型肺炎原因菌(マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジア) に効果があるという点は特記すべきです。 キノロン系抗菌薬の副作用として共通に挙げられるのが、中枢神経症状です。痙攣が最も有名ですが、他にも不眠・せん妄・幻覚・視覚異常などとして現れることもあります。 痙攣に関しては、NSAIDsとの併用で出現しやすくなると言われており、併用は禁忌となっています。次に有名なのが関節や腱、軟骨に対する毒性です。 これが理由となってキノロン系抗菌薬は一般に小児や妊婦で使用禁忌(注31)となっています。 相互作用としては、ワーファリンンなどのクマリン系抗凝固薬の作用増強、アミノフィリンやキサンチン誘導体の作用増強などがあり要注意です。 もう一点、注意すべき点は、経口薬においてはアルミニウムやマグネシウム、鉄といった2価または3価の陽イオンの存在下では著しく吸収率が低下するために、 制酸薬や鉄剤を投与されている患者では要注意です。これらの薬剤は最低2時間をあけてから投与するようにします。
キノロン系抗菌薬は、1960年代の中ごろ開発されたナリジスク酸を第一号として臨床使用されました。 はじめは好気性グラム陰性菌を主にターゲットとした抗菌薬でしたが、組織移行性があまり良くなく、副作用の問題もあり臨床ではあまり好まれませんでした。 その後も数多くのキノロン系抗菌薬が開発されましたが、やはり副作用の問題で発売されては市場から消え、を繰り返していました。 この頃のキノロン系抗菌薬は専ら大腸菌や赤痢菌、サルモネラなどの感染性腸炎起因菌が主なターゲットとなっておりました。
キノロン系抗菌薬のうち、複素環にフッ素が結合させてあるものを、フルオロキノロンと呼びます。 わが国ではニューキノロンと呼ばれることが多いグループです。このニューキノロンの「ニュー」も、 ナリジスク酸などの古典的なキノロン(オールドキノロンと呼ばれることもある)に比べて新しいというだけで、 登場したのは20年近く前の話になります。よって、ニューキノロンは「初期のニューキノロン」と「新しいニューキノロン (欧米では呼吸器キノロンと言われることもある)」に分けて整理すると便利です。 呼吸器キノロンの存在する現在では、初期のニューキノロンを敢えて使用する場面はシプロフロキサシンを除いてはないと思いますが、 一応理解の為に他の代表的なものも掲載します。
これらは全く初期のニューキノロンです。オールドキノロンに比べ、好気性グラム陰性桿菌への活性を強化し、 なおかつグラム陽性球菌へもスペクトラムを拡げたのが特徴です。ペニシリンと違って、今となっては敢えて使用する状況はないと思われますが、 これらの登場によりキノロン薬は大きな転換期を迎えたのでありまして、歴史的な薬です。
効能的には上のノルフロキサシン、オフロキサシンと後述のシプロフロキサシンの中間ぐらいに位置する薬で、 特にこれといった特徴はございません。臨床で敢えて使う必要はないでしょう。覚えなくても結構です。
世界的に、汎用されているニューキノロンのひとつです。 キノロンはこのシプロフロキサシンとレボフロキサシンを使いこなせれば十分だと思います。 シプロフロキサシンの特徴としては、グラム陽性球菌(ただし肺炎球菌以外)への活性が強化された点と、 緑膿菌への活性が良好である点にあります。ただし、軟部組織感染症ではペニシリン系抗菌薬や第一世代セフェムの方が適していますから、 シプロフロキサシンを陽性球菌狙いで使う状況とは、例えばその良好な組織移行性を利用してグラム陽性球菌による骨髄炎に投与する、 といったものです。また、重症感染症においては点滴薬もあり、非常に重宝します。 ただし、シプロフロキサシンは後述する呼吸器キノロンに比較して耐性(注32)が獲得されやすいので、その乱用や長期投与については十分留意して下さい。
このグループに属する、新しいニューキノロンの特徴としては、
ということが挙げられます。それでは、各薬剤の特徴に関して見てゆきましょう。
臨床的には後述するレボフロシサシンとほぼ同等ですが、光線過敏症やQT延長などの副作用の問題で、 米国では回収・販売停止となった薬剤です。わが国ではいまだ使用されていますが、使用しない方が良いでしょう。というわけで、これ以上は言及しません。
わが国で最も有名なニューキノロンではないでしょうか。 前述のオフロキサシンは光学異性体の混合物ですが、このうち抗菌活性のあるL-異性体のみ抽出したものがこのレボフロキサシンです。 シプロフロキサシンが腎・肝両方から排泄されるのに対し、レボフロキサシンは殆ど腎から排泄されることに注意して下さい。 わが国では乱用のため、キノロン耐性菌が多く出現しています。ニューキノロンは重症感染症においても切り札となる存在です。 適応を考えて、大切に使いましょう。 サンフォードの「熱病」なんかにも、尿路感染にはキノロンといったことが書かれておりますが、筆者は、軽症であればST合剤や第一世代セフェム、 場合によってはアモキシシリンでも十分と考えています。 さて、呼吸器キノロンといわれるくらいですから、肺炎の治療で使う機会が多いと思うのですが、ひとつだけご注意を。 キノロンは結核にも効果があるとお話しました。肺炎にキノロンを投与する際は、必ず結核を除外してください。 キノロンが効果を示し、結核の症状がマスクされてしまい治療のタイミングが遅れる可能性が出てくるからです。 また結核では単剤療法は禁忌でしたね。2つの意味で注意して欲しいと思います。 さて、最初にキノロン系抗菌薬は濃度依存性と申しました。また、半減期が長く一日一回投与が可能と申し上げました。 とすると、「一回投与量を多くして、投与回数を減らすのが良いのでは?わが国の一日三回投与は理に適っていないのでは?」 という疑問が沸きます。そうです、なにやら薬理学的にいっておかしいのです。米国では一日一回500mg投与となっています。 まあ、副作用も濃度依存性な訳ですから、体格の小さい方にはもう少し投与量を下げるとしても、一日一回投与は理に適っている訳ですね。 能書き通りの使い方ではないので、患者さんへよく説明して同意を得ることは必要でしょうけれど、効果を期待するならば投与回数は少なく、 一回投与量は多くするべきです。一回に400mgなどの量が心配であれば、せめて2回に分割して投与すると良いでしょう。 少なくとも 300mg1日3回というわが国の投与法は改めるべきといわれています。
レボフロキサシンと基本的に変わりありませんが、嫌気性菌にも若干活性を持たせていることが特徴ですが、嫌気性菌狙いで使うことはありません。 また、副作用として血糖異常(高くも低くもなる)があるので、糖尿病患者や高齢者では使用を控えた方が無難です。
わが国で開発された注射用ニューキノロン製剤です。国産により臨床データに乏しいのですが、レボフロキサシンやガチフロキサシンの注射薬の無いわが国では、 それらの代替として期待されます。レボフロキサシンやガチフロキサシンなどとほぼスペクトラムは同等のようですが、 肺炎球菌に対しては若干データ不足か、適応菌名からはずされています。使用の機会としては、重症感染症においてのみでしょう。
アミノグリコシド系抗菌薬は、腎毒性と耳毒性という2つの有名な副作用の為に、最近では何かと敬遠されがちな抗菌薬です。 しかし、ペニシリン系抗菌薬と並んで、殺菌効果の優れた薬剤であり、重症感染症においては現在においてもなくてはならない存在であるという事を認識して下さい。 アミノグリコシドを使いこなせるようになれば、抗菌薬療法も強力なものが可能になります。
