本日のテーマはVCM、TEIC、LZD。VCM、TEIC、LZDは主に耐性度の高いグラム陽性球菌 (コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、MRSA、Enterococcus faeciumなど)による感染症を治療する目的で用いられる抗菌薬である。
抗菌スペクトラムは分かりやすい。グラム陽性菌ならばほとんど有効。グラム陰性菌には全く無効。 陽性菌ならば球菌、桿菌、好気性、嫌気性に関係なく有効(ただし嫌気性菌の治療には用いない)。 VCM耐性腸球菌(VRE)は日本には少ない。したがって、日本ではグラム陽性球菌でVCM耐性菌はほぼいないと考えてよい。 なお、日本での保険適応は「MRSA感染症」のみである。
細胞壁合成阻害で殺菌的に作用する。腸球菌に対しては静菌的だが、GMとの併用により殺菌的に作用する。
これらの他に静脈炎(VCMの溶解は5mg/ml以下が望ましいとされる)や好中球減少が見られうる。
様々なdosingの方法が提案されているが、最も簡潔なものを示す。
これはあくまで目安であり、5回目の投与の前にトラフ血中濃度を測定し、10-15μg/mlを目標に調整する
(古典的には5-10μg/mlとされていたが近年はより高めの濃度が推奨される傾向にある)。
近年はピークの血中濃度測定の意義は乏しい(心内膜炎治療など特殊な状況を除いて)と考えられている。
上記のようにVCMは5mg/ml以下に溶解することが望ましく(実際には1g/100mlで溶解されることが多いが)、1gあたり1時間以上かけて投与する。
VCMの最大のメリットはグラム陽性球菌をほぼ確実にcoverできるということである。 VCMしか効かない菌が感染症の起因菌と確定すれば当然VCMを開始することになるが、 耐性グラム陽性球菌による感染症の可能性があるが培養検査結果待ちの状況でも培養結果が分かるまでVCMを開始して培養検査結果を待つ。 ただし感受性菌に対する抗菌活性はβラクタム薬に劣るため、βラクタム薬に感受性があることが判明すれば速やかにβラクタム薬に切り替える(注1)。 MRSAを含めた黄色ブドウ球菌は培養検査でcontaminationとして検出されやすい菌である。 血液培養から検出された、あるいはその疑いの場合は迷わずVCMを投与すべきであるが、喀痰、尿、 意味無く取られた皮膚表面の培養などで検出された場合はcontaminationの可能性が高い(注2)。 また、便培養から検出されたMRSAにもほとんど臨床的意義は無い(注3)。
VCMと同じグリコペプチド系の抗菌薬であり、その抗菌スペクトラムや適応も概ねVCMに準ずる。 VCMと同様にトラフ血中濃度をモニターしながら使用する。蛋白結合率が高く、組織結合率が高いため非常に薬剤の半減期が長く、 血中濃度が定常状態に達するまで時間がかかるので5日目以降にトラフ血中濃度を測定する。 目標のトラフ血中濃度は10μg/ml以上、心内膜炎や重症敗血症などの場合は20μg/ml程度を目標とする。 6mg/kgあるいは12mg/kgの投与での定常状態の血中濃度はそれぞれ平均で14μg/ml, 23μg/mlであった。 上記の目標血中濃度を考えると50kg以上の体重がある腎機能正常患者では400mgでのdosingが妥当であろう。 皮膚軟部組織感染症、呼吸器感染症、カテーテル関連感染症などについてはVCMと同程度の臨床効果があることを示したstudyがある。 しかし、S. aureusが起因菌の心内膜炎や血管内感染症については6-10mg/kg/dayの投与量でもVCMより臨床効果が劣っていることを示したstudyがある。 腎障害の副作用はVCMよりも少ないと思われ、レッドマン症候群や聴覚障害も稀。 本薬剤はVCMの腎障害の発現を懸念して選択される傾向があるが、 上記のようにVCMの腎障害の頻度は実際には少ないことやTEICによる重症グラム陽性球菌感染症治療のエビデンスが必ずしも十分でないことを認識しておく。 VCMに薬剤アレルギーがある場合も本薬剤の適応が検討されるが、 交叉アレルギーがあるとする意見もあるのでそのような場合はLZDなど系統の異なる薬剤を用いる方が賢明であると思われる。
VCMやTEICと同様に耐性度の高いグラム陽性球菌の感染症の治療目的に用いられる抗菌薬であるが前2剤とは薬剤の系統は異なる (「オキサゾリジノン系」というグループである)。VREにも有効。 軟部組織感染症や呼吸器感染症などをはじめとした耐性グラム陽性球菌感染症の治療について、 VCMと同等あるいはそれ以上の効果があるというデータがではじめている。しかしながらVCMよりは臨床経験が少ないこと、 そもそもVCM耐性菌による感染症は日本では現時点ではほとんど無いこと、濫用による耐性菌の増加が懸念されることなどから、 LZDの使用は何らかの理由(アレルギーや副作用など)によりVCMが使用できない状況での代替薬としての役割のみに現時点では限定しておくのが妥当と考える。 また非常に高価な薬剤でもある。 生体内利用率は非常に良好であり経口と静注で理論的には効果に差が無い。 腎障害、肝障害があっても投与量調整は不要である(HD患者はHD後に投与)。 副作用は悪心などの消化器系の副作用、血小板減少を中心とした血球減少、 MAO阻害(注5)などがあり特に血球減少は2週間をこえる長期使用の際にしばしばみられ、使用中止の原因となる。 末梢神経障害、視神経障害、乳酸アシトーシスなどの報告もある。
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