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感染症シリーズ - キノロン系抗菌薬

キノロン系抗菌薬(CPFX, LVFX, GFLX, MFLX)。 キノロンは広域スペクトラムで消化管からの吸収率が高く、臓器移行性も良く、安全性が比較的高い便利な抗菌薬である。 しかし、その反面、濫用されやすい抗菌薬でもあり、その特徴と適応を十分理解しなければキノロンの本来のメリットを生かすことができず、 耐性菌を増やすだけである。キノロンの作用機序は細菌の核酸合成阻害。殺菌的に作用する。

抗菌スペクトラム
古典的にはグラム陰性桿菌に活性が高く、陽性球菌や嫌気性菌に対してはあまり活性が高くなかったが新しいキノロンではこの特徴に変化がある(後述)。 βラクタム薬が効かないマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどの異型病原体や抗酸菌にも活性を有する。
臓器移行性
組織移行性は一般に良好である。特に尿路移行性は良好だが、その他にもβラクタム薬の移行が悪い前立腺、 骨、膿瘍への移行は良好である。肺への移行も良好。体内の異物(人工関節など)への移行も良好である。
濃度依存性、PAE(postantibiotic effect)
βラクタム薬と異なり、濃度依存性の効果とグラム陰性桿菌対する長いPAEがあるため 1日1回投与(CPFXを除く)が本来は望ましい。
経口薬
βラクタム薬の場合、経口薬は静注に比べると明らかに効果が落ちる(生体内利用率bioavailabilityが高くないため)が、 キノロンは非常に生体内利用率が良好であり経口薬でも基本的には静注と効果は同等である(ただしCPFXのみ生体内利用率70%程度とやや劣る)。
副作用
アレルギーは少ない。
NSAIDとの併用で痙攣を誘発しやすく、さらに主に高齢者に頭痛や軽度の幻暈、気分の変調などの中枢神経症状を認めることがある。 QT延長、心室頻拍(Torsades de pointes)、心室細動の原因になることもある。特に低K、低Mg血症患者心不全患者での使用や class Ia、class IIIの抗不整脈薬との併用は危険である。稀な副作用としてアキレス腱などの腱断裂がある。 スパルフロキサシン(SPFX)は以前にレスピラトリー・キノロンとして売り出されたが光線過敏症とQT延長が問題となりmarketから消えて行った。
薬剤相互作用
薬剤相互作用はβラクタム薬よりも多い。特に抗不整脈薬などは要注意であり処方の際は必ず確認(注1)。NSAIDSとの併用は痙攣のリスクを増す。 また、Fe, Mg, Al, Ca, Znなどの金属イオンを含む製剤(例えば、酸化マグネシウムやスクラルファートなど) はキノロンの消化管からの吸収を妨げ、キノロンの効果を落とすため併用は避ける。

各薬剤の特徴

古い順から並べるとシプロフロキサシン(CPFX)、レボフロキサシン(LVFX)、ガチフロキサシン(GFLX)、 モキシフロキサシン(MFLX)である。おおまかな特徴を言えばCPFXはグラム陰性桿菌に活性が高いが陽性球菌や嫌気性菌には活性が乏しい。 そして新しいキノロンになるほど陽性球菌(肺炎球菌など)と嫌気性菌に対する抗菌活性が強化されている。

シプロフロキサシン(CPFX)

シプロキサン(R) 静注 300mg 12時間おき 経口 800mg2x
(しかしこの投与法は本邦では「炭疽」の病名でのみ承認されている。その他の病名だと最大600mg3xが承認量。)

基本的に緑膿菌を含めたグラム陰性桿菌に活性が高くその治療目的で用いられる。市中肺炎の経験的治療でキノロンを使用することがあるが、 “古いキノロン”であるCPFXは肺炎球菌に対する活性は低いので単剤では使用すべきではない。嫌気性菌にも無効。 一方、陰性桿菌、特に緑膿菌に対する抗菌活性は高い。多くの新しいキノロンが開発されているが、緑膿菌については未だにCPFXを超える薬剤はない。 なおかつ静注薬が存在するためグラム陰性菌の関与する重症感染症にキノロンを用いる場合は必然的に本薬剤を用いることになる。 静注薬はそのまま投与すると静脈炎をきたす頻度が高いため300mg/150mlあたり輸液を100ml追加して(つまりtotal 250mlとして)用いる。

レボフロキサシン(LVFX)