アミノグリコシドは糖にアミノ基がついていることからその名がつけられており、ペニシリンと並んでそのキャリアは長く、 1940年代からその第1号のストレプトマイシンがStreptomycesから分離され、実用化されています。 殺菌性の抗菌薬で、ペニシリンと並んで効果は強力です。また、βラクタム薬と併用すると相乗効果(注36)を示すので重症感染症(特に敗血症) ではβラクタム薬と併用して使用されたりします。しかし、スペクトラムは基本的に好気性グラム陰性菌(緑膿菌含む)のみであり、 グラム陽性球菌には活性が不良で、嫌気性菌には感受性がありません。また、酸性の環境下で効力を極端に減じ(注37)たり、 移行性が不十分な臓器(注38)も存在するため、単剤で使用することは稀(ただし、尿路感染のように目的菌がある程度絞れるものや軽症感染症では単独使用もありうる)です。 さて、アミノグリコシドの作用機序は、メインは細菌のリボソーム30Sに結合し蛋白合成を阻害することにあります。 また、グラム陰性桿菌のリポポリサッカライド(注39)に結合し、外膜を阻害するという働きもあるため、グラム陰性桿菌の敗血症においては即効性を示します。
アミノグリコシドの副作用としては腎毒性と耳毒性が有名です。アミノグリコシドはキノロンと同じく濃度依存性の抗菌薬ですから、 一回投与量が多い方が効果は高まります。しかし、副作用も濃度に依存するために、血中濃度のモニタリング下に投与量を調整する必要があります。 基本は8時間投与なのですが、何とかこの副作用を軽減する方法はないかと模索された結果考案されたのが1日1回投与法でした。 この考えの根拠は、ある一定の血中濃度以上にある時間を減らすことで、毒性が減じられることにあります。 1回投与量を十分多くして濃度依存の効果を最大限生かして一気に細菌数を減少させ、その後はPost antibiotic effect(注40) にて細菌の増加を抑止させ、結果として高濃度の時間帯を減じて毒性を少しでも軽くするという理論です。 実際は、副作用の出現率に大きな差は見られないというする研究もあり、 Post antibiotic effectがあまり持続しないとされる重症感染症や好中球減少症の場合は適応すべきでないとする専門家もいたりして、 結局のところ通常使用と1日1回投与のどちらが良いという結論は得られていません。ただし、いくつかの理由により、 通常のケースでは1日1回法をとる場合が多いです。まず、臨床的な効果に差が見られないという多数の研究結果に基づき、 1日1回投与はナースサイドの負担を軽減できます。患者さんも投薬の為に安眠を妨げられることは減ります。担当医師としても、 通常投与ではピーク値とトラフ値を測り投与調節を行わなければならないのに対し、1日1回投与法ではトラフ値のみを測定すればよく、 また1日1回法ではノモグラム(注41)があり、これを使用すれば、投与直前に採血・・・といった時間的拘束を強いられることはなく、 いつ採血してもOKです。総投与量が減少でき、経済的にも優れています。と、いうことで、通常のケース(注42)では1日1回法に軍配が上がります。 さて、アミノグリコシドの腎毒性ですが、これは可逆性で非乏尿性と言われています。つまり、尿量が減ることはなく、 投与を止めれば腎機能は戻るということです。「じゃあ、怖くないジャン」と思われるかもしれません。 実際数日の投与で問題になるような腎障害は起こらないとされていますし、救命の為にわざわざ殺菌性のアミノグリコシドを使用しているのですから、 投与量は必要以上に渋らない方が良い。ただし、長期投与となると話は別です。重症感染症そのものが腎障害を誘発しますし、 高齢者などでは元々腎毒性のある薬剤を投与されている場合も多く、それらの毒性をさらに助長してしまうこともあります。 世の中上手くいかないものです。ですから、やっぱり、血中濃度を測りながら匙加減が必要なのですね。 もっと嫌なのが耳毒性です。これは不可逆性で前庭神経、聴神経のいずれも障害しうることが分かっています。 使用時には耳毒性の可能性を患者(おそらく重症でしょうから家族ということも多いでしょうが)に了解してもらう必要があります。 いずれにしろ、感染症の状態が落ち着いた段階で神経所見をチェックしましょう。 腎障害が高度で、どうしてもアミノグリコシドを使いたくないときには、若干効果は落ちますが、キノロンやモノバクタムを代わりに使用します。
実用化された最初のアミノグリコシドです。一部のアミノグリコシドは抗酸菌に活性を有し、ストレプトマイシンは抗結核薬としての価値を維持してきました。 ので、抗結核薬の項でまた述べます。一般感染症では他に良い活性を有するアミノグリコシドが登場したため殆ど使用されることがありません。 一般感染症としては、ゲンタマイシン耐性かつストレプトマイシン感受性の腸球菌による心内膜炎にペニシリン、アンピシリン、 バンコマイシンなどと併用して使用したり、ペスト、野兎病などの稀な疾患で第一選択薬だったりしますが、まあ、使用機会は稀でしょう。
毒性が強いため、筋注は殆ど行いません。今では2次結核薬としての位置づけとしての意味しか無いでしょう。 また、アミノグリコシドは腸管から吸収されにくいため、経口薬として腹部外科手術前や肝性昏睡の際、腸管内細菌叢の減少を目的に使用されたりします。
最も基本的なアミノグリコシドです。緑膿菌を含む多くのグラム陰性桿菌に有用であるので、 院内発症の中等度以上の感染症でβラクタムと併用して empirialに使用できます。グラム陰性桿菌性敗血症では(特に好中球減少時の発熱)、 速効性が期待できるため、βラクタムより先に投与します。混ぜると不活化されるので、時間的に少しずらしてβラクタムを投与するようにします。 中等度以上の緑膿菌感染症では併用療法が原則なので、そのうち1剤として使用できます。 また、ペニシリンやアンピシリン、バンコマイシンなどと併用してゲンタマイシン感受性の連鎖球菌、腸球菌による心内膜炎・重症感染症に対して効果をあげます。 コリネバクテリウムによる心内膜炎でもペニシリンと併用して使用します。ブドウ球菌に対してはMSSAではβラクタムとの併用に効果ありとされていますが、 MRSAに対してはバンコマイシンとの併用に効果ありともなしとも言われており、定まっていません。 後述するトブラマイシンやアミカシンに比べ、腸球菌やセラチアに対してはゲンタマイシンがより効果的であると言われています。
ゲンタマイシンと殆ど同様の薬効を持ちますが、ゲンタマイシンに比べ毒性が少ないとされているため、 限られたケースを除いてはアミノグリコシドではトブラマイシンが第一選択となるかもしれません。 腸球菌に対しては、併用療法の効果が低いともされており、この場合はゲンタマイシンを使用します。逆に緑膿菌にはトブラシンが効果が高いとされています。 ちなみにゲンタマイシン耐性であればトブラマイシンも耐性です。
カナマイシンを半合成して開発されたアミノグリコシドです。ので、抗酸菌にも効果があります。 アミノグリコシドでアミカシンばかり使用される方がいらっしゃいますが、これは一応基本的な使用法からは外れていることを指摘しておきます。 そもそもアミカシンはアミノグリコシド修飾酵素という耐性の原因となる酵素に対して安定な構造として開発されたもので、 ゲンタマイシン耐性の際に使用すべきものとされています。感受性さえあればゲンタマイシンやトブラシンの方が活性が良好であり、また耐性菌対策のためにも乱用は慎むべきです。
わが国でアミノグリコシド修飾酵素に安定した構造として開発されたもので、多くのアミノグリコシド耐性菌に感受性を有します。 MRSAが産生する修飾酵素にも安定のことがあり、抗MRSA薬としての位置づけも有しています。 ただし、国際的には使用されておらず、臨床経験が乏しいため、MRSAに対しては第二軍としてのポジションと考えるとよいでしょう。 また、かなり高価であり、一般感染症に使用するのは感心できません。ちなみに日本の薬なので1日1回投与法は検討されていません。
どうですか?アミノグリコシド。面倒な投与量調節や副作用モニタリングなど、嫌に思うかもしれません。 でも、このカスタマイズこそ抗菌薬療法のキモであります。アミノグリコシドの効果は強力です。是非ともこの強力な武器を自分の物として下さい。
