正式名称はotoferlinである。OTOFは公式遺伝子略名である。
オトフェリンタンパクをコードしている。このタンパクは脳と蝸牛内に存在し、音を処理する内有毛細胞では蛇のような形をしている。 正確な働きは良くわかっていないが、正常な聴力に不可欠であり、聴覚に関連する神経細胞からの神経伝達物質の放出に関わっていると考えられている。 この働きは細胞内のカルシウムイオンの濃度に依存しており、オトフェリンタンパクはカルシウムイオンに結合するC2ドメインを持っていて、 他の分子と相互作用を持つことがわかっている。
DFNB9と呼ばれる非症候性の聾(他の体の部分には特に症状がない)を起こすOTOFの変異は、少なくとも16種類見つかっている。
OTOFにこのタイプの変異があると、内耳から脳に聴覚の信号が正常に送られないauditory neuropathyと呼ばれる難聴を発症する。
変異によって、異常に小さなオトフェリンタンパクが作られたり、それらのタンパクが機能しなかったり、
あるいは、タンパク自体が作られなかったりする。ある種の変異では、オトフェリンタンパクの三次元構造が変化してカルシウムと結合できなくなるという。
ある特定のOTOFの変異は、スペインでの非症候性の聾の原因として有名である。この変異は、
構造コード部分のグルタミンをストップコドンに置き換えてしまい、異常に小さなタンパクが生成され、聾が発症する(Gln829またはQ829Xと記述)。
2p23.1にある。正確には、2番染色体の26,680,070 から 26,781,565である。
DFNB6 DFNB9 FER1L2 Fer-1 like protein 2 NSRD9 OTOF_HUMAN
2歳以下の重症の難聴の子供は1000出生あたり1人程度で、そのほとんどは遺伝的なものである。これらの中で、90%は非症候性で、
そのうちの80%は常染色体劣性遺伝(DFNB)である。今まで21種類のDFNB遺伝子が確認されており、
コネキシン26(CX26)の変異とコネキシン30(CX30)の欠損によるDFNB1は、先天性難聴の3割を占めている。
言語獲得前からの神経性の聾であるDFNB9(MIM601071)は1996年に発表された。原因遺伝子は2p23.1に位置し、オトフェリンをコードするOTOFである。
2003年に、Vargaは、誘発耳音響放射(TEOAE)の保たれている重症の難聴としてこの疾患を初めて報告した。現在までに、
この臨床症状はauditory neuropathyとして分類されている。Auditory neuropathyは聴覚脳幹誘発電位(AEP)の反応があり、
TEOAEが保たれているという特徴がある。Auditory neuropathyの原因としてはいくつかあり、新生児期の高ビリルビン血症・
低酸素脳症など、感染によるもの(ムンプス等)、遺伝性のもの(フリートライヒ運動失調症・Charcot-Marie-Tooth病・ミトコンドリア病など)、
免疫によるもの(ギランバレーなど)、その他の知られていないものがある。多くの場合、auditory neuropathyは症候性であり、
DFNB9は一種のauditory neuropathyの一亜型であるため、OTOFの変異は異なった診断や予後をもたらす可能性がある。
今回この論文では、OTOF遺伝子に変異のある二人の子供についての人工内耳埋め込み術の結果について報告する。
言語獲得前からの非症候性の内耳性難聴であるDFNB9はOTOFの変異によって生じる。この遺伝子には48のエクソンがあり、
現在までに17種類の変異が確認されている。内訳は6 種のミスセンス変異・5種のナンセンス変異・2種の欠失・4種のスプライス部分の変異である。
このうち一種の変異はQ829Xであり、スペインでは言語習得前からの難聴のうち3~3.5%程度を占めている。この論文では、
Q829X変異に関するOTOFの2種の変異が二重ヘテロ(スプライス部分の変異(IVS44+1G>AとG4559A/R1520Qのミスセンス変異)であり、
DFNB9の原因となることを示した。OTOFは、細胞膜アンカーを持つ細胞質基質タンパクであるオトフェリンをコードし、
このタンパクは、カルシウムリン脂質結合ドメインとして知られている6つのC2ドメインを持っていると推定されている。
Q829X変異と同様に、イントロン44のスプライス供給部の変化(IVS44 +1G>A)によって、エクソン22と44のストップコドンとなり、
通常より短くなることで、機能しないタンパクが生成されることになる。R1520Q変異は、オトフェリンの5番目のC2ドメインのアミノ酸の変異により、
タンパクの機能不全をひきおこしたり、安定性に問題が生じると考えられている。
