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感染症シリーズ - カルバペネム系とモノバクタム系

本日のテーマはそれ以外のβラクタム薬ということでカルバペネム系とモノバクタム系。 ここではMEPM(メロペネム) とIPM/CS(イミペネム/シラスタチン)について解説する。 現在本邦で使用できるカルバペネム系抗菌薬はこの他にも数種類存在するが、 特に筆者が存在意義を強く感じないあるいは理解が十分でないという理由でここでは触れない。 カルバペネム系抗菌薬の本来の適応は耐性度の高いグラム陰性桿菌の感染症が証明あるいは疑われる場合である。 これ以外での積極的な使用の適応はない(注1)。しかし本邦ではそれ以外の目的での濫用が多くの病院で行われている結果、 培養から検出される緑膿菌全体に対する感受性率はカルバペネム系抗菌薬よりもCAZ, CFPM, PIPC などの方が良好であるなどの逆転現象が当院を含めた多くの施設でみられてしまっている。 カルバペネムもβラクタム薬なのでその抗菌活性は時間依存性である。 よって半減期に応じた適切な投与間隔を守ってはじめて有効性が発揮される。 カルバペネムを用いるような重症感染症で12時間おきの悠長な投与などありえない。 カルバペネム系抗菌薬(特にIPM/CS) そのものに痙攣などの中枢神経副作用がある上に抗痙攣薬との薬剤相互作用があることにも注意していただきたい。

メロペネム(MEPM)

メロペン(R) 0.5g6時間おき ただし髄膜炎などでは2g 8時間おきまで増量(保険適応外)

多くのグラム陽性菌、陰性菌、嫌気性菌に有効である。よってまずはMEPMが無効な菌を覚えておこう。

MEPMが無効な菌

グラム陽性球菌
MRSA, MRCNS(メチシリン耐性表皮ブドウ球菌)には常に無効(注2)。 腸球菌には耐性菌がいる(E. faecium, VRE etc.)上にVitroで活性があっても(「S」でも)臨床的な有効性にはやや不安がある。
グラム陰性桿菌
Stenotrophomonas maltophilia(当院では旧名称のXanthomonas maltophiliaと表示されている) はカルバペネム系に自然耐性がある(メタロβラクタマーゼを産生する)。 緑膿菌やアシネトバクターの中にはプラスミド性のメタロβラクタマーゼ産生やその他の機序により耐性獲得している菌もいる。
異型病原体
市中肺炎の起炎菌として頻度が高いマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラはカルバペネム系が効かない(注3)。
嫌気性菌
耐性菌はほぼ存在しないと考えてよい(注4)。よって、 時折みられる嫌気性菌のcoverを目的にカルバペネムにCLDMを追加するというプラクティスは全く論理的でない。

メタロβラクタマーゼ

すべてのβラクタム薬を分解し、βラクタマーゼ阻害薬によって阻害されない恐怖のβラクタマーゼである。 S. maltophiliaは染色体性のメタロβラクタマーゼを持っていて、最初からカルバペネムが効かない。 近年、プラスミド性のβラクタマーゼ産生菌が問題になっており(特に日本で)、緑膿菌、 アシネトバクターなどのブドウ糖非発酵菌だけでなく、セラチアなどの腸内細菌でも産生菌の報告がある。 一般にプラスミドによる耐性は周囲の菌に波及しやすく感染管理上厄介である。

<MEPMの適応>
市中感染症で適応になることは本来はほとんどない(注5)。 グラム陽性球菌を狙ってあえてカルバペネム系を選択する理由はほとんどない。レンサ球菌系に対してはペニシリン系、 MSSAに対しては第1世代セフェム(CEZ)が十分強力である。PRSPに対してはペニシリン系よりも強力だが、 抗緑膿菌作用がない第3世代セフェム(CTX, CTRX)と比べて大差はない。 陽性球菌に対する耐性菌の頻度の少なさという点においてはVCMの方が明らかに優れている(注6)。 最大のメリットはグラム陰性桿菌に対して耐性菌が少なく、抗菌力が強いことである。特にESBL産生菌に対して有効。 また単剤でグラム陽性球菌、嫌気性菌にも抗菌力が強いので院内発症の腹膜炎のような複数菌が関与し、 かつ耐性菌が想定されるような状況に対しても適応になることがある。

ESBL(Extended spectrum beta lactamase)

文字通り広範囲のβラクタム薬をtargetとするプラスミド上に存在するβラクタマーゼでありこれを産生する菌ではすべてのペニシリン、 セフェム、モノバクタムが(仮に感受性試験で「S」となっていても)無効である。 βラクタムで唯一確実に有効なのがカルバペネム(注7)であり、キノロンやアミノグリコシドは感受性があれば (しかししばしば同時に耐性である)有効である。ESBLの産生は主にはE. coliやKlebsiellaで問題となる。

イミペネム・シラスタチン (IPM/CS)