クラリスロマイシンをはじめとするマクロライド系抗菌薬は、とりわけわが国では外来を中心に汎用されてきました。 副作用が少なく使いやすい、スペクトラムも広いというのがその理由でしょうが、耐性も多く問題となっており、 第一選択薬とするには注意と慎重な検討が必要です。ということで経口薬が中心となるマクロライドですが、特徴と使い方に触れましょう。
マクロライドは1950年代に発見された物質を基に実用化されました。巨大な(マクロ)環状構造(ライド)を持つことがその名の由来です。 環状構造の数により、14員環、15員環、16員環マクロライドに分類されます。マクロライドは菌の50Sリボソームに結合し、 蛋白合成を阻害することで効果を示します。一般的には静菌的に働き、どちらかと言うと時間依存性の薬剤です。 開発当時は主にグラム陽性菌をターゲットにしていましたが、今は耐性化が進み、特殊な使用法としての価値の方に重きを置くようになっています。 いくつかのマクロライドの特徴を挙げていきましょう。
マクロライドは先に述べたように、耐性化が実に問題となっているため、感受性不明の場合の一般細菌感染症ではempiricalには使用しづらくなっています。 しかし、グラム陽性球菌・陰性桿菌に対してスペクトラムを持っているので、βラクタムアレルギーの人などでは使用価値はあるでしょうが、 何度も繰り返しますが耐性菌が多いことに十分留意する必要があります。嫌気性菌に対してはあまり効果が高くないようです。 それよりも、免疫細胞内にも蓄積するためマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、リケッチア、抗酸菌といった異型肺炎の原因菌やアクチノミセス、 スピロヘータなんかにも効果があることは特記すべきです。そのため、起因菌不明の肺炎にβラクタムと併用したり、STDの骨盤内炎で使用したりします。 ヘリコバクターの除菌にも使われますね。
マクロライドの耐性は、菌体内のマクロライドを不活化する酵素を産生すること、菌体外にマクロライドを汲み出す機能によります。 特に前者は、マクロライド全てに共通されるもので、例えばクラリスロマイシン耐性になった時点でアジスロマイシンやエリスロマイシンも効かなくなるということになります。 また、マクロライドの結合点であるリボソームの突然変異も耐性化の一翼を担っており、これによりマクロライド耐性になった場合、 クリンダマイシンにも交叉耐性(つまりこれも効かなくなる)を示すようになります。弱っちいですね、マクロライド。
副作用は少ない、とは言ってもマクロライドにも副作用はあります。有名なのは消化器症状です。 新しいマクロライドでは少し改善されてはいますが、悪心・嘔吐・下痢などの原因となります。点滴では静脈炎なんかが問題となります。 ちなみにマクロライドは肝代謝で、胆汁うっ滞性肝障害を起こすことがあります。
マクロライドではその多彩な薬物相互作用が特徴的です。多くの内服薬を常用している高齢者では、使用時によく注意ましょう。 併用で血中濃度が上昇するものに、テルフェナジン・アステミゾール・ピモジド・ジソピラミド(QT延長、心室性不整脈、心停止)・ テオフィリン・ポロモクリチン・ドセタキセル水和物・パクリタキセル・(消化器症状、精神症状)・フェロジピン(降圧)・ ミダゾラム・トリアゾラム(過鎮静)・カルバマゼピン(めまい、運動失調)・バルプロ酸(傾眠、運動失調)・シクロスポリン・ タクロリムス水和物(腎障害)・ビンブラスチン(好中球減少、筋肉痛)・ワーファリン(出血)・エルゴタミン(四肢虚血)・ ステロイド・エバスチン・ジゴキシン・シメチジン・リトナビルなどが報告されています。
マクロライド、特にアジスロマイシンのような新しいものは組織移行性は良好です。ただし、髄液への移行はやや不良です。 また、消化管からの吸収率はそれほど良好ではないです。
先に述べたように、マクロライドでは抗菌薬としての使い方以外の特殊な使用法が注目されています。 例えば、副作用の消化器症状を逆に利用し、腸管蠕動の低下している人(例えば癌患者の便秘など)に消化器副作用の強いエリスロマイシンを経口投与したりします。 また、わが国ではびまん性汎細気管支炎にマクロライドの長期少量投与により急性増悪を予防する試みがかなり昔から行われていますが、 近年世界的にこのマクロライドが持つ「抗炎症作用」が注目されています。
実用化された最初のマクロライドですが、経口では今や副作用の少ない新しいマクロライドがある以上、 使用するケースは上記の蠕動促進のための投与以外には見当たりません。わが国ではマクロライドの点滴はエリスロマイシンが唯一なのですが、 他の薬剤との相互作用も強くあらわれたりと面倒なことが多いため、エリスロマイシンの点滴もかなり限られたケース (他に代替がないような場合、クラミジア骨盤炎など)に限って使用されることになります。血管痛が強いので、1 時間くらいかけてゆっくり点滴しましょう。 ちなみに非定型抗酸菌症にもエリスロマイシンは効果は低いとされています。
マクロライドの代表とも言える抗菌薬です。スペクトラムはエリスロマイシンとほぼ同等ですが、 インフルエンザ桿菌や非定型抗酸菌などにも効果をもち、呼吸器感染症やHIV感染者のMAC予防や非結核性抗酸菌症の治療にも使用されます。 また、吸収が多少改善されており組織濃度も比較的安定しているので、1日2 回投与が可能です。逆に、STDやキャンピロバクター感染症には使用されません。 エリスロマイシンに比べ、消化器系副作用は軽減されています。 以前は、呼吸器感染(中耳炎や副鼻腔炎含む)の外来治療の中心となっていましたが、現在では前述のように耐性化が進んでおり、 中等度以上の感染症では単剤で第一選択薬となることは殆どないと考えて下さい。(たまにその様な使用を見かけますが、危険です。念のため。)
何といっても組織に高濃度に移行し、極めて長時間持続するのが特徴です。これにより、 例えばA群β連鎖球菌性咽頭炎では今までペニシリンやセフェムで1日 3〜4回10日間の治療が必要でしたが、 1日1回の投与3日間でほぼそれと同等の効果があると言われており、少なくとも、3日間の投与で1週間くらいは組織濃度、 細胞内濃度が維持されるとされています(注43)。服薬コンプライアンスの悪そうな人に有用ですね。 また、グラム陰性桿菌にもスペクトラムがあり、多くの感染症において効果が期待されていますが、 臨床使用経験の浅い抗菌薬ですのでまだまだスタンダードとは言えない段階です。 なお、前述のようにクラリスロマイシン耐性菌には、もはやアジスロマイシンも効きませんのでご注意を。 他のマクロライドに比べ、薬物相互作用が少ないと言われています。
16員環マクロライドは色々な種類が発売されていますが、わが国で開発されたもので、 国際的な臨床使用経験には乏しい抗菌薬です。敢えて、クラリスロマイシンやアジスロマイシンではなく、 本薬を使用するケースは無いでしょう。小児用製品があるのが特徴といったところでしょうか。
表題は迷ったのですが、上のようになりました。 ここでは、スペクトラムがマクロライドに類似するリンコマイシン系抗菌薬と、構造上マクロライドに類縁するケトライド系抗菌薬について見てゆきましょう。
リンコマイシン系抗菌薬は、マクロライドと構造は異なりますが、抗菌作用部位が類似(作用機序はやはり菌の50Sリボソームで、静菌的に作用する)しており、 マクロライド耐性の場合交差耐性があることに注意しましょう。リンコマイシン系抗菌薬は、スペクトラムはマクロライドとほぼ同じですが、 グラム陰性桿菌には活性が殆ど無く、マイコプラズマ、クラミジアなどの異型肺炎起因菌には弱くなっています。反面、嫌気性菌に対しては活性が強化され、 ほぼ全ての嫌気性菌をカバーします。1960年代前半に開発されたリンコマイシンが基本ですが、現在ではさらに改良されたクリンダマイシンが使用されることが多いです。 ここでは現在でも使用されるクリンダマイシンをご紹介しましょう。