ヒトの筋ジストロフィーで原因とされているフェリンタンパクの一種であるジスフェリンでもC2ドメインの変異によりタンパクに機能不全が生じると考えられている。
オトフェリンは主に蝸牛の有毛細胞・前庭・脳で発現している。ハツカネズミの蝸牛では、オトフェリンが内有毛細胞に存在しており、
シナプス小胞の制御や細胞膜の融合を司っていると考えられている。
DFNB9は、音響放射が存在するのが特徴で、外有毛細胞の働きは保たれている。他の論文でも言及されているように、
今回の症例でも、時間の経過と共にTEOAEの悪化が見られた。この原因としては、外有毛細胞でのOTOFの変異や補聴器の使用による音響外傷が考えられる。
多くの国で先天性難聴の原因としてDFNB9はかなり高頻度に見られている。スペインでは、Ballesterosは、
非症候性劣性の言語獲得前の難聴の中では5%の有病率と推定している。もし他の国でも有病率が比較的高いのであれば、
小児の難聴のスクリーニングとしてTEOAEのみでなくAEPをルーチーンに行う必要が出てくる。DFNB9で見られているように、
外有毛細胞の働きの保たれている蝸牛性の難聴をauditory neuropathyと定義することになる。聴神経の末梢の樹状突起の変異により、
内有毛細胞や聴神経とのシナプスに異常が生じる。現在までの研究では、神経学的・画像的な面や人工内耳の移植により効果が得られることから、
蝸牛内の疾患が最も疑われている。VargaやTekinらによって報告されているように、DFNB9では症候性の症状や脳神経系の異常がなく、
純音聴力検査では一部で低下せず全体に下がる。また、人工内耳の埋込によって効果が得られることから、
少なくとも聴神経の一部の機能は保たれていると思われる。DFNB9と他のauditory neuropathyを区別するのが重要になる。
実際、疾患分類学的には異なるグループの疾病がまとめられており、周産期のすでに他の重症の疾患を併発している聾であったり、
神経疾患を併発している聾というのがある。一般的にはauditory neuropathyの患者は神経自体に問題があるため、
人工内耳の埋込はあまり効果がないと思われてきた。このため、DFNB9で人工内耳の埋込の効果があるというのは、
他のauditory neuropathyと異なる点といえる。DFNB9を持つ蝸牛性の聾の患児に対しては、早期に補聴器の使用を開始し、
効果がないと分かった時点で人工内耳の埋込を考慮するべきだと思われる。また、臨床神経学的・
画像的診断により他の神経疾患がないことを精査されるべきである。まとめると、先天性の聾でTEOAEが保たれている症例では、
DFNB9を疑って遺伝子検査を考慮するべきである。
OTOFの変異によるDFNB9は、AEPが陰性でTEOAEが保たれている言語獲得前からの聾である。この疾患はTEOAEのみでスクリーニングされている場合、
診断が不可能である。このため、ルーチンの検査としてはAEPが望ましい。逆に、AEP陰性の場合にTEOAEが陽性の聾をスクリーニングすると、
効果的にDFNB9を探し、疫学調査を行うことができる。AEP陰性、TEOAE陽性、神経学的疾患のない特徴から、
OTOFの遺伝子検査がDFNB9の診断に欠かすことができない。Auditory neuropathyに対して人工内耳の埋込を行った後の予後の予測は難しく、
そのなかでは効果のあるDFNB9では、聴神経が刺激に対し応答でき、疾患の首座が蝸牛にあるということが予想される。
http://hereditaryhearingloss.org/より抜粋
Autosomal recessive Autosomal dominant X-linked AUNA
(略) Dominant, Recessive, X-linked, Modifier, Y-linked, AUNA
20歳前に進行性外眼筋麻痺・網膜色素変性症を発症する。運動失調・心ブロック、髄液タンパク上昇を見ることがある。また、一部で感音性難聴を発症する。
ミオクローヌス、てんかん、運動失調、痴呆、視神経萎縮、難聴を発症。難聴の発症の頻度はタイプにより異なる。
幼少時より、繰り返す嘔吐、近位筋の筋力低下、再発性の脳卒中様の症状、片麻痺、皮質性の盲目を発症。また、低身長であることが多い。 約3割で難聴を認めると言われている。
いくつかの家系で、ミトコンドリアに変異を持つ、糖尿病と感音性難聴を呈する疾患が見つかっている。一番多い変異は3243Aー>Gで、 MELASでも見つかっている。糖尿病患者を対象とした研究では、この変異は数パーセントで見つかっている。( Kadowaki et al, 1994 , Newkirk et al, 1997 ).