クラビット(R) 経口 400mg2x(保険承認量) 経口 400-600mg 1x
(保険承認と異なる投与法であるが本来はこちらが望ましい。緑膿菌感染症の治療時、市中肺炎の治療時などで説明の上で患者の同意が得られたはこちらで)

LVFX以降に開発されたキノロンがいわゆる“新しいキノロン”であり、最大の特徴はCPFXに比べて肺炎球菌に対する活性が強化されていることである。 これ故にレスピラトリー・キノロンとも呼ばれる。緑膿菌に対する効果はCPFXよりも若干劣る。嫌気性菌に対する活性も十分ではない。 日本の基本的な保険承認の使用方法は300mg3xである(重症例では600mg3xまで増量可)。 これは上記のキノロンの薬理学的特徴を無視した馬鹿げた使用方法である。 しかしながら保険承認されている方法と異なる処方をして有害事象が発生した際に生じる医師への責任を考慮してここでは遺憾ながら投与方法を400mg2x と記載する(多くの軽症市中肺炎や膀胱炎などの治療は可能と考えるが1日1回投与と比して治療失敗の危険は増し、耐性菌の増加の原因となると思われる)。 早期に正しい投与方法が承認されることを願う。

ガチフロキサシン(GFLX)

ガチフロ(R) 経口 400mg2x

LVFXよりもさらに肺炎球菌に対する活性が強化されている。グラム陰性桿菌に対してはLVFXとほぼ同等である。 嫌気性菌に対する効果もLVFXよりも強化されており少しアテにできる。 副作用として重篤な低血糖、高血糖が発現することがあるため、糖尿病患者またはその疑いのある患者には使用できない。 耐糖能異常患者の一般人口における頻度の高さや血糖関連の副作用が起きたときのimpactを考えるとできるだけ使用は控えた方が無難。

モキシフロキサシン(MFLX)

アベロックス(R) 経口 400mg1x

Vitroでの肺炎球菌に対する活性はキノロンの中でもっとも高いレスピラトローキノロンである。 嫌気性菌に対してもLVFXよりも活性が高く少しアテに出来る。グラム陰性菌に対してはCPFXよりもやや劣る。 本邦で初めて1日1回投与の正しい投与方法で保険承認を受けたキノロンであり、 この点ストレスが少ない(400mgで1錠のためコンプライアンスの点でも良い)。 肺炎球菌に対する活性が最も高いこととあわせて市中肺炎の治療に有用と考える。ただし尿路への移行は悪いため尿路感染症の治療には用いない。 腎機能低下があっても用量の調整は必要ない。

キノロンの疾患別の適応

尿路感染症

グラム陰性桿菌に対する強い抗菌活性、良好な尿路移行性(MFLX以外)から良い適応である。 しかし、一般的に外来でのキノロン使用頻度が高く、市中でも耐性菌が増加しているため要注意である。 高齢者などのリスクの高い患者での急性腎盂腎炎では入院の上で静注セフェムなどで治療するか、 起因菌判明までは外来でCTRX投与(1日1回投与でよいため外来治療が可能)を行なうのが無難と考える。 少なくとも問診で最近3ヶ月のキノロンの使用歴を確認してキノロン耐性菌の関与のリスクを検討すべきである。

前立腺炎

前立腺は抗菌薬の移行性が悪い臓器であるがキノロンはST合剤と共に前立腺への移行が良好であるため治療の中心となる。 ただし上述のようにキノロンの耐性菌は一般的に増加傾向にあるため起因菌の感受性判明前はキノロン単剤での治療は危険がある。 よって急性期にはキノロンにアミノグリコシドなどを併用するかあるいはβラクタム薬で治療を開始 (前立腺の炎症が強い時期はβラクタム薬もそれなりに前立腺に移行する)し、感受性が判明したらキノロンの単剤治療にswitchするのが安全と思われる。 急性前立腺炎では2-4週、慢性前立腺炎では6週間以上などの長期治療が望ましい。

消化管感染症

市中および海外渡航者の細菌性腸炎の原因菌の多くをcoverしているため頻用されてきた。 ただし、Campylobacterは耐性菌が増えているので要注意、Salmonellaでも同様の傾向が認められる。 そもそも軽症ならば抗菌薬の適応はなく、O-157のような腸管出血性大腸菌による腸炎では抗菌薬の使用により HUSのリスクを増やすという報告もあるため全例に抗菌薬が必要なわけではない。 渡航後の下痢症の病原体の中でもSalmonella typhiはキノロン耐性菌がかなり増加しておりこれ対してはCTRXなどが選択される。 キノロン耐性のCampylobacterに対してはEMやAZMを使用する。