リンコマイシンの誘導体で、基本的にはあらゆる嫌気性菌に有効(注46)とされ、メトロニダゾールの点滴薬の存在しないわが国では重要な位置を占めている抗菌薬です。 しかし嫌気性菌の代表ともいえるBacteroides fragilisに対しては耐性化が進み、現在では60〜80%の感受性(施設による)となっています。 組織移行性は良好で、膿瘍や骨へも移行しますが、中枢神経系は苦手です。 副作用としては、マクロライドと同様消化器症状がある他、筋弛緩作用も指摘されています。また、偽膜性腸炎の原因として有名ですので、 クリンダマイシン使用中の発熱時には(下痢が無くても)偽膜性腸炎を疑いましょう。肝代謝なので、中等度以上の肝障害では投与量を減らします。 また、使用中に肝障害を起こすことがあります。心停止の原因になることもあるので、点滴は1時間かけてゆっくり行います。 当院では採用されていませんが、経口薬もあり、吸収率は良好です。 マクロライドとの交叉耐性は、リボソームの変化によるもの(プラスミドで伝播される)でみられます。 嫌気性菌に有効な抗菌薬に多い現象ですが、真菌や原虫にも有効な場合があります。クリンダマイシンも例外ではなく、 トキソプラズマ、ニューモシスチス・カリニ(注47)、バベシア、マラリアなどに併用療法として使用されることがあります。
14員環マクロライドの基本骨格にケトン基がついているため、その名が冠せられています。 実に新しい抗菌薬で、発売間もないので、臨床効果や副作用についてはまだまだ分かっていない事だらけです。 ですから、何か理由がない限りは第一選択とせずに、「こんな薬もあるのか」という気持ちで読んでください。 作用機序はマクロライドと同じく50Sリボソームですが、マクロライド耐性の肺炎球菌や連鎖球菌にも有効とされており注目を集めています。 また、半減期が長いため1日1回の投与が可能です。 今のところ、臨床試験で効果が確認されているのは市中肺炎、A群β連鎖球菌関連感染症(副鼻腔炎や咽頭炎)となっています。 副作用としては今のところ、消化器症状、めまい、視野異常、QT延長などが言われています。また、 併用でベンゾジアゼピンやジゴキシンの濃度を上昇させことが分かっています。シサプリド、ピモジドと併用禁です。
今回はテトラサイクリンのお話です。これもまた、最近ではあまりお目にかからなくなった抗菌薬ですが、色々使えるものですので、是非知っていて欲しいと思います。
テトラサイクリンは1950年代にその原型が作られてから、改良がなされてドキシサイクリンやミノサイクリンなどの現在使用される形に至っています。 作用機序として、リボソームの30sに結合し、微生物の蛋白合成を阻害します。分類としては静菌性の抗菌薬になります。 テトラサイクリンはまず特徴の最初にそのスペクトラムの広さが挙げられます。グラム陽性菌に始まって、グラム陰性菌、 嫌気性菌、さらにはレジオネラ、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチア、何とマラリアなどの原虫まで・・・ 後述するように耐性化の問題もあって一般細菌には第一選択では使用しづらくなっていますが、 それでもクラミジアなどの異型肺炎の原因となるような微生物に使える数少ない抗菌薬のひとつです。他には半減期が長い、 腸管からの吸収は良好、全身への組織移行性が良い(脂肪への親和性がある)などの特徴を持ちます。 あとは注意事項ですが、副作用として消化器症状があります。これは結構厄介で、吐気や悪心を訴えて服薬を自己中断してしまう人もいるので要注意です。 食事中に飲むと良いとか色々工夫があるのですが、テトラサイクリン系抗菌薬はミルクやカルシウムの存在下では吸収が落ちてしまいます。 では、食後が良いかというと、アルミニウムや鉄、マグネシウムといった多くの金属陽イオンの存在により吸収率が下がる(注48)ため、 鉄剤や制酸薬を服用している患者では不向きです。と、いうわけで、食後しばらくたってから飲んでもらい、鉄剤や制酸薬はその後またしばらくしてから飲む・・・ という指導が必要かもしれません。うむむ、面倒。。。他の副作用としては、光線過敏症、肝障害、腎障害、頭蓋内圧亢進(頭痛の原因になる)、静脈炎(注49)などがあります。 有名なのでご存知かと思いますが、小児では骨発育不全、歯牙の着色・エナメル質形成不全があり、妊婦・小児(8歳未満)では投与禁忌です。 薬物相互作用としては、抗痙攣薬(バルビタール製剤、カルバマゼピン、フェニトイン)は肝臓でのテトラサイクリンの代謝を誘導し、 血中濃度を下げるため、注意が必要です。また、ワーファリンやメトトレキサート、血糖降下薬のSU剤、ジゴキシンの作用を増強する可能性があります。うむむ、面倒。。。 という訳で、スペクトラムは広いのですが、色々な注意書きも多いわけで、使用される場面は限られてきます。表1にまとめてみました。 さて、テトラサイクリン系抗菌薬ですが、現在わが国で使用できるものは、テトラサイクリン・ドキシサイクリン・ミノサイクリンの3剤になります。 それでは、以上で述べたのを共通の事項として、それぞれの特徴・使い分けを見てゆきましょう。
どちらも基本的なテトラサイクリンです。ドキシサイクリンやミノサイクリンのような、さらに安定した抗菌薬があるため、 殆ど出番はありません。腎排泄ですので、腎不全患者では禁忌です。
テトラサイクリンよりも吸収・臓器移行が良好で、米国などでも良く使われるテトラサイクリン薬です。 というのも、腎排泄や肝排泄ではない(注51)ため、腎機能や肝機能に左右されず、投与量を調節する必要がありません(便利ですね)。
ドキシサイクリンよりさらに組織移行性を向上させたのが、ミノサイクリンです。 特に健康な成人ならば使用できると思いますが、これもまた腎排泄なので、腎不全患者には使用禁忌となります。 また、ミノサイクリンには前庭障害という嫌な副作用があります。乗り物酔い感や悪心・嘔吐など、 もともとのテトラサイクリンの消化器症状と相まって、さらに患者を苦しめることがあります。というわけで、 問題が無ければミノサイクリン、腎機能や前庭障害など問題であればドキシサイクリン、ということで良いのではないでしょうか。
今回は抗菌薬の中では地味な立場に置かれていますが、極めて重要な2つの抗菌薬、ST合剤とリファンピシンについてのお話です。 リファンピシンは抗結核薬として有名ですが、ブドウ球菌の治療など一般感染症でも威力を発揮します。ここでリファンピシンのお話もしましょう。
ST合剤、正式一般名はスルファメトキサゾール・トリメトプリムです。スルファメトキサゾールも、トリメトプリムも、 葉酸合成阻害作用のある抗菌薬で、特にスルファメトキサゾールの原型のいわゆるサルファ剤は、初めての人工的に開発された抗菌薬(化学療法薬)として、 1940年代から実用化されています。スルファメトキサゾールとトリメトプリムは元々別々の抗菌薬ですが、 2つの併用で相乗効果があるということがわかったこと(反論もある)、別の箇所で葉酸合成をそれぞれ阻害するために、 併用で耐性化が抑制されるのではないかと予想されたことから、専ら合剤としての本剤、つまり「ST合剤(注52)」が使用されるようになったというわけです。 作用点が葉酸合成阻害であるため、細菌だけでなく、原虫や真菌の一部にも効果があります。じゃあ、何にでも効くのかというと、 耐性化が非常に問題となる抗菌薬でもあります。細菌への透過性の低下や、細菌からの抗菌薬の汲み出し、作用点への親和性低下が耐性化の主な機序ですが、 この遺伝子がプラスミドにコードされているためにあっという間に細菌の間に耐性化が広まってしまうのです。 このため、米国では尿路感染の第一選択薬をST合剤からキノロンにとって代わられてしまいました。という訳で、 感受性が不明な場合は軽症感染症にのみ使用を留めておいた方が安全です。 副作用としては、皮疹が有名ですが、これはアレルギー症状ではありません(免疫機構には関係していますが)。 HIV感染者で特に出現しやすいと言われています(注53)。他の副作用としては、消化器症状や肝障害(ST合剤は肝代謝、尿排泄です)、 クレアチニン上昇、カリウム上昇(注54)、貧血や顆粒球減少症、血小板減少症などの骨髄抑制、無菌性髄膜炎・脳炎などが見られます。 相互作用にも注意が必要です。ワーファリン、メトトレキサート、フェニトイン、ジゴキシン、スルホニルウレア、 三環系抗うつ剤の血中濃度が上昇したり、効果過剰になったりします。また、リファンピシン、経口避妊薬の血中濃度を下げてしまいます。