Alport, Branchio-oto-renal, CHARGE, Jervell & Lange-Nielsen, Norrie, Pendred, Stickler, Treacher Collins, Usher Syndrome, Waardenburg Syndrome
(略)
(略)
International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology 75 (2011) 151-158
ANはOAEやcochlear microphonics(CM)が保たれていてABRが異常である症候をまとめた用語であるが、その臨床所見は多彩である。
聴力が保たれている症例から聾の症例まであるが、聴力が正常であっても、雑音のあるなかで聞き取るのは難しいことが多い。
原因の首座としては、内有毛細胞か、聴神経・内有毛細胞間のシナプスか、聴神経自体が最も疑われており、音の神経パルスへのエンコード化・
音への同調化に問題があると言われている。今までの研究では、先天性の聾のうち6割から8割が遺伝性のものであることが分かっており、
そのうち9割は非症候性であるが、残り1割は症候性(聾以外の症状がある)である。
この非症候性の先天性聾のうち数パーセントから数十パーセントがANSDであると言われており、オーストラリアの研究では、
ANSDの有病率は新生児で0.23%程度と推測されている。症候性の聾としては、Charcot-Marie-Tooth (CMT) disease、Leber’s
Hereditary Optic Neuropathy (LHON)、Autosomal Dominant Optic Atrophy (ADOA)、Autosomal Recessive Optic Atrophy (OROA),
Fredreich’s Ataxia、Mohr-Tranebjaerg Syndrome (MTS)、Refsum’s Disease、ミトコンドリア病等がある。ANの4割程度が遺伝性である。
ちなみに、後天性の聾の原因としては、未熟児、高ビリルビン血症、無酸素症、低酸素症、先天性脳奇形、新生児脳出血、耳毒性を持つ薬剤の使用、
新生児仮死、多発性硬化症、HIV感染等様々である。
ANSDの8割以上を占める。
AUNA1は13q14-21に遺伝子を持つ。浸透率100%。聴神経遠位部の内有毛細胞との樹状突起の結合に問題があるらしい。 イタリア2家族を対象とした研究で、遺伝子間の転置・モノソミーorトリソミーを起こした症例で、AUNA1が転座領域と重なっていたが、 転座領域では、プロトカドヘリン9(PCDH9)のみが繰り返しとなっていた。モノソミーでは、 聾・十二指腸狭窄・発育遅延・脳の形成異常・顔の異形症があったが、トリソミーでは小さな異形症のみがあったことから、 聾自体は、PCDH9のモノソミーによるものか、転座領域の別の部分によるものと考えられた。
OTOF遺伝子の異常により発症するものがある。変異の位置によって様々なタイプの症状が現れる。
体温上昇により難聴を来す温度感応性のANSDがあるが、これもOTOF遺伝子の一部の欠失による。
DFNB59遺伝子はらせん神経節や蝸牛の神経の核や上オリーブ核や求心性聴神経経路上の上丘で発現しているpejvakinタンパクをコードし、
遺伝子異常により、このタンパクの機能異常が起きる。
コネキシン26(GJB2)は非症候性ANSDの主要な原因遺伝子である。ARNSDのうち30-35%程度を占める。他にコネキシン30(GJB6)がある。
AUNX1: 進行性の難聴を呈し、外有毛細胞の機能が失われ、OAEが減少していく。最終的に脱髄・軸索障害による聴神経障害を起こす。
運動神経・感覚神経の両方が徐々に障害を受け、筋萎縮、感覚鈍麻等を惹き起こす。CMTのサブタイプでANSDが報告されており、 いくつかの遺伝子と関係があると言われている。
ミトコンドリアDNAによる網膜神経症として有名である。若い男性によく発症し、網膜神経節や軸索に異常が起き、 亜急性に中心性の盲目が生じる。ABRの異常の原因としては、聴神経自体が疑われている。
Kjer’s diseaseとしても知られている。幼少時より発症し、進行性の視力低下・対称性の視神経萎縮、中心性視野障害、 色覚異常が特徴である。ADOAでもANSDが報告されており、OPA1遺伝子のR445H変異による。聴神経の軸索末端部の無髄部分の機能異常によるものと思われる。
比較的希。膜貫通タンパク126A(TMEM126A)の変異による。報告例では、色覚異常、部分色盲を持つAROAの患者でANSDに合致する症例があった。
脊髄変性により運動失調等生じるが、ANSDも発症することがある。ANSDに関する原因遺伝子は不明。
聾-ジストニー症候群。重症の聾・ジストニー・精神発達遅滞・視覚皮質発育不全等が特徴的。deafness dystonia peptide (DDP) としても知られるTIMM8Aの変異による。X劣性。側頭骨CT精査にて、蝸牛神経細胞・らせん神経節細胞・前庭神経細胞が欠損していることが分かっている。
常染色体劣性。先天性代謝異常。フィタン酸が組織・細胞に蓄積する。色素網膜症・脱髄多発神経障害が主体。ANSDに関係するらしいが、 詳細不明。内有毛細胞と聴神経細胞・軸索との間に問題があるらしい。
蝸牛は比較的多くのエネルギーを必要とする器官であるため、ミトコンドリア異常で聾が生じることが多い。
ミトコンドリア遺伝子変異によるANSDは、上記遺伝性のANSDとは異なった臨床症状を呈する。
非遺伝性のミトコンドリア異常はおそらく発生の過程で生じると思われる。
ある症例では、2歳半の時に音に対する反応がないことで精査され、その後運動能力が下がっていった。
MRI精査では、脳神経の萎縮が見られ、筋生検によりミトコンドリア病であると診断された。最終的に、OXPHOR(酸化的リン酸化の酵素)の異常が見つかった。
エネルギー不足により活動電位の回復に時間がかかり、ABR異常になったと思われる。
非症候性の聾を発症する変異が12S rRNAに見つかっている。他の12S rRNA変異ではパーキンソニズム・ニューロパチーを伴っていたという。
Rule of Open-Source Programming #4:
If you don't work on your project, chances are that no one will.
-- Shlomi Fish
-- "Rules of Open Source Programming"
Rule of Open-Source Programming #6: The user is always right unless proven
otherwise by the developer.
-- Shlomi Fish
-- "Rules of Open Source Programming"