腹腔内感染症

グラム陰性桿菌に対する抗菌活性は高いが、嫌気性菌に対する効果は不十分なので嫌気性菌に対して活性の高いCLDMやmetronidazoleの併用が必要である。

呼吸器感染症

市中肺炎を外来で治療する場合、LVFX, GFLX, MFLXは肺炎球菌に対する活性が高く、肺への移行性も良く、経口薬でも静注と同等の効果がある。 しかもインフルエンザ菌に対する活性も高く、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどの異型病原体にも有効であり、 市中肺炎の原因菌を単剤でほぼ確実にカバーしている。 尿路感染症や腸管感染症ではどのキノロンを選択しても大差はないが、肺炎ではCPFX vs. LVFX, GFLX, MFLXの差は重要である (前者は「緑膿菌用をはじめとしたグラム陰性桿菌用キノロン」、後3者は「レスピラトリーキノロン」)。 CPFXは肺炎球菌に対する活性が低い。ただし、レジオネラに対する効果はほぼ同等であり、 緑膿菌などのグラム陰性桿菌に対する効果はむしろLVFX, GFLXよりも強力であり静注薬もあるので院内肺炎では良い適応になる。 結核や非結核性抗酸菌にも有効であり、第2選択薬として用いられる。

骨・軟部組織感染症

骨・軟部組織感染症の起炎菌はグラム陽性球菌の頻度が高く、陽性球菌に対してはペニシリンや第1世代セフェムなどの、 他に有効な抗菌薬があるためにあえてキノロンを使用する必要はないが、 経口薬でも高い血中濃度が維持できることと骨や膿瘍などのβラクタム薬が移行しにくい部位に対する移行性が良いため、 起因菌がキノロン感受性菌で病態が安定して経口薬に変更するときには選択肢の一つになる。特に骨髄炎などの長期治療の際に重宝する。

まとめ

グラム陰性桿菌による感染症には良い適応である。特にCPFXは緑膿菌に対する活性が高い。 βラクタム薬とは作用機序が異なるためセフェムやカルバペネムに耐性獲得した特殊なβラクタマーゼ産生菌に対して有効な場合がある。 グラム陽性球菌に対しては積極的な適応はあまりないが、LVFX、GFLX, MFLXは経口薬の中では肺炎球菌に対して最も確実な薬剤(特に後2者)であり、 しかも異型病原体も同時にカバーしており市中肺炎の外来治療での有用性はかなり高い。 βラクタム薬の移行性が悪い部位の感染症にも有効である場合がある。 また基本的には経口薬にしても効果が落ちないので退院後の外来フォローの時にも使いやすい。 結核や非定型抗酸菌症の治療にも使えるが、安易な使用は抗酸菌感染症の診断を難しくすることがあるため注意を要する(注2)。

<解説>

(注1)
Sanford guide「熱病」などで確認。ちなみに他の薬剤相互作用が重要な抗微生物薬としてはマクロライド、 リファンピシン、イソニアジド、アゾール系抗真菌薬、プロテアーゼ阻害薬(抗HIV薬)などがある。
(注2)
典型的な画像所見をとらない肺結核患者を「肺炎」と診断してキノロン単剤で治療しても一時的に病状は安定することがある。 もちろんキノロンの短期治療で肺結核が治癒することはなく診断が遅延する原因となる。
Big book, big bore.
		-- Callimachus

Linus isn't saying that CVS and Subversion have fixable bugs or missing
features. It's not about the code.

He is saying that they solve the wrong problem. The Subversion team wants to
solve Problem A, and Linus wants to solve Problem B. No amount of code will
turn the solution to Problem A into a solution for Problem B. Bothering the
Subversion team with code addressing Problem B will only irritate them, since
they're working on Problem A.

The right way to handle differing goals is to start a different project.
That's what he did.

Don't be confused by the labels. Source Code Management means different things
to different people, and there isn't always much overlap in how each person
defines it. Ships and airplanes are both 'vehicles', but that doesn't mean
that a few changes will turn one to the other.

zzatz on:
http://developers.slashdot.org/comments.pl?sid=237163&cid=19367821

    -- zzatz
    -- Slashdot Comment ( http://developers.slashdot.org/comments.pl?sid=237163&cid=19367821 )


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