ST 合剤のスペクトラムは基本的に好気性のグラム陽性菌、グラム陰性菌です。耐性さえなければ、 大腸菌をはじめとした腸内のグラム陰性桿菌(緑膿菌以外)や腸球菌をカバーします。これらの菌が起こす代表的な感染症、 そう、尿路感染でまずST合剤は威力を発揮します。以前、米国で尿路感染にST合剤が第一選択になっていたのも頷けます。 長期間で上記のような副作用が出現するために、短期間治療となる膀胱炎などではST合剤はもってこいなのです。 ペニシリンアレルギーの患者では、代替薬のひとつとして考慮するのもいいでしょう。 また、呼吸器感染症にも使えます。感受性があれば、市中肺炎の原因菌も全てカバーするので市中肺炎に使用しても良いことは良いのですが、 何よりもカリニ肺炎(PCP:注55)の重要な予防・治療薬として重要です。重症のPCPでステロイド併用で使用されたりします。 HIVといえば、トキソプラズマ症の予防効果もあります。他に、イソスポラ、サイクロスポラといった原虫、ノカルジア症などの日和見感染症にも効果があります。 稀ですが、院内感染で問題となるStenotrophomonas multophiliaは多剤耐性菌ですが、ST合剤に感受性を有しますので、第一選択となります。 他にもBurkhoderia cepacia, Serratia marcescensなどの院内感染起因菌にも感受性を有することが少なくないので覚えていて損はないです。
使い道は既に上述しました。ST合剤も吸収が極めて良く、消化管に問題がない限り、点滴静注と同等の血中濃度を経口で得ることができます。 また、呼吸器・尿路・胆汁・髄液と、くまなく体内に広がります。
次はリファンピシンのお話です。 リファンピシンは皆さんご存知のように、強い抗結核作用を持ち、主要な抗結核薬として現在も第一線の抗菌薬として使用されています。 リファマイシンという殺菌性のグループの抗菌薬に属します。結核薬としてはさておき、リファンピシンが一般細菌でも使用されることがある(注58)ため、 簡単にここでお話します。リファンピシンは腸管吸収が良く、体内の組織移行性も良好であるため、経口薬のみですが重宝します。主に肝代謝ですが、 尿をはじめとする体液が黄染されるのが有名です。薬物相互作用が結構厄介なのが難点です。P450誘導により、ワーファリンをはじめ、 抗HIV薬などの重要な薬剤の効力が減弱されます。実に多くの薬剤と相互作用がありますから、RFPを使用の際は添付文章などで確認されることをお勧めします。
さて、結核以外の本薬の使用についてですが、インフルエンザ桿菌や髄膜炎菌、黄色ブドウ球菌など、 様々な細菌に効力を発揮します。特に、髄膜炎菌は曝露された際の予防投与として10mg/kg(最大600mg/日)を一日一回二日間投与したりします。 重症のブドウ球菌感染症(骨髄炎や心内膜炎)で、他の抗菌薬と併用して使用する場合もあります。 まあ、こんな使い方もあると知っておいて下さい。RFP使用を考慮されたら、専門家に相談されるのが良いでしょう。
ここに挙げる、抗MRSA薬とは、現在MRSAに使用することのできるいくつかのカテゴリーの抗菌薬を総じて論じています。 というのも、バンコマイシンをはじめ、ここに挙げる抗菌薬の多くはMRSAに対する数少ない有効薬であり、 耐性化防止のためにも特に厳しくその使用を制限する必要があるため、ここでまとめてお話しすることとしました。
ペニシリンGが実用化されて十年足らず、黄色ブドウ球菌はペニシリンGへの耐性を獲得するようになり、 あっという間に世に蔓延しました。原因は前にも述べた、ペニシリナーゼという酵素をブドウ球菌が産生するようになったからです。 このため、ペニシリナーゼに安定した半合成ペニシリンであるメチシリンが作られました。これが最初の黄色ブドウ球菌用ペニシリンです。 しかし、時を置かずして、メチシリンにも耐性を持つ黄色ブドウ球菌が出現するようになります。これがMRSA(methicillin resistant S.aureus) の始まり(注59)です。耐性機序としては、βラクタム薬の結合作用部位であるペニシリン結合蛋白(PBP)のうち、 結合性の低いPBP2‘という種類のものを産生する遺伝子領域が染色体に挿入されています。このため、メチシリンに限らず、 セフェムやカルバペネムを含む全てのβラクタムに耐性を示します。また、染色体に他の抗菌薬への耐性遺伝子を導入しやすい配列を有し、 多くのMRSAはマクロライドやアミノグリコシド、テトラサイクリンをはじめ、キノロンなど殆どの抗菌薬に多剤耐性化を示しています。 現在、バンコマイシンやテイコプラニンなど、ここでお話する抗菌薬には感受性を示しているものが殆どですが、 一部それらにも耐性のブドウ球菌(VRSAと呼ばれる)が見つかるようになり、バンコマイシンをはじめ抗MRSA薬の適正使用が強調されています。
自然界の微生物が産生する抗菌物質を精製したものがグリコペプチド系抗菌薬です。分子量が大きく、経口では吸収されない、 血中でも不安定などの問題を抱えています。細菌表面のリン脂質に結合し、細胞壁合成を阻害する殺菌性の抗菌薬です。 しかし、毒性も強く、腎毒性や聴毒性、骨髄抑制などの副作用が有名です。 よく誤解されていることに「バンコマイシンは最強の抗菌薬」とか、「バンコマイシンは何にでも効く」とかいう神話があります。 これを読んでいらっしゃる方の中で、そう思ってた、もしくはそう教育されたという方は是非、この機会にその考えを捨ててください。 まず、グリコペプチド系抗菌薬はグラム陽性菌にしか効きません(重要なグラム陰性桿菌にスペクトラムを有しません)。 また、殺菌性という点からも、感受性があればβラクタム薬に劣ります。前述のように副作用も気になります。 毒性と有効血中濃度が紙一重なので、血中濃度を定期的にモニターする必要があります。このように、 グリコペプチドは他に選択肢の無い場合に「仕方が無く」使う抗菌薬だというイメージを持ってください。 後述するように、バンコマイシンの使用に関しては、CDC(米国疾病管理センター)から適正使用のためのガイドラインが出されています。