チエナム(R) 0.5g6時間おき

MEPMとほぼ同じ役割の薬剤であるが違いを3つ挙げる。

1 副作用
痙攣などの中枢神経副作用はIPM/CSの方が高頻度である。このためIPM/CSは大量投与ができず髄膜炎などの中枢神経感染症の治療には用いられない。
2 グラム陰性桿菌に対する活性
全体的に若干MEPMの方がIPM/CSよりもグラム陰性桿菌に対して活性が高い。しかし決定的な差ではない。
3 グラム陽性球菌に対する活性
全体的にIPM/CSの方がMEPMよりもグラム陽性球菌に対する活性が高い。 ペニシリン感受性の腸球菌(主にE. faecalis)に対してはIPM/CSは有効(ただし他のβラクタムと同様に静菌的に作用する) であるがMEPMは信用できない。

これらを踏まえて・・・
重症グラム陰性桿菌感染症を治療するという目的からするとグラム陰性桿菌に対する活性が高いMEPMの方が多くの状況で選択されるべきであろうと思われる。 さらにMEPMの方が副作用も少なく大量投与(が必要な髄膜炎や心内膜炎の治療)が可能。 IPM/CSが選択されるとすれば重症グラム陰性菌感染症であるが腸球菌の関与も考慮する場合(例えば院内の術後の腹膜炎など)などが考えられる。

モノバクタム系抗菌薬 アズトレオナム(AZT)

アザクタム 1g6-8時間おき

緑膿菌を含むグラム陰性桿菌には有効だが、グラム陽性菌、嫌気性菌には全く無効という役割のはっきりした抗菌薬である。 他のβラクタム薬と交叉アレルギーが少ない(注8)。

<AZTの適応>
グラム陰性桿菌が関与する感染症でβラクタム薬にアレルギーがある場合に主に用いられる。 ただし、腸内細菌、ブドウ糖非発酵菌ともに耐性菌が結構多いために起因菌の感受性判明前の経験的治療で単剤で使うのは危険であるので、 その場合はアミノグリコシドなどと併用する。 また感受性判明後のグラム陰性桿菌の単一菌感染症に対しては安全に使用できる。 腹腔内感染症や血流不全を伴う軟部組織感染症などの複数菌感染症で使用する場合は適宜VCMやCLDMなどのグラム陽性球菌や嫌気性菌に有効な抗菌薬と併用する。

<解説>

(注1)
肺炎球菌への活性が高いという理由で市中肺炎の治療にカルバペネムを用いるという医師がいるがこれは明確な誤りである。 髄膜炎などの合併症を来たしていない限りペニシリン耐性肺炎球菌による肺炎は肺炎球菌に対して活性が高い第3世代セフェムで治療できる。 髄膜炎の場合でペニシリン耐性を懸念する場合はバンコマイシンを追加する。
(注2)
ブドウ球菌に対するβラクタムの有効性はMPIPC(オキサシリン)に感受性か否かで判定する。 MPIPCに耐性であれば他のβラクタム薬すべてに耐性である。CEZでもMEPMでも同じ!
(注3)
市中肺炎でカルバペネム単剤治療がなされているのをたまに見かけるが全くありえない。 カルバペネムを使用する市中肺炎=重症かつグラム陰性菌の関与を疑うリスクの高い市中肺炎=必ずレジオネラを含めた異型病原体をcover。
(注4)
メタロβラクタマーゼを産生するBacteroides fragilisの報告はあるが現時点では極めて稀である。
(注5)
強いてあげれば重症軟部組織感染症(壊死性筋膜炎)のEmpiric治療、 濃厚な抗菌薬投与歴や入院歴のある患者のグラム陰性桿菌の関与しうる感染症(腎盂腎炎, 腹腔内感染症)、好中球減少患者の発熱あたりか。
(注6)
具体的にはMRSA, MRCNS, 腸球菌に対してはVCMは有効だがMEPMは無効。
(注7)
PIPC/TAZ(タゾシン)やCMZ(セフメタゾン)も有効な可能性があるが確実とは言えない。
(注8)
CAZとは側鎖が類似しているために交差アレルギーがある。他のβラクタムとは交差アレルギーなし。
Well, no. Russians do not use everything for drinks. It has been empirically
proved that some substances - e.g. slag - cannot be used to make drinks.

Worse, some substances - e.g. slag - cannot be even used for the after-drink
zakuska.

Yet even worse than that, some substances - e.g. slag - are not even useful
for bottling drinks.

The silver lining on the rain cloud, however, is that there are precious few
such substances. Namely, one - slag.

Slainte!

    -- Marc A. Volovic
    -- Linux-IL Post ( http://www.mail-archive.com/linux-il%40cs.huji.ac.il/msg39712.html )

Chuck Norris is a real programmer. He writes programs by implementing the most
optimised machines for them using real atoms.

    -- Shlomi Fish
    -- Chuck 
                      Norris Facts by Shlomi Fish and Friends ( http://www.shlomifish.org/humour/bits/facts/Chuck-Norris/ )


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