1950年代に既に開発・実用化された抗菌薬です。 前述のようにグラム陽性菌、嫌気性菌ではクロストリジウムなどにスペクトラムを有します。 殺菌性で、体内分布は比較的良好なものの胆道系・髄液への移行はあまり良くありません。ですから、 MRSA髄膜炎(例えば脳外科領域での)ではより大量のVCMを必要とします。 VCMは腎排泄で腎毒性が有名ですが、VCM単剤で使用する限りは稀です。しかし、VCMはβラクタム薬のように、 アミノグリコシドと併用することによって相乗効果が得られるために、重症例ではアミノグリコシドとの併用療法を行うこともありますが、 この場合は腎障害がほぼ必発ですので注意して下さい。他に耳毒性がありますが、これもアミノグリコシドとの併用で頻度が増加します。 あと、VCMと言えば、血球減少(好中球、血小板等)が時々見られます。 防げる副作用としてレッドマン症候群があります。これは、VCM投与直後から上半身を中心として発疹・紅斑・掻痒・発熱などの症状を起こすものです。 一瞬アナフィラキシーかと思い焦りますが、VCMを急速に点滴することにより血管周囲にヒスタミン遊離が生じるために起こるとされ、 点滴速度を落とすことで防止できます。抗ヒスタミン薬の前投与も選択のひとつです。 MRSA感染症においては第一選択薬となりますが、ここでは「MRSA感染症かどうか」という評価がとても大切になります。 MRSA にさらされる患者の多くは入院日数を長く強いられている、高齢者や重症基礎疾患など、弱っている人々です。これらの患者の殆どは、 広域の抗菌薬を長期に投与されている機会が多く、耐性菌だけが選択されて体内に残存しています。培養を行った場合、喀痰や尿、 便などあらゆる検体からMRSAが検出されるでしょう。しかし、果たしてこれらのMRSAは悪さをしているのでしょうか? MRSAは抗菌薬に対する感受性が著しく低いという以外は、通常の黄色ブドウ球菌となんら変わりありません。培養でMRSAを検出して判断に迷った際は、 グラム染色を行ってみましょう。殆どの場合、ブドウ球菌は少数で、貪食像も見られない、単なるMRSAの定着状態であることがわかると思います。 転院先が「MRSAお断り」なんてことを提示しているものだから、躍起になってMRSAの治療をしているのを見かけますが、 MRSAだけを目の敵にするのは実にナンセンスなことです。 さて、青木眞先生はその著書の中で、「MRSA腸炎と言われるものの多くが、そうではないのではないか」と書かれています。 つまり、「偽膜性腸炎なのに、クロストリジウム・デフィシル(CD)の検出率が悪いために、CDが検出されず、 代わりに培養されやすいMRSAが検出され原因と間違えられている、その証拠にMRSA腸炎と言われているものの多くはメトロニダゾールで治癒しうる」ということです。 そもそもわが国では、偽膜性腸炎にメトロニダゾールの適応が無いことも手伝ってか、いきなりVCMを投与することも少なくありません。 是非改めるべきことです。偽膜性腸炎においては、VCMはメトロニダゾールの治療で失敗を繰り返すケース、または重症に限って使用するようにしましょう。 また、MRSA腸炎が疑われる症例においても、VCMの前にメトロニダゾールの使用を検討してみましょう。 前述の通り、経口バンコマイシンは腸管から吸収されないので、全身の感染には使えません。逆に、点滴のVCMは偽膜性腸炎には無効です。 以下に、CDCから出されているバンコマイシンの適正使用のためのガイドラインからの抜粋を示します。
使い方としては点滴では12時間、もしくは8時間ごとの投与が標準です。腎障害の患者では、 24時間ごとの投与や1日置きの投与などのオプションもあります。血中濃度は4回目の投与直前に測定します。 この濃度を目標濃度になるように投与量を調節します。ピーク値の測定は特に必要が無い限りは行わなくて大丈夫です。
次はテイコプラニンのお話です。 バンコマイシン同様、抗MRSA作用をもつポリペプチド系抗菌薬です。VCMに比較してTEICの方が副作用の頻度が少ないとされていますが、 臨床的に特徴や注意点などほぼ同一ですので、上記を参考にして下さい。なお、MRSA感染症の治療はVCMが基本ですから、 何らかの理由でVCMが使用できない場合に TEICの使用を考慮するようにします。
オキサゾリジノン系抗菌薬は、VCM耐性菌感染症の治療薬として新たに開発された新しい抗菌薬で、リネゾリドがその第一号です。 VCM耐性の腸球菌(VRE)や黄色ブドウ球菌(VRSA)にも効果がある(注62)とされています。 細菌のリボソームに結合し、蛋白合成を阻害することで静菌的作用を有します。 腸管からの吸収が良く、経口薬も発売されていますが、外来で簡単に処方して良いものではなく、VCM耐性菌感染症治療が長期に渡り、 退院後も服薬治療を有する患者にのみその使用を限定すべきです。また、体内の各臓器に良好に移行します。 他に特徴として腎障害のある患者にも使用量を変えずに使えます。副作用としては悪心・嘔吐・下痢が多く、 血球減少なども時々起こりますので使用中は血算のモニターも必要です。相互作用としてはモノアミンオキシダーゼ阻害作用を有し、 チラミン含有食物(チーズ、赤ワイン、ビールなど)と併用することで重症高血圧の出現の恐れがあります。 また、アドレナリン作動薬や、セロトニン作動薬との併用でそれらの効果が増強されてしまうこともあり要注意です。 繰り返しますが、バンコマイシン耐性菌の感染症の治療薬です。絶対に乱用はいけません。
ストレプトグラミン系抗菌薬もまた、オキサゾリジノン系抗菌薬と同様、VCM耐性菌感染症の治療薬として開発された新しい抗菌薬です。 細菌のリボソーム 50Sに結合し、蛋白合成を阻害し抗菌作用を発揮します。元来は静菌性ですが、 キヌプリスチン:ダルフォプリスチン=3:7の合剤になっており、両方の相乗効果により殺菌性を示します。 肝代謝なので、腎機能低下に対して投与量を調節する必要がありません。 副作用としては静脈炎、筋肉痛、関節痛が一般的です。また、肝のp450を介する薬剤とは相互作用に留意する必要があります。 スペクトラムはリネゾリドとほぼ同様なのですが、腸球菌の一種であるE. faecalisは自然耐性を有するため本薬は効きません。 これは大切な点です。しかしまあ、E. faecalisはペニシリン系抗菌薬に感受性を残していることが多いので問題になることは少ないです。 リネゾリド同様、耐性を生まないように適応を厳しく検討して大切に使いましょう。
前項でお話したST合剤やリファンピシンもMRSAに感受性を残していることが多く、MRSA感染症治療のために併用療法として使用されることがあります。 薬剤自体の詳細については当該項をご覧下さい。
1940年代に発見された抗菌薬で、細菌のリボソーム50Sに結合し、蛋白合成阻害により静菌性の抗菌作用を有します。 また、その安定した構造(注63)と広いスペクトラム(グラム陽性、グラム陰性、嫌気性菌、クラミジア・リケッチア・ マイコプラズマなどの細胞内寄生菌)により開発当初は重宝され使用されました。しかし、その後重篤な再生不良性貧血が副作用(注64) として起こることが判明したため、使用されなくなりました。 ただし、抗菌薬中最も髄液移行性が良好で、重症の細菌性髄膜炎では副作用覚悟で使用することがあります。
経口薬、点滴薬の他に、外用薬として軟膏剤や膣錠が発売されています。
わが国ではアメーバ症か膣トリコモナスにしか保険適応のない本薬ですが、 重要な嫌気性菌用の抗菌薬としての役割を担っていますので、是非この機会に覚えて下さい。
米国では嫌気性菌感染症の重要な治療薬として汎用され、点滴薬も存在するのですが、 アメーバ症・膣トリコモナス症にしか保険適応のないわが国では、経口薬と膣錠が細々と発売されているのみです。 トリコモナス、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)、アメーバを含む原虫と、嫌気性菌にスペクトラムを有します。 逆にその他の一般細菌には効果はありません。耐性を獲得しにくい薬剤であるため、 例えばB. fragilisにはほぼ100%の感受性を有しています(クリンダマイシンで6〜7割、施設によっては5〜6 割)。 偽膜性腸炎の重要な第一選択薬でもあります。また、酸性の条件下でも活性を有するため、嫌気性菌が関与する膿瘍の治療にはもってこいです。 点滴薬がわが国にないのが痛いですが、基本的に経口からの吸収は極めて良好で、全身の組織移行性も良好です。 副作用が多いのが難点で、有名なものは消化器症状と神経症状(頭痛、末梢神経障害、運動失調、痙攣、無菌性髄膜炎)です。 アルコールと相互作用を起こし、アンタビュース効果を示すので必ず禁酒してもらいましょう。ワーファリンの血中濃度も上げるので要注意です。 また、肝機能低下患者では半減期が遅延するので減量が必要です。尿も濃くなります。妊婦には避けましょう。
腸管感染症の治療薬としてわが国で汎用われていた抗菌薬ですが、ニューキノロンなどの良薬が出回っている今日では少々影が薄くなってしまいました。 β ラクタムとは違う段階で細胞壁合成を阻害するとされていますが、抗菌力はあまり強くなく(血中濃度が不安定?MICが達成されにくい?)、 スペクトラムも黄色ブドウ球菌や腸球菌など、緑膿菌を含めたグラム陰性桿菌に効くと書かれているものも多いのですが、 何せ、臨床研究が少なく実際にどのくらい効力があるかは客観的には一定したものがありません。 ちなみに欧米では尿路感染の起因菌にスペクトラムを有するとされ、「尿路感染用抗菌薬」とされています。 上記のように情報が少なく、抗菌活性も強くないため第一選択になることはありませんが、構造が単純であるため、 アレルギーが少ないとされており、使用されることもあります。 あまり分かっていないことも多く、不思議な抗菌薬です。分からないだけにあまり書くこともありません。
バンコマイシンなどと同じ、ポリペプチド系抗菌薬です。グラム陰性桿菌に対する強力な抗菌活性を有しますが、 臓器障害が強いために全身投与はされず、局所投与や腸管滅菌目的に経口薬(注66)として使用されます。 局所投与は難治性髄膜炎や膿瘍などに対して行われていた時期もありますが、全身投与できる強力な抗菌薬が使用できる現在では殆ど行われていないようです。 現在では、腹部手術前の腸管滅菌目的や、高アンモニア血症患者で腸内常在菌減量目的に経口薬が使用されるケースを見るのみです。 ちなみに「エンドトキシン吸着療法」で使用されるフィルター(カラム)はポリミキシンBを使用したものです。
抗真菌薬についても前後編に分けて見てゆきましょう。
真菌感染症は厄介です。ひとつに、相手がいわゆる「カビ」であること。風呂場の頑固な黒カビは、強力なカビキラーでも中々カビは取り除けません。 ましてやヒトに投与できる程度の効き目の薬では到底駆除できようはずもありません。そして、真菌感染を起こしてくる患者の殆どが、 何らかの理由で免疫力が低下しており、あるいは広域の抗菌薬が長期間投与されたあとの状態です。そんな患者に毒性の強い抗真菌薬を投与しなければならない。 しかも勝ち目の薄い戦い・・・まさに真菌感染症は「弱り目に祟り目」であり、患者泣かせ、医者泣かせなのであります。それだけではありません。 真菌感染症は(特に深在性感染で)診断が難しいのです。我が国で汎用されているβ-Dグルカンも感度は6割〜8割に過ぎませんし、 真菌抗原テスト(カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス抗原)も検出法や菌種によって検出率にばらつきがありますので、 完全なものではありません。カンジダ血症でも血液培養で60%前後の感度しかないと言われています。 ですから、正しく真菌感染症を把握して、適切な治療を行うには高度な専門的知識と経験を必要とします(注67)。 真菌感染症を疑う状態(免疫不全、抗腫瘍薬投与中、広域抗菌薬の使用、挿管中、経静脈的高カロリー栄養、広範囲の熱傷患者などで) を考えたときには、感染症専門医、いなければ血液内科専門医にご相談されることをお勧めします。というわけで、 真菌感染症の詳細は別の機会に触れるこことして、今回は主に抗真菌薬についてお話します。(注68)
抗真菌薬も基本的には一般の抗菌薬と同じように、それぞれ独特のスペクトラムを有し、それぞれの特徴を備えています。 使用方法も、「病原体を考え、臓器を考え、感染状態を想定し、重症度を考慮し、適切なスペクトラムの薬を選んで使用する」 という原則は今までと同様です。当然、「使用の適正を十分に検討し、耐性菌の出現防止に努める」ことも同じです。 ただし、真菌感染症は前述のように起因菌が不明のまま治療が行われることも間々ありますし、 何より抗真菌薬の毒性のため治療が制限されることも珍しくはありません。「治療」と「副作用」の両天秤の中、 状況に応じた「匙加減」が必要となります。それぞれの抗真菌薬の特徴をおさえて、上手に使いましょう。 さて、抗真菌薬は大きく分類すると、ポリエン系抗真菌薬、アゾール系抗真菌薬、キャンディン系抗真菌薬、ピリミジン系抗真菌薬に分かれます。 今回は抗真菌薬の王様であるアンホテリシンBについて見てゆきましょう。
抗真菌薬は色々あれど、現在ヒトに投与しうる最も強力なものがこのアンホテリシンBです。殆ど全ての病原性真菌に効果を発揮します。 ですから、重症真菌感染症や難治性の深在性真菌感染症の治療においては最も信頼されています。ただし、強い毒性が問題であり、 副作用に関する注意深い臨床判断が必要となります。しかしながら、(我が国ではまだ限定的な使用ですが) リピッドフォームと呼ばれるコーティング剤が開発されており、副作用を軽減されるようになってきていますので、今後も重要な位置を占めてゆくものと思われます。 本薬は真菌の細胞質膜のステロールと結合し、菌体を破壊します。 ちなみに、分子量が大きく、経口薬は腸管内にのみ作用し、全身には吸収されません。 副作用は総投与量に比例して出現する腎障害が有名です。アンホテリシンBを使うときは、腎障害は必発です(注69)。 アミノグリコシドやバンコマイシンの比ではありません。さらに腎からの電解質過剰排泄により低K血症、低Mg血症、RTAなんかを起こしたりします。 ですから、頻回の採血が必要となります。大変です。シスプラチン投与前のように、投与前に十分な輸液を行うことが大切です。 投与は4時間以上かけてゆっくりと、沈殿を防ぐために生理食塩水への溶解は避けます。 副作用として他に、投与後の発熱や悪寒、震えなどが見られますが、アレルギー反応ではありませんので経過観察するしかありません (投与を重ねるごとに頻度は減ってゆく)。直前にアセトアミノフェンを予防的に投与する人もいます。(効果が無いという文献もあり) 効果は折り紙つき(と言っても、他の抗真菌薬と比較した相対的なものでしかありませんが)ですが、 上記のような副作用のため現在ではカンジダ・アルビカンス以外の菌種でなければ、次回取り上げるアゾール系抗真菌薬で治療することもあります。 しかし、重症例ではやはり、AMPH-Bです(ただし、髄膜内、眼球への移行はあまりよくない)。毒性は総投与量と比例するとの意見もあるので、 総投与量のチェックは必須です。毒性軽減のために24時間の持続投与が有効とする意見もあります。
とりあえず、今回で最後となります。抗真菌薬後編です。アゾール系抗真菌薬、キャンディン系抗真菌薬、ピリミジン系抗真菌薬について見てゆきましょう。
合成化合物から作られた抗真菌薬で、真菌の酵素(チトクロムP450)を阻害し、エルゴステロールの産生を抑えることにより殺菌作用を呈します。 ヒトのコレステロール産生も阻害すると言われ、体内ステロイドの低下などを呈することもあります。新しいものは経口薬でも腸管からよく吸収される利点を有しています。 他の併用薬に関して、P450を介して代謝される薬剤の血中濃度を変化させることがあるため注意が必要です。 アゾール系抗真菌薬は、イミダゾールとトリアゾールに分類されます。また、アゾールへの耐性は他のアゾールにも交差耐性を示します。
古い世代のイミダゾールです。経口薬は吸収されないために、口腔・食道カンジダ症にのみ有効です。 カンジダ属にスペクトラムを有しかつては使用されていましたが、不整脈や肝障害などの副作用が問題となり、 現在ではより効果が高く副作用の少ないものが開発されているために出番は無いようです。 数少ない適応としてはは重症のPseudallescheria boydii感染となります。
ミコナゾール同様古い世代のイミダゾールです。これもまた副作用が強く、全身投与には不向きなものでした。 我が国には塗付薬しかないためこうした心配は不必要ですが。皮膚カンジダ症や白癬に使用されます。
現在最も使用されている抗真菌薬です。 特徴の最たるものは、腸管からの吸収が良好(80%以上)であり、髄液を含む全身臓器への移行もスムーズであることです。 薬物相互作用は他のアゾールと同様になりますが、副作用(注70)の発現率は低いとされており使用しやすい薬であり、 それが逆に乱用される結果となり、耐性菌蔓延という功罪にも関与してしまったようです。 最もメジャーな病原性真菌であるCandida albicansに対して、フルコナゾールは口腔カンジダのような軽症のものから、 重症のカンジダ血症まで広く使用されます。アルビカンス以外のカンジダに関しては、 C.tropicalisやC.parapsilosisは感受性を有していることが多いですが、C.glabrataやC.kruseiでは耐性菌が多く、 重症のカンジダ感染症において、菌種が確定するまでは前回紹介したアンホテリシンBを使用する方が安全で適切な場合もあります。 クリプトコッカスにもスペクトラムを有し、同感染症に使用されます。他に日本では見かけることはありませんが、 Coccidioides immitis, Histoplasma capsulatum, Blastomyces dermatidis, Paracoccidioides brasiliensisなどに有効とされています。 アスペルギルスやムコールのような糸状菌にはスペクトラムを有していません。 投与開始から血中濃度が安定するまで1週間ほど必要です。腎機能により投与量の調整を要します。 半減期は30時間、1日1回投与となります。 新製品「プロジフR」は、少量の溶液に溶解させることに成功した製品で、従来のものより投与液量を減少させることができます。
真菌感染症に対する抗真菌薬の投与量に関しては様々なスタディーにより、疾患ごとに適切な投与量が示されています。 サンフォード「熱病」には抗真菌薬の投与法について細かく記載されていますので、ご参考下さい。
新しいアゾールですが、ケトコナゾールの仲間です。 フルコナゾールに比べると、吸収が良くない上、眼球や髄液への移行が不良と薬理学的にかなり目劣りしますが、 スペクトラムはやや広く、フルコナゾールのスペクトラムに加え、 Blastmycosis, histoplasmosis, coccidioidomycosis, paracoccidiodomycosis, sporotrichosisに効きますが、 我が国ではお目にかかりませんのでいいでしょう。 爪白癬やアスペルギルスなんかにも使えます。しかし、上に述べた理由のように吸収率(注71)の問題なんかで、敢えて本剤を使うケースは少ないと言えましょう。
新しい抗真菌薬です。真菌細胞壁のβ-1-3グルカンシンターゼという酵素に作用し抗菌力を発揮します。 分子量が大きく、腸管から吸収されないため経口薬がないのが不便ですが、スペクトラムが広い(カンジダ属、 アスペルギルス、コクシジオイデス、ブラストミセス、ヒストプラズマなど)うえに、アンホテリシンBのような強い副作用が無いのが長所です。 また、肝代謝であり、腎機能により投与量は調節せずに済みます。米国ではカスポファンギン、我が国ではミカファンギンが発売されています。
我が国でしか発売されていないため、臨床試験の不足が問題です。しかし薬理作用的には米国のカスポファンギンとほぼ同様と考えられています。 肝機能異常などが見られることもありますが、目だった副作用は少ないようです。臓器障害などでアンホテリシンBが使用できない場合の代替薬 (クリプトコッカスなど、効かない真菌もありますが)として期待されます。効果については先に述べたように、臨床試験に乏しく、これからの実績が待たれます。
ピリミジン系抗真菌薬は、真菌の細胞内で変換され、チミジン酸の合成反応を阻害し、DNA合成を阻害することで抗菌作用を発揮すると考えられています。 副作用として骨髄機能の抑制や、腎障害が見られますが、クリプトコッカスに感受性を有し、腸管からもよく吸収され、 髄液への移行も良好であることからアンホテリシンBと併用してクリプトコッカス髄膜炎に使用されることがあります。 他には播種性カンジダ症で難治性の場合にアンホテリシンBと併用することがあります。逆に単剤で使用するケースは原則ありません。 代表的なものにフルシトシンがあります。
上記のように、あまり出番の少ない抗真菌薬です。 アンホテリシンBとの併用が主な使い道となるものの、併用によってしばしば副作用が増強されるケースも見られるため、投与量の加減が重要となります。 使用中は血中濃度をモニタリングし、ピーク値70〜80mg/L、トラフ値30〜40mg/Lになるように投与量・投与間隔を調節します。 クリプトコッカス髄膜炎に対するAMPH-Bとの併用においては、AMPH-B 0.5〜0.8mg/kg/日に加え、5-FC 37.5mg/kgを6時間ごとに継続経口投与し、 発熱軽快・培養陰性まで続けます(〜6週)。続いてAMPH-Bと5-FCを中止してFLCZ 200mg経口1日1回を開始します。 先に述べた副作用の関係で、5-FCを減量する場合もあります。
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Q: Why do people who live near Niagara Falls have flat foreheads?
A: Because every morning they wake up thinking "What *is* that noise?
Oh, right, *of course*!
And here's the clincher: I noticed (and confirmed this with a recruiter
friend) that Windows API programmers here in New York City who know C++ and
COM programming earn about $130,000 a year, while typical Web programmers
using managed code languages (Java, PHP, Perl, even ASP.NET) earn about
$80,000 a year. That's a huge difference, and when I talked to some friends
from Microsoft Consulting Services about this they admitted that Microsoft had
lost a whole generation of developers. The reason it takes $130,000 to hire
someone with COM experience is because nobody bothered learning COM
programming in the last eight years or so, so you have to find somebody really
senior, usually they're already in management, and convince them to take a job
as a grunt programmer, dealing with (God help me) marshalling and monikers and
apartment threading and aggregates and tearoffs and a million other things
that, basically, only Don Box ever understood, and even Don Box can't bear to
look at them any more.
-- Joel Spolsky
-- "How Microsoft Lost the API War" ( http://www.joelonsoftware.com/articles/APIWar.html )